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本日のメインは?

…さて、皆様。

私達がなぜ今日この遊園地に来たのか、覚えていますでしょうか…


「へぇ…これが」


そう、これです!!この観覧車に乗るためなのです!!!


時刻は午後18時過ぎ。あの妹間違え事件の後、藤咲くんとご飯を食べたり、他の乗り物に乗ったり(お化け屋敷に連れて行かれたときはどうしようかと思った…)と、それはもうたくさん遊んでもらって(なんど頬をつねったか…っ!夢オチじゃなかった!)そろそろ帰ろうか、という藤咲くんにこの観覧車のサービス券を使ってから帰ろうと提案したのです…が


「す、すごい人…ですね」

「…そうだね。」


そう、遊園地の目玉ともいえるこの乗り物にはものすごい数の人が並んでいた、多分ちょうど薄暗くなってきて景色が綺麗に見えるというのもあるかもしれない。


あぁ、失敗した…こんなことならはやく乗っていればよかったっ…


「…すみません、まさかこんなに混むなんて思わなくて…えっと、りんちゃんには悪いですけどやっぱりやめましょうか」


残念だけどこんな行列に私のわがままで藤咲くんを並ばせるなんて申し訳なさすぎる、ということで帰ることを提案すると


「いいよ、ほら、並ぶならはやくして」

「え?!」


そう言って私の手をぐいっとひいて観覧車の列に並ぶ藤咲くん。…ちなみに、私が迷惑をかけすぎて手をひいてもらってからずっと藤咲くんは私の手をひいてくれている。乗り物に乗る時やご飯を食べる時など一度手を離す機会があっても次歩くときにはまた藤咲くんは、手かして、と私の手をずっとひいていてくれた。おかげで心臓がずっとうるさかったのだけれど…


て、違う違う、今はその話じゃなくてっ


「藤咲くんっ、あの、りんちゃんも怒らないと思いますし、無理をしなくても良いんですよ…?」


きっと藤咲くんは優しいからチケットをくれたりんちゃんのことなどを気にして無理に並んでいてくれているのだろう、そう思って声を掛けると藤咲くんがばつが悪そうに目をそらした。


「いや、別にそういうのじゃなくて…これも〝王道〟の一つなんでしょ。…乗ってみるのも悪くないと思っただけだから」

「…ありがとうございます」

「なんでお礼を言うの」


なんとなくです、と笑うと藤咲くんは、変なの、と呆れたように笑った。

だって、なんとなく嬉しくて、くすぐったくてにやける口がおさえきれない。やっぱり藤咲くんは優しい、それに、気遣っての言葉かもしれないけど藤咲くんも少しは今日楽しんでくれたのかなぁとか興味を持ってもらえたかなぁとか考えるとなんだか嬉しかった。



「それにしても、なんでこれはそんなに人気があるの」

「え?」

「郁も好きなんでしょ、これ」


なんで?と首をかしげる藤咲くん。…なんで、かぁ。


「うーん、一緒に乗った人と…距離が近くなれるからですかねぇ」

「…狭い箱に入ってるから?」

「えっと、そういう意味もあるんですけど」


確かに物理的に距離は縮まるけど…うーん、そうじゃなくて


「あの中では音楽も流れません、人の声もほとんど聞こえません…」


まるでそこだけ切り取られたかのような感覚になる、不思議空間。


「だから…あの中では、そこにいる人たちだけの邪魔されない時間が過ごせるのかなって、目の前の広い遊園地をみて、今度はあれ乗ろう、あれ楽しかったねって…」

「…。」

「そんな風に話したり、同じ時間を過ごしたいから、皆大切な人と一緒にあれに乗りたいと…」


と、ここまで言いかけてハッとする。


「なっ、なにをっこんなに語ってるんでしょうねええわたしはっっ!!ただ景色が綺麗にみれるからですよねっ!藤咲くんも乗ればわかりますよっ、ほんと、ほんと綺麗なので、えーと、いまの話は、えっと…」

「ねぇ」

「はいぃっ!!」


あああ恥ずかしいっ恥ずかしすぎるっっ!なにをこんな一人で語って…っ、藤咲くんもそこまで聞いてないってばっ絶対そういう回答求めてたんじゃないのにっ


羞恥で真っ赤になった顔を見られないように、俯きながら藤咲くんの言葉に応答する。きっと今、私は耳まで真っ赤だ


「君にとって、俺は大切なの?」

「…え?」


見上げると、そこにはしたり顔の藤咲くん


「君にとって観覧車がそういうものならさ…これから一緒に乗る俺も、距離を縮めたい大切な人になるの?」

「〜〜っ!」


私がなんていうかわかってるだろうに、この話が恥ずかしいこともわかっているだろうに……意地悪だけど、はじめて見たこのしたり顔も格好良いのだからずるい。


「…もちろんです…っ」


完敗だ


「…っ、藤咲くんはっ…私の…大切な人でっ…距離を縮めたい人ですっっ!!」


半ばやけくそになって告げる、見ると藤咲くんは笑っていて


「知ってる」


おかしそうにそう言った。


…恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがないけれど、藤咲くんてこんな顔もするんだなぁ、なんだか見れて得したなぁとか考えている私は、これからずっと藤咲くんには敵わないのだろう。


「…。」


でもいつか、私が藤咲くんを大好きで大切だと考えているように、藤咲くんにとっての私も…藤咲くんのなかで、少しは大切な人になれたらいいな、なんて考えてにやにやしながら藤咲くんの顔をみていたのでした。


…まだばれてないけどバレたらまたなにやってんの、て言われそうだなぁ。けど、まぁいっか!

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