……彼氏ができました?
告白
それは人生最大のイベントの一つと呼んでも過言では無いだろう
そんな意気込みで私、佐々木郁は、目の前にいる藤咲夜くんに人生初の告白をしたのですが
「あんた誰だっけ」
「…………はいいい?!」
来るはずの〝ごめん〟または〝実は自分も…〟(これは可能性として低すぎるので前者の方を)を待ち構えていた私は予想外すぎる答えに女の子らしく…っと気をつけていたのを忘れて大声をあげた。
え、だって、今なんて言いましたあなた様は?!は?!誰だっけ?!
「さ、佐々木です!隣のクラスの!昨年同じ委員会の!」
「えーと、そうだっけ?ごめん知らない。」
な、なんですと…
告白の返事を聞かせてもらうどころかまさか存在を認識されていなかったとは…?!
よ、予想外すぎる…っっ!!というか悲しすぎる!!!
「え、と一応お話したこともあるのですが…」
「しつこい、知らないったら知らない」
「スミマセン…。」
しつこいと言われてしまった…!だって、だって!!
と、ここでよくわからないであろう私と彼の事を少し説明させてもらいますね。
私はさっきも言いましたが佐々木 郁といいます。現在16歳、2年3組 12番、牡羊座のO型です!大事な委員会ですが昨年、藤咲くんと同じ体育祭の実行委員をやりました。確かにやったんですよ?!妄想とかじゃないです!
で、彼は藤咲 夜くん2年2組 28番、射手座のAB型(調べたんですよ、怖いとか言わないでください)部活には所属していません。昨年私と同じ体育祭の実行委員をやっていました!…一応仕事の確認とかプリント渡す時とか話したはずです、妄想じゃないです、しかし存在を認識されていなかったみたいですね!!
え、えぇー。この状況どうしよう
藤咲くんのまさかの返しによりこれからどうしたら良いのかわからなくなってしまった。…基本的な告白の流れとは大きく変わっちゃってるからなぁ、え、こういうのって良くあるの?
「…あのさぁ」
「はっ、はいぃ!!」
固まっていると突然藤咲くんがかなり、かなーりめんどくさそうに口を開いた。
「あんたさっき好きっていったよね」
「え、はい」
「俺の事すきなの」
「えっ!は…はい」
真っ直ぐな瞳に見つめられると緊張してしまう、というかさっき告白したんだから2回も言わせないでください!!
「で?」
「……へ?」
…で?とは?
え、好きっていったよね、え?なにかまだありますっけ?
私が頭をぐるぐるさせているとしびれを切らしたのか髪をかきあげてながら藤咲くんが、だからっと話を続ける
「結局あんたは俺にどうしてほしいのかって聞いてるんだけど」
…ま、まさかの質問!!え、どうって、どうってそりゃあ
「そ、それは…あわよくば付き合えたらいいなとは思ってましたけど」
「付き合って俺に良いことあるの?」
「え…あ、ありますよ!?えっと、私意外と家事全般得意ですし数学はできないけど英語なら出来ますしっ、えーと、つまり」
自分でもなにが言いたいんだかよくわからなくなってきた
「つまりっ、私は便利です!!」
「…。」
……私はテレビショッピングの商品か。
自分で自分にツッコミをいれて考える、こういうことじゃない、絶対間違えた。多分、幸せします!!とかそういう事をいうべき場面だった
今私の頭の中ではあの陽気なテレビショッピングの音楽が流れている、あはは、30分以内のさらにお得だー
とりあえずやらかしてしまった現実から逃げる
すると藤咲くんがふーん、と考え込む仕草をした後、さらっと
「いいよ、別に」
「そうですね今ならお買い得……って、は?!」
今なんと!?!?
「…だから、別にいいよって言ってるんだけど」
「えっ、いいって、私と付き合ってもいいって事ですか?!」
「だから、さっきからそうだって言ってるでしょ…本当にしつこいよねあんたは」
「あ、え、あざーす!!」
混乱、嬉しさ、とりあえず思考がうまく回らないが頭をカバーっと下げておく。
え、え、うそ、うそでしょ?夢か?夢オチか?!
「……変な子」
「え、いや、それほどでも!えっと…不束者ですがよろしくお願いいたします!!」
私は頭を上げずにそのまま挨拶。あれ、呆れた感じのため息が聞こえる…気のせいかな
「こちらこそ。…じゃあね」
パッと顔を上げると藤咲くんが立ち去っているところだった。…え?こういうのってこう、晴れて恋人同士になった2人が仲良く一緒に帰るんじゃないの?
「あぁそれと。」
突然藤咲くんがくるっとこちらをみる
「俺、付き合うっていってもどうするかイマイチよくわからないから、そこのところよろしく。」
「……………了解いたしました。」
そして今度こそこちらをチラリとも見ずに藤咲くんは立ち去った。
えーと…佐々木 郁 16歳。
人生初の彼氏ができました…?




