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彼女(?)

「気持ち悪い。」


「えっ」


藤咲くんとはじめての下校を果たした翌日、私は悶え死にそうになりながらもりんちゃんにパシリでは無かったことを報告。ていうか、あれ、なんかデジャヴ?


「顔にやけすぎ、朝からずっとその顔されてるこっちの身にもなって。」


「り、りんちゃんひどい…っ!」


だってしょうがないじゃないか。昨日家に帰ってもふとした瞬間にあの時の、彼女でしょ、と言ってくれた藤咲くんの顔が浮かんでは悶えてたのだ…これでも大分収まったと思うんだけど


「はぁー…まぁ良かったんじゃない?郁の事をそういう風にみててくれたってわかって」


「だっ、だよね!そうだよね、すごい進歩だよね?!」


なんだかんだで私の話に付き合ってくれるりんちゃんは優しい。


「で?」


「え?」


で?とは…?


「え?じゃないわよ、そこまでにやけるってことは手くらい繋いだの?」


「え、まさか」


まさか、あり得ない。藤咲くんと…手?考えただけでも死にそうだ


そうあっさりと答えるとりんちゃんはあり得ない、とでも言いそうな顔でこちらをバッとみた。


「あんた達昨日なにしたの、楽しくおしゃべりしながら帰ったとか?」


「えっ、と。その、彼女って言ってくれたあと藤咲くんまた少し歩くの早くなっちゃって、追いかけてたら駅に着きました。」


「っはあぁ?!」


ダンッと今度は机を思いっきり叩く。

え、えぇーりんちゃんどうしたの


「…あんたそれ本当に付き合ってるの」


「つ、付き合ってるよ!彼女って言ってくれたもん!」


「いや、そうかもしれないけど…」


なんだか深刻そうな顔をするりんちゃんを見ると申し訳なくなってくる。で、でもまず私の存在すら知らなかった藤咲くんが一緒に帰ってくれたんだよ?!もう奇跡としか言いようがないよ?!


「まぁ郁が良いならいいんだけど…。じゃあ今日も一緒に帰るの?」


「え?…わからない」


そういえば昨日は藤咲くんが言ってくれたから帰る事になったけど…これから一緒に帰りましょう、みたいな事は言われていない。うーん


「普通はもう一緒に帰ると考えて良いけど…その話を聞くとなぁ。」


あぁりんお姉様が頭を抱えてしまった!せっかく綺麗な顔なのに、眉間にシワ残っちゃうよ!!


「じゃあ今日は郁が誘ってみたら?」


「え?」


「一緒に帰りませんかーって、で、ついでにこれから一緒に帰れるか聞けば良いじゃない。」


え、え…?


「えっ、ええぇ?!む、無理!おこがましい!!」


「藤咲くんは何者よ…」


「だっ、て、藤咲くんだよ?私が誘うって、嫌がられない?」


「昨日は誘いに来てくれたんでしょ?じゃあ嫌がられてないんだから今日は郁が勇気だして話しかけに行きな。」


「う、うぅー…」


「藤咲くんともう帰れなくなって良いの?」


「よ、よくない!!」


ようやく決心を固めた私は昼休み、藤咲くんの教室へ向かった




「はあぁー…」


…ど、ドキドキする。緊張で変な汗かいてきたかも、やっぱり一度戻って体制を立てなお…いやいやいやそんな事したら多分ここに戻って来れない


すぅーはあぁ


ゆっくり深呼吸を1つ

いざ!!


勢い良く教室へ足を踏み入れた


はずだった


ドンッ


「うわ?!」


「えっ、わ!」


ペチッと音と共にコンクリートの地面に尻餅をつく。ちょうど教室を出ようとした人と私が思い切りぶつかったみたいだ


これは、完全に私の前方不注意っっ


「す、すいません!前をちゃんとみていなくて…怪我ありませんでしたか?!」


「いや、俺は平気だよ。ていうか君の方こそ結構勢い良く倒れたけど…大丈夫か?立てる?」


私とぶつかった人は男の人だったようで相手は怪我がなかったようだ。良かった


立てる?と手を差し伸べてくれたのでお礼を言ってつかまる


「本当に大丈夫か?手とか、足とか…」


「いえいえ本当に!私丈夫ですし!!」


優しい人だなぁと思っていると呆れたような声がかかる


「なにやってるの、杉田」


「おう藤くん!」


「え、藤咲くん!?」


同時に声を発したところでお互い、え?と顔を見合わせる


「藤くんの」


「藤咲くんの」


「「知り合い(ですか)?」」


「……。」


またお互い顔を見合わせてきょとーんとする。


と、しばらくキョトンとした後突然目の前の男の人は、あぁ!と声をあげる。


え、なに?


すると今度はにやにやぁっと笑い出して藤咲くんを見始める。


「わかったぞー藤くん、この子だな?お前の可愛い可愛い彼女は!」


「えっ?!」


「うるさい杉田、黙れ」


「あっはは!当たりか!!」


…彼女、彼女って!やっぱりまだ慣れないけどその呼び方はなんだか嬉しい


「よろしくなー彼女さん!俺、杉田 純平、こいつの友達ー」


「は?誰がお前と友達だって?」


「ひどいよ藤くん!?」


「あ、えっと…はじめまして、佐々木 郁です。」


なんだか仲が良さそうだなぁと思いながら自己紹介をするとその人…杉田くんは嬉しそうにうんうん、と頷き


「よっし郁ちゃん!このあと暇?」


「え」


「お話ししようお話!俺一度話してみたくって」


と、私の腕をとって歩き出す


「…いっ、」


「…郁ちゃん?」


「あ、いえ、なんでもないです、すいません」


一歩歩いて気づく、なんだか足が痛い。さっき立ち上がった時はなんともないなぁ、と思ってたんだけど…歩くと痛い。


「あ、もしかして足痛めた?!」


「え、あ、え…と」


「うわあごめんな!え、と歩ける?保健室…」


「いえあの!大丈夫で…」


「郁」


「……え」


そう言って私の手を掴んだのは藤咲くんだった。


い、い、い、今!!郁…って、名前、名前…呼ん…ていうかえ、手っ?!


「行くよ」


「え、あの……いっ!」


「!」


ぐいっと引っ張られて歩き出すけど一歩歩くと痛くて思わず声が出てしまった。


……しまった。


藤咲くんが考え込んでる。藤咲くんを困らせるなんて…っ、なんたる失態!


「す、すいません。でもこれくらいなら私一人で歩けそうなので!わざわざすいませ……わっ」


すいません、と言おうとするとグンっと引っ張られる感覚と急に高くなる視界


「おーやるねぇ藤くーん。でもお姫様だっこの方がいいんじゃない?」


「うるさい」


私より少し下で楽しそうに笑う杉田くん


藤咲くんに持ち上げられたのだとわかったのは持ち上げられてから数秒たってからだった


「……っ?!ふ、藤咲くんっ、え、重い!重いから!!お、おろし…」


「いいから、あんたも少し黙ってて」


ぴしゃり、と言われる。…抱き上げられているので顔は見えないが声の感じからこれ以上言ったら本当に怒られそうだ、仕方ないので大人しく藤咲くんに掴まる


「じゃあ、行ってくるから」


「はいはーいじゃあな郁ちゃん!今度ゆっくりとお話しような!」


「え、は…は、はい」


こうして杉田くんに手を振りかえしながら教室を出る。…昼休みなので人目がかなり気になったけれど藤咲くんはあまり気にしていないようだった。




「はい」


保健室につくと、藤咲くんはすぐそばにあるイスに私をおろしてくれた


「あ、ありがとうございます」


「別に…本当に先生呼んで来なくていいの?」


「いえいえ、足も多分軽いものですし、私一人で十分ですよ」


ちょうど保健室の先生は何処かへ行っていたようで不在、さすがに軽く足をひねっただけで呼びに言ってもらうのは申し訳なさすぎるので笑いながらそう答えた。

すると何かを考えたように立っていた藤咲くんはゴソゴソと棚をあさった後


「…足、靴下脱いで」


「へっ」


突然しゃがんだかと思ったら平然とそう言われたのだ


…今、なんとおっしゃいました?ぬ、脱げと?


「湿布、見つけたから。今のままだと上手く貼れない」


「えぇっ!?いや、あの自分で貼れるので大丈夫ですよ!?」


「いいから早く」


「…はい」


怒られてしまったのですごすごと靴下を脱ぐ。…あの、好きな人の前で靴下といえど脱ぐのってかなり緊張するんですよ?しかもこの私の足なんて!!お目汚しだ!!あああ、もっとちゃんとケアしておけばよかった!!!


「痛かったら言って」


「っ」


そう言って優しく私の足をとって湿布を貼る藤咲くん。少しひやっとした、彼の手が冷たいのか私の足があついのかよくわからないけれど


…神様、これは一体なんの試練でしょうか、私いま倒れそうです、なんかもう爆発しそうです、なんですかこの構図は


「あ、あの、藤咲くん」


「…何」


沈黙でのこの時間が耐えられなくて、何か話そうと元々ここに来た目的のあれを聞いてみることにした


「き、今日…一緒に帰れませんか?」


「…無理」


ですよねええええ!!!


速攻でお返事いただきました!いや、あの、わかってたけどね?!欲をいえば少しくらい悩んで欲しかった…なんて


いやいやいやいや何ちょっと落ち込んでるの私、わかってたでしょ


「今日は、放課後先生に呼ばれてるから」


「え」


すると湿布を貼る作業が終わったのかそのままの体制でこちらを見上げる藤咲くんと目があう。


「明日なら平気」


「え…え?!」


ま、まさかの明日オッケーが!!え、嬉しい、生きてて良かった、さっき爆発しなくて良かったよ私!!!


「…ていうか俺は帰宅部だから基本はなにもないんだけど」


「…えーと?」


そ、それは良かったですね?と微妙な返事を返すとはあぁーっと深ぁいため息をついた藤咲くんが口を開く


「だから、大体いつも一緒に帰れるからってこと。…なんでそんな鈍いの」


「…え、えっ、いいんですか?!」


ま、まさかの普段の帰りも許可がいただけるとはっっ?!なんだろう、まさかこれは夢オチなんじゃ…


「彼氏と彼女は大体毎日一緒に帰るものってきいたから言っただけなんだけど…嫌なら別にいいから」


「いっ、嫌だなんて!そんな!まさか!!めっそうもない!ふ、不束者ですが、よろしくお願いいたします!!」


なんか挨拶を間違えた気がする。頭を下げてからじゃ気づくのが遅いけど


すると、藤咲くんが立ち上がる


「ふっ、本当に変わってるねあんた」


「っっ!!」


ふ、藤咲くんがっっ、わ、笑った?!


「ぁ…ぅ、ぇ…っっ?!」


「…何言ってんの」


混乱して口をパクパクさせているとまた藤咲くんは元の表情、というか眉間にしわを寄せてしまった。


「じゃあ、休み時間そろそろ終わりそうだし俺は行くから」


「あ、はい!ありがとうございました!!助かりました!」


「うん、お大事に」


パタン


「……ぅ、うわあぁぁっっ!!!」


ドアが閉まったのを確認して私は悶える


もう限界だ、無理!完全に容量オーバー!!!


藤咲くんのあの一瞬の、少し呆れたような笑顔が頭から離れなくて、午後の1番はじめの授業中足の痛みがひくまでずっと保健室で悶え続けて保健室の先生に本気で心配されて、やっと帰った教室でりんちゃんに〝朝より気持ち悪い!〟と叩かれるのだけれど、それはもう少しだけ後の話ということで



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