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タオルのお礼(前)

目の前にあるのは洗濯して綺麗にただんであるタオル


「うーん…」


私は今とても悩んでいた




先日、雨の中傘に入れてもらった挙句びしょ濡れになってしまった私に藤咲くんが貸してくれた物、なの、ですが


「藤咲くん、手大きかったなぁ…」


って違う違う!!なにを思い出してるの私は、確かに格好良かったけども!!

赤くなった頰にパン!と喝をいれて再び本題に入る。


そう、このタオル。洗濯をして綺麗にたたんだのは良い、問題は


「お礼……どうしよう」


ただタオルを返すだけでも良いのだけれど、あれだけお世話になったのだから何かお返しをしたい。


そこでふっと思い出したのは昨日の藤咲くんの言葉

〝だから…その、また作ったら頂戴〟


「……お菓子、かぁ」


現在時刻は21時。お菓子を作るならもうはじめないと。


「…よし」


意を決した私はさっそくお菓子を作るべく台所へ向かった











次の日



「おはよー」


「あぁ、郁おはよう遅かった…ね、ってちょっと?!」


いつものように教室に着いて挨拶をするとりんちゃんは私を見た途端ギョッとした顔をした


「ちょ、郁どうしたのその顔!!」


「…え?顔??」


「目真っ赤!それになんか顔色悪いような」


「あ、あぁ!昨日ちょっと夜更かししちゃって、あはは」


昨日散々迷った挙句作ったのはシンプルなクッキー。しかし生地を冷やしたり型をとって焼いたりなど意外と時間がかかってしまい、実はちゃんと寝れてなかったりする


…でもこれ正直にりんちゃんに言ったら怒られそうだなぁ


「夜更かし?…なんかもう徹夜したような顔だけど」


「へ?!してないよっ、徹夜なんて、」


「…大丈夫?少し保健室で寝てきた方が」


「だ、大丈夫大丈夫!ほら、そろそろ席につかないと!」


これ以上話しているとバレそうなので慌ててりんちゃんを席に追いやる。ふぅ、危ない危ない


あー、でも本当、眠い。普段徹夜なんて全くしないからこんなに寝ないの慣れてなくてふらふらする…やっぱり保健室で寝させてもらった方が良かったかなぁ。


「今日の最初の授業なんだったかな」


自然と降りてくる瞼を必死で上げてそんな事を考えた






3時間目が終わった


自分的にはどうにか耐えられているつもりでいたのだけれど


「もうだめ、これ以上は見てられない。保健室行くよ」


「え、ちょ?!」


とうとうりんちゃんストップが入りました


「…言っておくけど、あんたが何か隠してるのはわかってるんだから、ちゃんと白状してもらうからね」


「……。」


りんちゃんに隠し事は出来ないと確信しました。う、顔が怖かったよりんちゃん、絶対怒られる



保健室に着くや否やりんちゃんはものすごい早さで先生に話をして私をベッドまで連れて行きました


「はい、はやく横になる!!」


「はっ、はいい!!」


びしぃっとベッドを指差されて慌てて私は横になった、すると満足そうにしたりんちゃんが側にあった椅子に座り、で?、と肘をつきながらこちらを見た


…で?とは??


「休み時間は残り7分、さっさとその寝不足の原因を教えなさい」


「ひっ」


すぅっとりんちゃんの周りの温度が下がった気がする…こ、こここ怖いよりんちゃんっ


「……お、怒らない?」


「…内容による」


うぅ、

もうこれは逃げ道はないと観念した私は藤咲くんのタオルの事、お礼をしたくてお菓子を作った事を話した……それが原因で寝不足だと言うことも


「…………。」


「……。」


全てを話し終えるとりんちゃんは…なんとも言えない顔をして黙り込んでしまった。


…ち、沈黙!無言辛い!!


一体次にどんな恐ろしいお説教がくるのかとビクビクして待っていると返ってきたのは予想外の反応だった


はぁ、とため息をついたりんちゃんがやっと口を開く


「郁…あんたねぇ」


「はっ、はいっ!?」


緊張しまくっていたせいか私の声は裏返ってしまった


「ほんっとうにバカね」


「ゔ」


い、今のはグサッと来ましたよりんちゃん


しかし、言葉こそあれだがりんちゃんの声音は予想外に柔らかかった


「…またあんたがあいつの事で悩まされてるのかと思ったけど、心配して損した」


「え」


あいつ…あいつって藤咲くんのこと?


そっか、りんちゃん心配してくれてたんだ


「…りんちゃん、ありがとう」


私は胸がジーンと暖かくなるのを感じた


「でもね、郁。あんたがバカな事をしたっていうことに変わりはないからね」


「ゔ、ご、ごめんなさい」


さ、さすがりんちゃん、しっかりしめることも忘れないね…



キーンコーン



こんなことを話していると予鈴の鐘が鳴った


「あ、そろそろ私行くから。郁はちゃんと寝てなさいよ」


「うん、ありがとうりんちゃん」


「…どういたしまして」


そう言って少し笑ったりんちゃんを見送って私は布団をかぶり直した。


すると、自分が思っていた以上に眠かったのか私は5分も経たないうちに深い眠りについたのでした。




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