11、龍に落ちた神
お題「灰色」「竜」「激しい魔法」
ジャンル「邪道ファンタジー」
灰色の空、三匹の龍が居た。
三匹の龍は国を、山を、世界を荒らしていた。
国は龍に襲われないよう軍を鍛え要塞とかして防衛力を高め、そして龍を狩る者「ドラゴンスレイヤー」を鍛えていた。
今までの龍とは違うこと、そして魔王と戦うのにも技術を応用できることから勇者志望の者も多く来た。
だが、誰もまだ龍を一匹すら倒せてなかったそうな……。
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「くそっ女だからってなめやがって」
ヴァナ・ティーズは一級の勇者だった。ドラゴンスレイヤーとして大国グランディアノの学校を首席で卒業し、数多くのダンジョンを突破した猛者だ。
しかも19という若さであるという点から見てもかなりの優秀さが伺えるだろう。
しかし彼女は女でありそのせいでなめられることも多々あった。
今回は報酬を減らされたことで怒っていた。
だがその代わりに破格のクエストを依頼された。
しかもうまく行けば龍の情報も手に入る。
そのおかげで彼女は言ってることの割には浮かれていた。
「それにしても雪山はやっぱ寒いわね……」
見渡す限り雪でありそして目の前には雲が見える。高山病には鍛え上げたスキルでならない。早く登りきってしまおう。
今回のクエストは雪山の頂上のみに咲く薬草の採集だ。破格の理由は山が高いことと龍が最近みかれられたことだ。
うまく行けば龍と戦える。
しかし先ほどから見てもここで戦うのはあまりにも不利だ。龍を倒すのではなく情報収集に徹しよう。
雲を抜けて頂上が見えた。
「綺麗だ……」
山には日の光が当たり岩は黄金、雪は純白に輝いていた。
はっ見とれていた。いけない。早く済ませてしまおう。
そう思って足を踏み出した時だった。
突如雪が割れ地滑りが起きる。
「しまった!!」
雪に光があったことで溶けてしまっていたのだろう。
ここからだと助かる見込みはない。
こんな終わり方なんて!!
彼女は諦められなかった。
だからかもしれない。
目の前の人に助けられたことに感謝せずにはいられなかった。
「礼を言う。助かった」
今いるのは岩の面にあった洞窟だ。
断崖絶壁であり、入り口は狭いが中は広い。
来ることさえできれば絶好の穴場だった。
「いやーそれほどでもねぇよ」
目の前の男は同じくらいの年だろうか。
髪が赤く、顔は幼い印象を保ちつつも何処かに凛とした雰囲気がある。
そしてかなりの手練だ。引き締まった筋肉には古傷が二本、胸にあった。
「てかなんであそこに?」
「頂上のみに咲く薬草、パープルスイートを取ってきてほしいと頼まれてな」
「ん? あれ毒草じゃなかったっけ?」
「なに!?」
男は顔を掻きながら少し言いずらそうに説明してくれた。
「パープルスイートは別名でほかにもミクロポイズンなんて呼ばれるね。
正確には蠱毒草。シダ植物なんだ。花を咲かせた時に枯れるまで永続でミクロの大きさの、とてもきめ細かい毒をだす。その毒は猛毒で少し吸っただけで死ぬ。そんな草だよ?」
ということはあれか。
わたしは騙されたのか。
薬学には精通していたがパープルスイートとという名前では覚えてなかった。
己の単純さにあきれる。
「あ、でも助かってよかったね」
男は呑気そうに言う。
きっと気を使っているのだろう。
「ありがとう」
「いえいえ」
そう言ってコーヒーを渡される。
遠慮なくいただいた。
すると男は身体に外套をまとい身支度を始めた。
「君はしばらく休んでいてね」
「どこかに行くのか?」
「うん。少しね」
そう言って洞窟の外に飛び出る。
「おい!」
落ちたのでは、そう思って外を見た。
信じられなかった。
西の白龍フェンリガルムの背中に乗って飛んで行ったのだから。
自分の力ではここから出られない。激しい魔法も精神を消費していて使えない。
それが悔しかった。
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「あの女の子可愛かったな、お前の彼女か?」
「ちげぇよ。ばか」
この龍は根はいいくせに性格に難がある。
まあそこが好きなのだが。
「今回は?」
「ここから少し東の国を壊す」
「おおーあの奴隷のね」
この龍に限らず三体の龍はそれぞれ悪を滅ぼそうとしている。
それが自分のできる唯一のことであり、天界へ戻るきっかけになると信じているのだ。
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そんな説明を聞いたところで信じれない。
だが自分の実力では龍と戦えない。
なので次飛ぶ時に自分も乗る。
そういった。
そしたら龍は笑って
「好きにしな」
と言ってくれた。
思えば気を許しすぎたのかもしれない。
これが自分が変わるきっかけになるなど誰が分かるだろうか。
「フェンリルはね、神様なんだよ」
男……テュールはそう話してくれた。
神が1体いた。ロキというその神は子供を3人産んだ。
3人はひどくやんちゃだったが心優しかった。
あの日3人は父が犯した罪を肩代わりして龍となり地上に落とされた。
3人は罪滅ぼしとして、世界のために働くことで天界へ戻ることができるのだと。
見ず知らずの私になぜ話してくれたのか?
その問いかけにテュールは
「少しでも多くの人にあいつの苦しみをわかって欲しかった」
そう言った。
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その日から私の生活は変わった。
テュールとフェンリガルムの為にご飯を作り、家を建てた。
住む場所は暮らしやすい森に住み、やがて夫婦となった。
三人で仲良く暮らした。
テュールとフェンリガルムは国を滅ぼすのを止めたし幸せだった。
だからかもしれない。
兵士が襲ってきてテュールは手練だとはいえ片腕を失った。
フェンリルは怒ってしまった。
そして何処かに行ってしまった。
私とテュールは国を回りフェンリガルムを探した。
フェンリガルムは山で横たわっていた。
「フェンリル!!」
「……その声はテュールか」
フェンリガルムは身体に傷を多くつけていてもう助からないと目に見えてわかった。
「無様なものよ……奴隷を解放し、国をいくつも滅ぼした。お前らに傷をつけた国を探しながらな。ようやく見つけた時に国王の娘にあってな。大層いい娘で仲良くなったんだ。だけどそのせいで娘を追ってきた兵士に襲われたんだよ。あそこの兵はな国王に無理やり働かせられててテュールにああしてしまったらしい。そして革命が起きた」
「……」
「テュール、ヴァナ……正義とはなんだ? 私はどうしていいのか分からない。罪滅ぼし? なんなのだ」
「正義とか悪なんて白か黒かなんて決められないよ。答えはいつもグレー。灰色なんだ。君たちが来たあの空と同じね」
「では私がやってきたことは?」
「それは間違ってない。テュールと私が保障しよう」
「……心優しい我が二人の友人に頼みがある……この国王の娘……匿ってはくれないか……」
「そんくらい任せといてよ」
「頼んだぞ……」
そう言って一匹の龍は息絶えた。
私たちはこの地に墓を作り家を建てた。
花を植えた。その花は綺麗な純白に輝いて咲いた。私たちは忘れない。悲しい友のことを。
すみません邪道ファンタジーが分からなくて……めっちゃいいお題だとは思ったんですけどすみませんでしたm(__)m
本当すみませんでした。
ちなみにフェンリルとガルムの足した言葉がフェンリルガルムです。すみません。わかりずらくて。