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ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第2章

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37 考察

 孫策の言葉に玄は驚愕した。

 孫策の父、孫堅と言えば董卓討伐戦で先陣を勤めたほどの猛将で、孫呉の礎を築いた人物だ。そして弟の孫権はと呉の初代皇帝となり、三国の中で最も長く国を守り続けた英傑である。そんな有名なふたりが武具に変化しているとなればその性能はいかばかりか。


「関羽……」

「何をうろたえておる。どんな武具を持っていようと相手は人間。最後は鍛え上げた武が勝負を決める」


 関羽は孫策の言葉に全く驚いた様子はなく、ただ静かに精神を研ぎ澄ませているように見える。


「そっか、そうだよな。どんな相手でも負ける訳には行かないんだ、今の条件でどうやって勝つかを考えなきゃ」


 関羽の後姿に勇気を得て玄は落ち着きを取り戻す。


「関羽、鎧はどうやらこちらの攻撃に合わせて勝手に変形して防御する自律型の鎧で硬度も関羽の一撃を完全に受け止める程高いみたいだ。これをどうすればいいのかは……ごめん、今は思いつかない。でも、考えるからそれまで時間を稼いで欲しい」

「ふん、言うようになったな。よかろう任せておけ」


 調子を取り戻した玄の声に笑みを浮かべて関羽は頷く。


「武器に関しては、そのまま標準装備の剣で戦って。孫堅が変化した剣は物凄い斬れ味だけど、その標準装備の剣は性質上破壊できないはずだから、安全に打ちあうことができるはずだよ」

「承知」

「孫呉三代の絆なんてくっせぇこと言うつもりはないけどよ! あまくみてっと後悔するぜぃ!」


 孫策が剣を振りかざして突進してくる。その動きは攻撃しか考えていない力任せの動き、技もなにもないただの突進にしか見えない。そんな攻撃が関羽に通用するはずはない。


「ふっ」


 関羽は短く呼気を吐くと、孫策の一撃を寸前でかわして左に回りこみつつ右手の剣で孫策の首を薙ぐ。


 ぎぃん!

 

 しかし、孫策の肩当てから変形した鎧がその一撃に合わせて首へと移動して関羽の剣を防御する。この鎧の変化の力は強力だが、最もやっかいな能力はその衝撃吸収力である。関羽の一撃を受けても装着者である孫策がその衝撃をまったく感じていないのだ。


 関羽のように幾多の戦いを繰り返してきた武将は自分の攻撃力を無意識に理解している。

その攻撃がかわされれば相手の攻撃を遅らせられるし、受け止められたとしてもその衝撃はある程度相手の行動を制限できると理解している。攻撃が当たったのに何事も無かったように動き回る相手というのは、常識的に考えてありえないのだ。


 ましてや、ただでさえ攻撃の後には隙ができるもの。関羽ほどの武将になれば長い鍛錬の末に、その隙を限りなく小さくなっている。だから、本来であれば自らの攻撃に対して相手が避ける、受けるという行動があればそれだけで消えてしまう程度の小さいものである。

 だが、その隙が消えるまでの一拍を孫権の変化した鎧は生み出さない。孫策はそれをわかったうえで、あえて無防備な一撃を繰り出して反撃してきた相手の隙を万全の態勢で攻めこめる。


 孫策は自分の首が落とされる寸前だったにも関わらず、楽しそうに笑いながら攻撃を出し切った後の関羽に向けて孫堅の変化した剣を、今度は洗練された技量により放つ。


「むう!」


 反応が遅れた関羽はその一撃を剣で受けることはできない、そして標準装備の剣以外のものではあの剣は受けきれない。かといって避けるにも態勢が悪すぎる。

 関羽は胴を薙ごうとしている孫策の一撃にとっさに反応して膝を折り、重力をも利用して首を払った時の位置にある剣を握ったままの腕を折り、肘を孫策の腕に落とす。剣を防げないなら、それを持つ手を攻撃することで相手の剣の軌道を反らしたのである。

 それと同時に再び距離を取ろうとするが、剣の軌道を逸らしきれずに剣先が右の太ももをかする。


「む!」


 一瞬赤い花が散ったかのように血がしぶくがそのあとは流血していく気配はない。ただ、ライフゲージが減り関羽の着衣が斬られ傷跡だけが残る。

 傷の痛みを堪え、さらに距離を取った関羽はうかつに攻撃することの愚を悟る。休む間を与えずにまたも無防備に突っ込んでくる孫策に対して関羽は逆に足を止めた。

 そして、隙だらけの孫策の切込みに反撃することなく、丁寧に剣で受け止めていく。もともと当たったら儲けものというような大振りの攻撃である。捌くだけなら関羽にとっては造作も無い。


「……なるほどな、さすがだぜ」


 孫策が関羽のその待ちの体勢を見て嬉しげに笑う。孫策の攻撃に隙を見出し攻撃すれば完璧な防御能力を誇る鎧によって自身にわずかな隙が出てしまう。

 そこを突かれて反撃を受けるなら孫策の隙は、隙に見せかけた罠。関羽はそう判断して受けに専念することにしたのである。だが、あの鎧を突破する方法が無ければどれだけ防御に専念し続けても勝てない。そして一度でも攻撃を受け損なえば、あの剣によって致命傷を負う可能性が高い。

 それでもあえて関羽が防御を選択したのは……。


「俺を信じてくれたからだ」


 玄は必死に考えていた。時間を稼いでくれと言った自分の言葉を信じてその通りにしてくれている関羽に応えるために、孫策と出会ってから関羽と打ち合っている最中までの全てを思い返し、あらゆる可能性を考えていた。

 おそらく周瑜は孫策の鎧の防御を破られない限りは手出しはしてこない。なぜなら負ける可能性がない。それなら孫策の好きなようにやらせてやろうと考えるはずだ。


 その判断は完全に玄の想像だったが、早くに世を去った親友が事情はどうあれいま活き活きと戦っている。それを止めたくはないのではないか? むしろその姿を見ていたいのではないか? そう考えたのである。

 勿論それは確実ではないとはいえ、玄はその考えが当たっているような気がしていた。ならば、いまはあえてそちらを考えず孫策との戦いに集中すべき。鎧を打破できる可能性を見出してから周瑜を警戒しても遅くはない。


 そう思った玄が必死に考えを巡らせている間に関羽と孫策の戦いは様相を変えてきていた。関羽が完全に受けに回ってからは、孫策が無謀な攻撃を繰り出さなくなったのだ。さっきまでの荒々しい攻撃が嘘のように洗練された剣技で関羽を攻め立てている。


「くぅ~! 痺れるぜ! こっちは防御考えずに全力で攻めてんのにあたりゃしねぇ!」


 孫策は間断なく攻撃を繰り出している。そのどれもが剣の効果もあって一撃必殺の威力だが、関羽は初期装備の剣を巧みに使って全てを受け止めていた。互いにこの攻防によることの疲労はないが、先ほどの水攻め、太ももの負傷によりライフを減らしている関羽の動きはやや精彩を欠く。攻防が長引けば対処を誤り攻撃を受けてしまう可能性はある。


「ふむ……らちがあかんな」


 幾度目かの仕切りなおしの睨み合い、膠着した状況に関羽が呟く。


「関羽……」

「何か思いついたか?」


 関羽の問いかけに見えないと知りつつも首を振る。


「なにか、なにかが引っかかってるんだ。もう少しで何かに気付きそうなんだけど……」


 勿論苦し紛れに嘘を言っている訳ではない。孫策と出会ってからいままでの攻防の中で見たもの……その中のなにかが玄の重要なヒントになっている。そんな確信があるのに、それがなんだかわからない。


「ほう……ならば少しつついてみるか」

「え?」


 関羽がにやりと笑い、今度は自ら孫策へと攻撃を仕掛けて行った。


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