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ゲームに三国志の武将が封印されていたから解放するために戦ってみる (旧題:三国志~武幽電~)  作者: 伏(龍)
第1章

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21 弓腰姫

 問われた孫仁は一瞬だけ驚愕の表情を浮かべるが、すぐに神妙な面持ちで頷く。


「そなたは少しは事情が分かっているようですね。確かに私は孫仁『本人』です」


 もはや確信していたとはいえ、またひとり理不尽な扱いを受けている魂が目の前にいるという事実に玄は心が重くなる。


「え? え? どういうこと? そろそろ説明しなさいよ、玄」


 真剣な顔で見つめあう二人に、(いろんな意味で)ただならぬものを感じた茜は慌てて玄の肩を揺さぶる。


「お~い、分かったからそんなに力一杯揺するな、首が、痛い、って」


 がくがくと揺らされる頭に玄が抗議すると、茜はピタッとその動きをとめて玄の目を見据える。


「じゃ、説明して!」


 玄は乱れた髪を軽く撫で付けながら、茜と孫仁を順番に見る。そして、小さなため息を漏らすと口を開く。


「じゃあ、孫仁も聞いてください。俺が知っていること、体験したことを説明します。その上でできれば協力してもらいたいと思っています」


 玄はそう告げると、二人に座るように促し、先日からの一連の流れを説明して聞かせた。


◇ ◇ ◇


「えっと……」

「いいよ、信じられないのはわかるから」


 やや、長くなった玄の話を聞いての茜の第一声を遮って玄は大きく息を吐いた。


「俺だって実際の武将に直接会って、あの存在感を実感しなければ、とても信じられなかった。そして、そもそもヘルプに前もって言われてなければ、目の前で話をしてても凄いゲームだなとしか思わなかったかもしれない」

「レン、本当なの?」


 茜も玄がこんな嘘をつく訳がないのは分かっている。それでも確認したいのだ。


「こんな姿になってしまったわたくしですですが、認識としては、いま玄殿が話したことと全て一致します。この、わたくしの認識が作られたものでないのなら、間違いなくわたくしは漢の時代を生きた孫仁です」


 茜は大きなため息をつくと一人頷く。


「なるほどね……だから玄は昨日、今日と様子がおかしかったのね」

「……表には出さないようにしてたつもりなんだけどな」

「そうね、言われてみれば思い当たるって程度だったけどね。それでどうするつもりなの?」


 玄は自分のVSを取り出すと茜のVSの隣に置いた。


「持って来てたんだ」

「一応な」


 並べられたVSを前に、玄は茜と視線を合わせる。


「俺は、こんなゲームに拘束されている英雄たちの魂を解放してあげたい。こんな不思議なゲームに誰かを巻き込むつもりもなかった。だからひとりでやるつもりだったんだけど……」


 茜と視線を合わせたまま玄は、一瞬だけ躊躇う素振りを見せた。


「でも……こうして信頼できる人が、偶然にも同じ状況にいる。だから、茜……よければ手伝ってほしい」

「もちろんよ!」


 茜が即答する。玄に信頼してるとはっきり言われたことが嬉しい。頼って貰えたことが嬉しかったのだ。なにより、すでに言われるまでもなく玄と一緒に、この不思議な話を共有していくつもりだった。


「ありがとな、茜。孫仁、できればあなたにも同盟を組んで一緒に俺たちと戦ってくれると心強いんですが……。でも、強制はしたくないんです。だからお願いをします、俺たちに力を貸してください」


 孫仁は静かに玄の言葉を聞いている。


「俺たちはゲームのプレイヤーとして、あなたたちの行動を支配することができます。でも、俺はそういうことをやめさせたいからこのゲームをしようと思っています。だから、あなたを無理やり操作して戦ったんでは意味がないんです。あなたの意思で俺たちに協力してくれませんか?」

(玄……かっこいい)


 真剣な顔で訴えかける玄を横から見ながら茜はそう感じた。いつもはどこかのほほんとした雰囲気で周りを和ませている玄が、本当に真剣になっている。それは、取りも直さずこの問題がそれだけ玄にとって重要な問題として認識されているということだった。


「似ているのは名だけではないのですね……」

「え?」

「あの人も……本当に誰よりも優しく、そして心根の強い方でした」


 孫仁は呟くようにそういうと、暖かい眼差しで玄を見つめる。


「あの人に、もう一度会えるでしょうか?」

「わかりません……でも私の相棒、というか私のところに封印されていた武将も玄徳公との再会を望んでいます。俺はそれを叶えてあげたいんです。だから、それまでは絶対負けるつもりはありませんし、もちろんそれ以後だって解決策がみつかるまで負ける訳にはいかないと思ってます」


 玄はようやく固まった自分の決意をぶつける。


「……わかりました。あなたたちを信じましょう。こんな状況のわたくしには願っても無い申し出ですから」


 孫仁が微笑む。


「本当ですか! よかった、ありがとうございます」


 関羽の時に交渉で苦労していた玄は、孫仁がすんなりと協力を受け入れてくたことに心底安堵する。


「よかったじゃない、玄。で、いい加減あんたのパートナーも教えなさいよ」


 玄の肩をぽんと叩いた茜が、期待に満ちた視線を送ってくる。


「ああ…………孫仁。一緒に戦うにあたって、俺のソフトに封じられていた武将と協力してもらうことになると思うんだけど……」


 頭を掻きながら、急に歯切れが悪くなる玄。


「当時の事情がわからないから、もしかしたらちょっと問題になるかも知れないんだけど……なんとか説得するので、あとでやっぱり協力しないとか言わないでもらいたいんですが」

「わたくしに(ゆかり)のある方なのですね? わたくしはどなたであってもそなたたちと協力していくという気持ちに変わりはありませんよ」


 孫仁がにこりと微笑む。

 ここまで、終始穏やかな笑みを浮かべて玄たちと対応している姿を見ると、一般に言われているような猛々しいイメージは脚色だったようだ。


「わかりました、助かります。私のソフトに封じられていた英雄は…」



「関羽 雲長です」


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