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ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第2章

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48 親友と兄妹

 剣を持ったまま仁王立ちになった関羽が呻くように呟く。そして糸が切れたかのように静かに膝をつく。


「え?」

「玄! 今、周瑜が術で自分の血を!」


 茜の叫ぶような声が聞こえる


「なんだって?」


 玄は慌てて周瑜を見る。しかし、周瑜はひどく安らかな顔をして既に事切れていた。


「周瑜は最後のライフを削って、自分の血を刃に変えて飛ばしたの」


 茜の言葉に玄は天を仰ぐ。


「最後の力を孫策のために使ったのか……」

「関将軍!」


 孫仁の叫びに玄は再び関羽に視線を戻す。関羽のライフゲージはもうほとんど見えない、完全に気絶モードになっている。関羽はフィールドを離脱しないかぎり意識を取り戻すことはないだろう。


 つまり最後の周瑜の一撃を受ければ関羽は死んでいたということ。だから関羽はそれを防げばとどめの一撃が繰り出せなくなるわかっていても防御せざるをえなかった。


「ぐ……くっ、公瑾! て、てめぇ! なにを勝手なことしてやがる!」


 関羽の必殺技からの連続攻撃を受け満身創痍の孫策がふらふらと立ち上がり、周瑜へと向けて歩き出す。目の前で動けなくなっている関羽には見向きもしない。


「おい! 聞いてんだろ! 公瑾! 俺を……今度こそ俺に天下取らせてくれるんだろうがぁ!」


 歩く孫策の身体から孫権が変化していた鎧がぼろぼろと剥がれ落ちていく。おそらく、孫権も兄を守ろうとしたのだ。孫策の全身を襲う衝撃や水刃を性能限界をはるかに越えた変形で強引に防御しつづけた。そして本当に限界を越えてしまった……。

 孫策が自分自身に使った『熊身』も武将の身体を硬化させ防御力を上げるものだった。だが、それらをもってしても関羽雲長の必殺技から生き残るのが精一杯だった。


「おい……公瑾よぉ……公瑾! そうか、そうだったのか……公瑾。お前もあの時こんな気持ちを味わったんだなぁ……」


 孫策は倒れた周瑜を見下ろしながら呟く。生前は周瑜をおいて孫策は早逝した。残された周瑜は今の孫策と同じような激しい喪失感を味わったはずだ。

 そして、うなだれる孫策の視界には自らの身体からゆっくりと剥がれ落ち崩れていく鎧の欠片。


「権……お前も俺をおいていくのか」


 ボロボロと落ちていく鎧の欠片たちをぼんやりと見つめる孫策がか細い声を漏らす。


「兄上」


 その様子を見ていられなかったのか、うちひしがれたように立ち尽くす孫策へ孫仁は話しかける。


「よぉ、レン……おいていかれるってのはつれぇもんだったんだなぁ。親父が死んだときは怒りが先で、そうでもなかったんだがなぁ」


 孫仁の声に首だけを後ろに向けて孫策が答える。


「はい、兄上が亡くなられた時も国中が悲しんでおりました」

「そうかい? ありゃぁ俺の軽率さが招いた死だったんだがなぁ」


 力ない受け答えをする孫策に孫仁は厳しい眼差しを向けながらゆっくりと剣を構える。


「さあ、兄上。決着をつけましょう」

「レン!」


 孫仁の言葉に茜の咎めるような呼びかけが響くが孫仁は答えない。


「あぁ、そうだな。公瑾も権も俺を守るために逝ったようなもんだ。その俺がいつまでもうじうじしてちゃいけねぇよな」


 孫仁の闘気にあてられたのか、孫策の目に光が戻りつつある。


「どうして? ねぇ玄! どうして戦わなきゃいけないの? いいじゃない、孫策とも同盟すれば! そうしたら一緒に戦っていけるのに! 兄妹で戦わなくても済むのに!」


 茜の問いかけに玄は苦しげに答える。


「それは……できないんだ」

「どうして!」

「彼が……孫策がそれを望んでないから。孫策は最後まで呉の君主として戦うつもりなんだ、誰かの下につく気はないよ」

「でも! 同盟なら対等じゃない!」

「違うんだ…………この状況で結んだ同盟は対等にはならない。俺たちがいくら対等だと声高に叫んでも、周瑜を倒され自らも深く傷ついた状態で、まだ元気な孫仁に同盟を持ちかけられたら孫策にとっては降伏勧告にしかならない」

「だからって!」

「それにたぶんだけど…………」

「え?」

「いや、いいんだ。俺たちは見守ろう。それに茜、お前はまだ孫仁と戦わなきゃならないんだ集中して」

「……うん、わかった」



「兄上と手合わせをするのは初めてですね」

「あぁ、お前が剣を好きなことは知っていたがな。あの時のお前はまだ小さかったしな」


 ゆっくりと振り向いた孫策が、近くに落ちていた周瑜の剣を拾う。すぐ傍には孫堅の変化した剣も落ちているのだが、孫策は迷わずに周瑜の剣を手にした。


「父上と権兄様は……」


 剣を構えたままの孫仁はそんな孫策の行動を邪魔せずに見守る。


「ああ、俺に敗れはしたが立派な戦いぶりだったぜ。権も武術は苦手だったはずだが、ありゃぁ経験だな。いい太刀筋してたぜ。親父は…………強かったなぁ。権が守ってくれなきゃ、周瑜が助けてくれなきゃとてもじゃねぇが勝てなかったかもな」


 孫策は自らが手にかけたにもかかわらず、父と弟を誇るかのように嬉しそうに語る。


「そうですか……父上や権兄様と剣を交えられた兄上を羨ましく思いますわ」

「すまねぇな……俺ばかりいい思いしてよ」

「構いません。こうして話を聞けましたし、なにより策兄上と剣を交えることができます。わたくしは一度でいいから兄上と剣を交えてみたかった」


 孫仁が儚く微笑む。

 孫策が豪快に笑む。


「いくぜぇ!」

「はい!」


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