表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/63

50 遺志

「あ、兄上!」


 そこには、目の前で剣を振り上げた姿勢で無数の水花に切り裂かれて血まみれになった孫策が仁王立ちしていた。


「……いいかレン! 目を閉じるな! 最後まで諦めるな。思いを遂げろ! ……それが、俺からの最後の……教……え……」


 ぐらり……と孫策の体が揺れる。


「兄上!」


 前のめりに倒れゆく孫策を孫仁が抱きとめる。


「何故です! 私の技は僅かに間に合わなかったはず。そもそも最初から本気を出していれば……」

「い……んだよ、こ、これで。……おれぁ、わかった…んだ。俺の……ゆ、め……公瑾とい……しょに天下を……ることだ……たってな」


 孫策の視線が泳ぎ周瑜を捉える。


「兄上……」

「レ……ン、孫呉、3代……の技を持っていけ……おれか、らの……餞別だ。がぼっ」


 孫策が気管に流れ込んだ血にむせ返りながらさらに言葉を続ける。おそらく長い言葉ではない。


「レン、け……こん、おめ……とう……め、めで……てぇなぁ……。……なぁ公……いこう、ぜ……天下……」


 微笑みながら空をかいた孫策の手がことりと地面を叩いた。


「兄上……」


 孫仁は孫策を大事そうに抱えると周瑜の隣へとそっと横たえた。


「ありがとうございました兄上……兄上の教え、決して忘れません」


 孫仁が呟いた瞬間、孫策と周瑜の身体が白い粒子となって宙を舞う。


「え、なんで? ヘルプ! 俺たちは何も言ってないのになんでだ!」


 死んだ武将をアイテムに変換するのは勝利したものの権利だが行使するかしないかも選択できる。玄たちはまだどうするかさえ考えていなかった。


「ほぅほ~いっとな!」


 無駄に明るい声で出てきた麻雀牌の『六萬』に扮したヘルプが粒子に分解されていくふたりを見た。


「お~! スゲェな玄! 断金の交と呼ばれたふたりをまとめて破ったのか」

「そんなことはいい! あれはどういうことだ!」


 孫策たちを指差して玄が叫ぶ。


「あ? ああ、あれね。なんか結構あるんだよな。敗れた武将たちが勝手に変化してアイテム化しちまうことがさ」

「は?」

「名のある武将に結構多いみたいだぜ。死の間際に相手に協力的だったりすると、自分でその武将に一番役立ちそうなものに変化しちまうらしい」

「……彼らの遺志なのか?」

「さてな、そういうことになるのかもな」

「そうか……彼らも必死にシステムに抵抗してるんだな」


 システムに縛られているはずの武将たちが死の間際に抵抗をしている。自分の魂を好き勝手にさせまいとしている、玄にはそう思えた。


 孫仁の前できらきらと輝きながら舞っていた白い粒子はやがて、孫策の粒子が関羽の下へ飛んでいき、周瑜の粒子は孫仁の周りを取り囲んだ。


「これは!」


 粒子に触れようと手を伸ばすが、孫仁の手は粒子をすり抜けてしまい触れることはできない。


「孫仁、それはふたりの魂、ふたりの意思だよ。ふたりが俺たちに協力したいと思ってくれたんだ。ふたりを信じられるなら力を抜いて楽にしていてあげて」


 玄の声に孫仁は頷いて目を閉じた。今まで争っていたとはいえ、孫仁にはふたりを疑う余地などまったくなかった。

 その気持ちに反応したのかどうかはわからないが、周瑜の粒子は孫仁の身体を包み込むように舞い、やがて淡く白光すると孫仁の身体に吸い寄せられていった。

 目を閉じている孫仁にはわからなかったようだが、脇で見ていた玄たちには一瞬目を閉じざる得ないほどの光が発せられ、収まったときには孫仁の服は呉を象徴する薄青を基調とした衣に変わっていた。

 形としては変わらず漢民族の衣装で袖は振袖のように長く裾もゆったりと広がっている。


 ゆっくりと目を開けて、自分の姿を確認して袖を持ち上げた孫仁が何かに気付いて思わず微笑む。


「周将軍……ありがとうございます」


 衣をかき抱くようにして自分を抱きしめると孫仁は震える声で呟いた。


 一方関羽は相も変わらず膝をついた姿勢のまま気絶していた。限界を越えた体は早くフィールドから出て回復させてやらなくてはならない。

 

「あ、関羽の手に……」


 玄が関羽の手に見つけたのは、虎の意匠が施されている見事な青金の偃月刀だった。


「孫策……関羽が武器に苦労しているのをわかってたんだな」

「玄……なんか嬉しいね」


 茜の声に玄は見えないと知りつつも頷く。


「確かに、戦いは残酷だったけど……でもそれだけじゃなかった。うまく言えないけど……私、これからも戦っていけると思う」

「ああ、頑張ろうな……茜」

「うん、私がくじけそうになったり危なくなったら、玄が守ってくれるんでしょ」


 茜が落ち込んでいたときに玄が言った『不良に絡まれていたら助ける』という言葉を最大限自分に都合の良いように拡大解釈した言葉だ。玄はそれに気付いて、顔を赤くしつつ茜に言い訳をしようとして思いとどまる。

 そして諦めたように小さく息を吐くと改めて口を開いた。


「ああ、お前は俺が守ってやるよ」

「え?」

「じゃあ、関羽たちを休ませたいから先に出るよ」

「え? え?」

「茜、私も今日はもう一歩も動きたくありません。もどりましょう」

「あ、はい。ぽち。え? でも玄が……え?」


 関羽と典韋が消え、孫仁が消え、戸惑う声だけを残して茜の気配も消える。



 ガサリ……


 そんな戦場後へ中洲の木立の中から現れた者がいる。

 全身を黒ずくめの衣装に包み、顔すら黒布で巻きつけ視認できるのは目元のみ。


 黒ずくめの男は足音すら立てずに戦場を一回りすると音もなくその姿を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ