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三題噺①
お題 「猫」「神様」「綺麗な小学校」
ジャンル「ミステリー」
とても綺麗な小学校だ。新築であるということもそうだが一面病院のように真っ白に統一されたこの建物はまるで汚れが見つからない。それが一方で異常なまでの潔癖であるかのように淳の目に映っていた。
「被害者は12才、小学6年生の女子児童です。彼女は昨日学校に残っていた先生が小屋にて発見。撲殺で死因は鉄の棒のようなもので一撃。いじめなども見られてはおらず、比較的クラスの中心にいた女の子のようです。ですがここ最近帰りが遅くなることもしばしばあったようです。また猫の毛が少し付いていたそうですが家でも飼っているので気にしなくていいかと」
「すまん。ここを作った人は?」
「は?」
「あ、いや口下手でごめん。この校舎を設計及びこうするように頼んだのは誰か調べておいてくれ」
はいっ!と大きな声を出して部下が去る。
それを見た後にもう一度現場を確認する為に外に出る。校舎の左後ろ、後ろの竹林と校舎に挟まれるようにしてこじんまりと建っている小屋。そこが犯行現場。
現場には縄や使われなくなったチョークといった道具が置いてあり先ほど歩いてきた校舎とはうって変わり木造のままだ。改装はもう少し後にするつもりだったらしい。
現場は特に荒らされた様子もなくここで殺されたとも言いづらい状況だった。
また死亡推定時刻が夜6時、小学生であれば明らかに帰っている時間でありそれがますますここで殺されたとは考えづらくしていた。
時間帯的にも侵入者がいてもおかしくない。また小屋の近くはちょうど防犯カメラを避けてこれる。
何故彼女が殺された?
ふと側に猫の声が聞こえ外に出てみると子猫がいた。少し汚れてはいるが発育は良さそうだ。家猫だろうか?
……猫の毛。
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「警部、まず一つ目設計したのも頼んだのも同一人物でここの校長でした。工業系の高校にいたそうです。二つ目猫の毛ですが女子児童についていた猫の毛と一致しました。そして女子児童がお菓子、煮干しや鰹節を持ってきていたことも確認されました」
「刑事さんいきなり私の前で何を話し出すのかね?私は忙しいのだよ。校長だからね」
そうここは校長室。先ほどまで丁寧に仕事していた跡が見え、やはり丁寧に掃除されている。この校長は学校教育において神様と呼ばれているらしかった。
「まあ校長先生聞いてください。校長先生はよく仕事を残ってするそうですがその日も残っていたのでしょう?
普通の先生であれば帰ってる時間大体6時頃いつも通り綺麗な校舎を見て回っていたのでしょう?そうでなければ業者も頼んでいないのにまるで汚れが一つもないわけがない。
小学生なら完璧には綺麗にできないからな。
そしてその時だった。校舎の窓から児童が猫と遊んでいるのが見えたのは。
それを見たあなたは思った。汚されると」
「ちょっと待ってください。何故私が猫ぐらいで殺さなくてはならないんですか? しかも潔癖なのは認めますがそれくらいで何故?」
「それくらいで殺すでしょう? だってこの校舎、いやこの小学校はあなたが建てた私立の小学校。潔癖で完璧主義であるあなたからすれば許せなかった。そうでしょう? 幸い殺した道具もすぐそこにある」
「は?」
「カモフラージュしたつもりですか?確かに一個一個探すのは大変だし調べないですよ鑑識でも掃除道具の入ったロッカーなんて」
「……」
「あなたはあの日だけでなく前から少女にこう言ってたんだ『猫は学校で飼ってはいけないよ』だが、少女は持ち帰らずずっとそこにおいていた。それが許せなかった。野生動物にこの完璧な校舎に傷をつけられる。私の完璧な校舎に。そう思ったあなたはとっさに持っていた箒で猫を殺そうとした。そして間違えて少女に当たってしまった。その後あなたは汚い小屋に入れ放置して帰っていった。幸い校門から出る時の防犯カメラには映っていたよ」
「……」
「あなたは神様ではない。人だ。人は人の命を奪ってはならない。ましてや自分の生徒を思い通りになんて傲慢すぎる。生徒は猫を引き取ってくれる人を探してはいた。あなたはそれも知らず自分の言うことを聞かなかっだと思い殺したんだ」
「署に連行します」
部下がそう言って連れて行く。校長室をすぐに鑑識が調べ始めた。あとは時間の問題だろう。
しかし、本当に綺麗な校舎だ。異常すぎるほどに。