プロローグ
全く父の実験はいつもいつも災難ばかりだ。
考古学者の血が騒ぐ!と叫んで家を飛び出していき、数日帰らないと心配していると、京都から電話がかかってきたことはつい二週間ばかり前のことである。
それに加えて三日前には、台所で何やら怪しい薬品を混ぜているな、と思った次の瞬間その何かが爆発して、お気に入りのマグカップがご臨終なされたことは未だに頭にくる思い出だ。
それでもあきたらず、迷惑極まりない父の行動はあらたなトラブルを生み出したようだ。
それは今私の目の前にある。
いや、いる。と表現した方が正しい。
本が散乱した床に、尻餅をついた青年が、同じように向かい合って尻餅をついた私を見返していた。
ガラス玉のような真っ青な瞳が零れんばかりに見開かれ、淡いはちみつ色をした髪の毛が乱れに乱れていた。
「な、なんだ!?ここは!?」
動揺を隠しきれない様子の青年が日本語で叫んだ。
見た目からして日本人ではないので、日本語が通じるのか危惧していたが、通じるのなら話が早い。
私は光もかくやという早さで正座の体制になり、深々と頭を下げた。
「私の父が、ご迷惑をかけたようで本当に申し訳ありません!!!!」
めり込む勢いで床に額を擦り付けた。
それが私、相田咲とゼノとの出会いだった。