51 幕間
ある平日の昼下がり。リサイクルゲームショップ『芸夢』の店内は静かな空気が満ちていた。
店内は商品陳列棚が大部分を占めているため、ゲームソフトの箱等が色あせない様に採光部が計算されていて、直射日光があたらない。しかし、カウンター付近や入り口などは十分な光が差し込むように設計されていた。
幸い今日もここ数日の天気と同じく、抜けるような青空が広がっており綺麗に晴れ渡っている。そのため店主が定位置としているカウンター付近は心地良い陽だまりとなっていた。そんな日当たりの良いカウンターでのんびりとゲーム雑誌を眺めるが店主の日課であり、今日も最新のゲーム雑誌を熟読していた。
営業時間中にもかかわらず、そんなことをしていられるのはお客がいないからなのだが、これは別に芸夢が悪い訳ではない。
以前に玄が言っていたようにこの店の主は青少年の教育に厳しい。そのため学校をさぼって店に来るようなお客には頑として商品を売らないのだこれは仕事の合間に抜け出してくるようなサラリーマンも同じである。
店主のそんな方針のため、この店の平日の昼間はお客がいることは少なく閑散としている。子供に頼まれてやってきた主婦や、バイトや学校が休みの大学生などがたまに顔を出す程度である。
「VSの人気はうなぎのぼりだね……」
雑誌の評価欄を読みながら店主が呟く。そこでは有名なゲームコメンテーターが評価欄でVSを絶賛していた。
『とにかく凄い! これこそまさにロールプレイングといえる。店頭で見かけたなら借金をしてでも購入する価値がある。文句のつけようがない』
本当に有名なコメンテーターなのかと疑うほど単純なコメントである。
しかし、裏を返せばもっともらしい理由をつけられないほどにVSを評価しているといえるだろう。とてもおいしい料理を食べた人が言葉を失い、うまいとしか言えなくなるようなものだろうか。あるレベルを突き抜けると、なにがどうおいしいかは食べた本人には関係がないことなのだ。
「なかなかの評判だろ? お・じ・さ・ん」
カランカラン
と、店の押し戸を開けて入ってきた白いスーツの30男が馴れ馴れしく歩み寄ってくる。 髪をきっちりと整え、高そうな細い眼鏡をかけ、長身で整った顔立ちをしているが軽薄そうな笑いが嫌悪感を抱かせる。
「ま、あくまで表のVSの評価だけどね」
「お前におじさんと呼ばれる筋合いはないぞ。司」
めくりかけた雑誌のページを戻して店主が不機嫌そうに顔を上げる。
「ククク……徳水玄専用ということですか」
「な! お前、なぜ玄君の名前を!」
店主がカウンターを叩いて立ち上がる。
「やだなぁ、おじさん。渡してくれたんでしょ、あのソフトをさ。僕は説明したよ、霊体を使った特殊なソフトだって」
にやにやと薄笑いを浮かべながら司はカウンターの前に立つ。
「お前……何を企んでいる。プレイヤーの個人情報まで調べるなんて……ただのゲームじゃないのか?」
店主の厳しい眼差しを司は相変わらずの笑みで受け流す。
「どうかな? ククク……僕はおじさんがプレイしてくれると思っていたんだけどね……残念だよ」
司は楽しくてたまらないというような笑みを浮かべながら店主の反応を窺っている。
「違法なことは承知の上か」
「あはははは、違法かどうかなんて言葉をあなたから聞くとは思いませんでしたよ」
司は文字通り腹を抱えて笑うとカウンターに両肘を付き店主の顔を下から覗き込む。
「笑わせて貰ったお礼に1つ忠告してあげましょう」
「なに?」
「私の計画は想像以上に面白いことになってきてます。徳水玄が可愛いのなら早めにリタイアを進めることですよ」
司はそう言うとくるりと身を翻す。
「なんだと? 待て! どういうことだ!」
店主が立ち去ろうとする司を追いかけようとカウンターから出ようとする。
カランカラン
しかし、カウンターから出た時には既に司は店頭に横付けされていた黒塗りの車に乗り込んだ後だった。
「司……お前はまだ抜けだせないのか」
苦渋の表情を浮かべる店主の胸中には言い様のない不安が湧き上がる。
「玄くん……」
あの明るく優しい少年に何事もなければいい……店主はそう願うしかなかった。
第2章はここまでです。ほぼバトルのみという話が進まない章でしたが……(汗
この作品は三国志に独自の解釈を加えて武将たちのこうだったらいいなという話が書きたかったので、戦ってすぐ勝負がついてしまうと武将たちを掘り下げられずに終わってしまいます。
だからどうしても戦いが長くなります。3章の邂逅にはまた時間を貰うと思いますが、引き続きよろしくお願いいたします。




