上級系譜の2つ名(勇気、憤怒編)
“血染めの黒装束”
憤怒の上級系譜“残虐”の契約者、久遠光一に着けられた二つ名。
光一は黒い服を好んで着ている事が多く、彼の戦闘服もまた黒一色。
その事と、連続殺人フォールダウン“死屍を喰らう棺”との交戦。
その際に自身も武器も血塗れにし、それで尚平然と冷静に立ち振る舞うその姿から、敵の返り血で黒く染め上げた黒装束――血染めの黒装束と称された。
「そういやさ、あたし達の中で光一だけだよな?」
「? 何が?」
「二つ名がある奴」
憤怒と勇気の上級系譜同士でのお茶会にて。
ふと綾香が言い出した話題。
「そう言えばそうだね。確か、“血染めの黒装束”だっけ?」
「あたしは普段は別の色にした方がいいって、いつも言ってるんだけどね」
「良いんだよ。俺黒が好きだし」
「スーツで黒主体にした所為で、取引先に怖がられたことあるのに?」
「――ひばり、何気に失敗談の暴露するな」
「え? ――そんなことあったの?」
「……だからスーツに関しては、黒は極力省いてるよ」
光一が苦虫をかみつぶしたような顔で、鷹久にそう返す。
「てか、スーツでまで黒主体にするなよ。葬式じゃあるまいし」
「うるさい」
「それはさておいて、二つ名かあ……僕達だったら、どうかな?」
「え? うーん……難しいな?」
「いや、そもそも二つ名って勝手につく物だろ。俺のだって勝手についた物だし」
「あっ、そっか。じゃあ光一なら、あたしにタカとひばりに、何て二つ名つける?」
そう振られた光一は、うーんと唸り始める。
「じゃあ……綾香だったら、“幻想舞踏”から取って、“幻惑の舞い手”……とかかな?」
「へえっ、まあ妥当かな?」
「じゃあ僕は?」
「――綾香とのコンビから“剛拳の舞踏家”とか」
「……まあ、舞踏に通じる物は確かにあるかもね」
そこで光一はひばりに目を向けて……
「ひばりだったら……“永遠の美少女”とか?」
「光一君、それ暗にちっちゃいって言ってるよね?」
「じゃあ……」
「ちっちゃいはつけないでね?」
「――難易度高過ぎだろ」
「何か言った?」
「――わかったと言ったんだ、じゃあ……」
光一が思案し――それから少し。
「あっ、そうだ! 能力から、“属性の錬金術師”はどうかな?」
「へえっ、良いんじゃないか?」
「支倉さんの能力と綿密に結びついてるし、良いと思うよ」
「うん、ちょっと気に入ったかな?」
「それは何より」