憤怒と慈愛の穏やかな休日(1)
「珍しいな? 怜奈が1人で歩くなんて」
「ワタクシだって、1人になりたいとき位あります」
「それなのに俺と一緒なんていいのかよ?」
「良いんです。お話するなら、同じ立ち位置の人の方が楽しいですから」
憤怒の契約者、朝霧裕樹。
慈愛の契約者、水鏡怜奈。
顔を合わせたのは偶然だが、どちらからともなく2人は一緒に行動をしていた。
「ま、良いけどね。美人と一緒に歩くのは悪くねえし」
「――そう言う事を惜しげなく言わないでください」
「ああっ、悪い悪い。ひばりをこうやってからかった時、顔を真っ赤にしてるのが可愛くてついつい癖になっちゃって」
「はぁっ……」
女性と歩いてる時に、違う女性の名前を出すなんてどうなんだろう?
朝霧裕樹は、女性の扱いがヘタクソなのだと怜奈は思った。
「――頂点と言えど、出来る事と出来ない事ってあるものなんですね」
「ん? 何か言った?」
「朝霧さんがデリカシーのない方だと言ったんです。大体女性と歩いてるのに、他の女性の名前を出すなんて失礼ですよ」
「え? そう言う物なの? 別に体重聞いてる訳でもないのに……」
「セクハラと失礼を混同しないでください! もうっ……朝霧さんは、女性の扱い方と言う物を勉強しなければならない様ですね」
「うぅっ……」
「と言う訳で、一緒に来てくださいね」
そうして、2人はデートにしゃれこんだ。
「デートなのかこれ?」