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ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第2章

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31 大河

2章の改稿編、投稿再開です


「困ったな……」


 そう呟いた玄の視界に映っていたのは、悪来に跨った関羽、そしてその向こうに広がっていた海と見紛うかのような大河だった。



 結局、あの戦いを終えフィールドから戻ったあとは関羽の体力の回復を待つことになったため、茜の部屋から再びフィールドに戻ることはなかった。


 関羽の戦いを間近で見た茜は、その光景を思い出して興奮し、同時にやや自信喪失しつつも、自分なりにできることをやろうと決めたようで、日が沈んで玄が帰宅するまでの間ずっと玄を質問攻めにしていた。


 そんな質問のすべてに丁寧に対応してから帰宅した玄は、関羽との約束を果たすべくある程度体力の回復した関羽と再びフィールドへと出陣し、一時間ほど移動を続けた。

 その際、効率よくエリアを踏破するために、玄の指示で隣のエリアとの境目まで移動してから南下。下のエリアが近づいてきたら、エリアの境目となるポイントを円を描くように一回りすることでひとつだった到達エリアを一気に4つまで広げることができた。

 ただし、戦闘は避けるという約束だったため、敵のマーカーを探してうろつくようなことはしない。ひたすら南へと到達エリアを広げることに集中した。

 その際に玄は強く実感する。思った以上に悪来の機動力は大きな武器になりうることを。


 地形などの問題があるため、目的とする場所へ一直線に進める訳ではない。だが、悪地形を避けるような多少の回り道をものともしない速さを悪来は持っていた。

 その日は関羽が万全ではないこともあり、エリアを4つにしたところで引きあげたが、次の日の出陣ではさらにエリア丸々2つ分を南下して到達エリアは、あっという間に8つに増えていた。

 マップ上で孫仁と合流するにはあとエリアふたつ分、直線にして20キロメートルほどを南下すればいいことになる。

 また茜の話では、昨日孫仁も戦闘状態でマーカーを消しながら1時間程フィールドを散策したらしい。マーカーを消していればマップ上で見つかる危険がないので、体力を消耗するが待機時間を稼ぐにはいい方法だった。


 さらに今日も同じようにする予定らしいので、フィールドに出ている時間から計算すれば孫仁の待機時間は約1日程度伸びるはずだった。1日猶予ができるならば、今日は1日この大河の渡河に時間を使っても、悪来の足ならば明日には孫仁と合流できる。

 あとの問題はこの大河をどうやって渡るのかということだった。

 


「泳いで渡ることもできなくはなかろうが……」


 悪来に騎乗した状態で髯をしごきながら関羽がつぶやく。


「馬の状態で泳いだことはないが、たぶん俺も泳げると思うぜ」


 悪来も自信ありげに軽く嘶くが、これだけの大きな河を渡るとなれば簡単にゴーサインは出せない。


「黄河の時みたいに、橋は架かってないのかな?」


 そう言って玄は、VSを操作して視界をぐるぐると回して橋を探す。実は玄たちが河を渡るのは初めてではない。既にここに来るまでの間にあった大きな河を越えてきていた。 そのときは見える範囲に河幅が狭くなっているところがあり、そこに浮橋が架かっていたため多少の遠回りにはなったがそこを渡ってきた。

 しかし、今回は見渡す限りの河であり、とても橋が架けられているようには見えない。そうであるならばどこかで舟を探して渡るというのがセオリーだろう。

 関羽たちが自分たちで申告しているように泳いで渡ることも、おそらく関羽と悪来ならできるのだろう。だが、もし渡河中に誰かに見つかるようなことになればまともな反撃もできずに敗北をする可能性もある。

 もちろん舟の上だからといって安全というわけではないだろうが、水中に居るときに襲われるよりは、舟の上にいるときに襲われるほうがまだ対処がしやすい。


 だが残念ながら見える範囲には舟と呼べるようなものはない。筏などを作ることは道具や技術、時間の面からも論外。

 ちゃんとした船を得る方法として確実なのは、どこかで誰かと戦闘して勝利した後に舟になってもらうことだが……そんなに都合よく敵と遭遇できるわけでもないし、必ず勝てる訳でもない。なにより、せっかく倒した武将を川を渡ることにしか使えないものにしてしまうのは普通に考えれば割に合わない。


「仕方がない……遠回りになるし、何もないかも知れないけど取り合えず東へ向かって移動しよう。ここはフィールドの東端のエリアだから東にいっても到達エリア拡大の利点はないんだけど、河口付近まで行けば何かあるかもしれないし、最悪泳いで渡ることになったとしてもフィールドの東端から行けば北・南・西のどのエリアから敵が来ても少しは時間に余裕があるはずだから」

「いいだろう……少しでも早く奥方と合流したいのはやまやまだが仕方がない。世界の端という玄の言葉……正直信じられぬが、そうであるならばその案は確かに無難であろう。 奥方と合流するまで無茶はできんからな」


 関羽が少し考えてから賛意を示す。それを受けた悪来が静かに馬首を東へ変えて走り出す。

 悪来と共に旅をするようになってから、関羽は悪来に(くつわ)(あぶみ)はもちろん(くら)すら装着せずに走っている。それ自体は道具を作ることができないためやむを得ないことなのだが、関羽は悪来に騎乗するにあたりそれらをまったく苦にしていない。

 言葉が通じるため、意思の疎通はもちろん問題ないのだろうが現代乗馬の常識から考えれば信じられないほどの卓越した騎乗技術だった。


 この世界における基準であるエリアの端から端までは直線で10キロメートル。悪来の快足と関羽の騎乗技術で川沿いを駆け続ければ、特に険しい道もないため程なくして海が見えてくる。

 ここまでの間に川幅の狭くなっている部分があるかも知れないと考えていた玄だが、結局河口まできても簡単に渡れるような川幅の場所はなかった。

 河口付近は他の部分よりも水深が浅そうなのがせめてもの救いだが、歩けるほどの浅さではなく距離的にも普通に泳いで渡るのは躊躇する距離だった。


「河口のところに中州がある……」

 

 だが、川を見渡していた玄の視界に入ってきたのは河口の手前あたりに位置し、ちょうど川の中間地点に近いところにある中洲だった。

 中州はかなりの大きさがあり、中央付近には木々も生えていて対岸は見通せない。


「ふむ……中州があるということはあのあたりはさほど深くはないのだろうな。それにあの位置ならば、途中で立ち寄れば陸地の分だけ泳ぐ距離も少なくてすむ」


 どうやら関羽も、同じものを見て同じことを考えたようである。さらに付け加えれば河口付近であるため、流れも穏やかになっているから泳ぎやすいというのもある。


「うん、ここを渡ろう。まずは中州まで行って、そこで一度周囲を確認してから反対側に回って残りの半分を渡る。安全策をとるならマーカーも消した方がいいんだけど……」

「それはやめた方がいいだろう。お主の言うところによれば、既にこのえりあ(・・・)に我らは入っている。いまさらその目印を消したところで気付いている者は気付いているだろう。それならば体力を消耗するだけ損になる」

「いや、確かにそのとおりなんだけどね……」


 玄は関羽の言葉に感心すると同時に思わず驚愕する。


「なんだ?」

「こんな短い間にこの世界の法則を覚えて、それをちゃんと理解していることがさすがだなって思って」

「ふん、将たるもの最低限の知識は心得てなければなるまい。まあ、わが義弟のように直感と勇猛だけで軍を率いる者も居ないわけではないがな」

「ぷっ、やっぱり張飛って猪突猛進なんだ」

「うむ、否定はできんな。だが、敵には回したくはない。あいつはただの猪突猛進ではない。時折どんな智慧者でも読みきれないような策や行動を『なんとなく』で迷いなくとったりするうえに、翼徳と翼徳が率いる兵は恐ろしく強い。孔明も扱いには苦慮していたな」


 いつもより雄弁に語る関羽。いつになく楽しそうなその表情は、懐かしい昔に想いを馳せているのかもしれない。


「ヘイヘイヘーイ! 元気してるかーい」


 場違いなハイテンションで、せっかくの雰囲気をぶち壊した声はいうまでもなくヘルプである。


「おい! なんで呼んでもいないのに勝手に出て来るんだ? お前はどんだけ自由なんだよ……」


 関羽の口から昔の英雄の話を聞ける機会を台無しにされた玄は不機嫌さを隠せない。関羽も表情には出していないが、先ほどまでの楽しげな雰囲気は消えてしまっているから、やはり気分を害しているのだろう。


「ちちち、策っていうのはな、玄。相手を読む前に味方が読めてなきゃ、立てられないもんなんだぜ!」

「は?」


 唐突なヘルプ(今回は四ピン)の言葉に玄は首をかしげる。


「だ、か、ら~味方にも読めないような行動をされると困るってことさ!」

「……さっき、関羽が話していた張飛のこと?」

「ざっつ、ら~いと!」


 ふんふんふんと鼻歌を歌いながら腰? を振りつつヘルプが答える。


「だからそれを! なんで! お前がいちいち解説にくるんだっての!」

「へ? ……あ、あ~そりゃ、ほら俺ってヘルプだしぃ? そう! いろいろプレイヤーに知識を供給する係な訳よ」


 ご丁寧に額? に汗を表示しながら苦しい言い訳をするヘルプ。


「はいはい、単なる暇潰しだろ。見ててもいいけど邪魔すんなよ。もちろん本来教えられないような極秘情報を教えてくれるってんなら別だけどな」

「な~に言ってやがんでぃ! そんなことできるわけねぇだろ! ……っと、そんなことを伝えに来たんじゃなかった」

「ん? 本当に何か用事があったのか?」


 玄の言葉に、にやりとしたヘルプが虚空に黒板を出す。


「見な! とうとう残りが7割、つまり70名になったぜぃ」


 確かに、ヘルプの指し示す数値が70を表示している。つまり30名、正確には未だに未登録者がひとりいるため29名が敗北をしたということだ。

 約5日で3割……これを多いと見るべきか、少ないと見るべきか微妙なところである。


「未登録の1名はここまできたら、あまり気にしない方がいいかもな」


 ヘルプが黒板をしまいながら言う。


「聞いた? 関羽」

「うむ、急がねばなるまい。兄者や翼徳がやすやすと負けるとは思わぬが人数が減ってくればおのずと強敵ばかりが残ることになる」

「うん、そうだね……そのためにも早く孫仁と合流して本格的に動き出さないと」


 玄と関羽は甘くない現状を改めて認識し、気持ちを引き締める。


2章は早いペースで一気に投稿していく予定です。

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