憤怒と慈愛の穏やかな休日(2)
「で、デートなんてどうすれば良い?」
「それはですね…………」
「……? ――ああっ。考えてみれば、黛だっけ? あいつが黙ってる訳ないか」
「……どうしてこんな時だけ察しが良いんですか?」
実際、怜奈の周囲には男性は蓮華が遠ざけている上に、慈愛と言う条件だけにしり込みしてるのか、系譜格は1人として男性はいない
そんな怜奈が、男性とのやりとりに慣れている訳もなかった。
「……だったら一先ず、どこ行こうか? 漫画とかテレビとかでのお約束なら、喫茶店とかだよなあ?」
「――あの、ワタクシは出来れば人が多い所は」
「いやいや、もう手遅れだって」
「……すっげー美人」
「慈愛の契約者、水鏡怜奈だよなあれ」
「流石、契約者随一の美しさって評されるのわかるよなあ……あんな彼女が居たら」
「寝言は寝て言えバカたれ。でも夢だよなあ……」
慈愛の契約者、水鏡怜奈は“誰もが一度は恋をする”と評される美貌の持ち主。
普通に歩いているだけでも、周囲の男性の視線を独り占めしており、本人はそれが落ち着かないらしい。
「それにワタクシは、和風が好きなのですが」
「だったら、お茶と茶菓子でも買って、公園で食べる?」
「そうですね。こういう時、手作りのお弁当でも用意してもよかったかも知れません」
「――世の男が聞けば、大激怒もんだけどな」
「あら、憤怒の契約者が怒りを恐れるのですか?」
「まさか――あっ、そうだ」
何か閃いたユウは、怜奈に手を差し出した。
「?」
「デートって名目なんだから、折角だし手をつなぐ位は」
「……そう、ですね」
そう言って頬を赤らめ、おずおずとユウの手に自分の手を差し出し、きゅうっと握りしめる。
元々が雪のように白い肌なだけに、顔を赤らめると印象が強く――
「……マジでかわいいな」
不覚にもユウは、その手をつなぎつつそう呟いていた。
「? どうかなされました?」
「いや……今になって意識してきただけ」
「……」
『リア充爆発しろ!!』
そして周囲の男性は1人残らず、ユウに向け呪詛を吐いていた。