大罪美徳親善企画その1 “最強のサッカー王!“
場所は政府直轄区画、特設スポーツスタジアム。
「さあ政府主催、大罪美徳交友プロジェクト・スポーツ部門――親善サッカー第1試合は、いよいよPK戦に突入です! さて、実況を務めますは憤怒の上級系譜、久遠光一。そしてゲストとして……」
「政府首相、井上弥生です」
「では参りましょう。PKに挑むのは、やはりプレイヤー、ゴールキーパー共に、大罪美徳共に最強格となります」
・大罪チーム
朝霧裕樹、武田シバ、明治我夢、荒川公人、大神白夜
GK 明治我夢
・美徳チーム
一条宇宙、御影凪、天草昴、鳴神王牙、北郷正輝。
GK 北郷正輝
「首相、この布陣についてはどうお考えでしょうか?」
「――大罪側は、契約者で最も身体が丈夫な我夢君を置いてるのは、まず良い判断だと思います。美徳側も、北郷君なら当たり負けをする事はまずない……どちらも、そう簡単には抜けないでしょうね」
「さあ、勝負はまだ始まったばかり! さて、観客席では……」
「……アスカさん、スカートの丈が短すぎます」
「良いの良いの、怜奈ちゃんとボクなら、鼻血必須の応援だから」
「――応援が鼻血必須じゃ駄目ですよ」
「……美徳勢応援席では、水鏡怜奈さん、アスカ・ホークアイさんによるチアリーディングが行われている様ですね。何というか、男性陣の大半の鼻の下が伸びてるのが眼に見えます」
「怜奈ちゃんの美貌は、私でも羨ましいと思う事があるからね。それにアスカちゃんも、活発で明るいイメージはぴったりだと思うけど……あの恰好はちょっと」
「あれは十中八九アスカさんの用意した物と見て、間違いないでしょう。では、試合を……」
「? 久遠君、大罪側は?」
「…………」
「ほーら、詠ちゃん。しっかり応援しないと、別にいやらしい格好させてる訳じゃないんだから。ほら、フレー! フレー! た・い・ざ・い!」
「…………(だったら妾の横に立つな!! そのうざったい胸を揺らして踊るな!!)」
「……なんか試合会場がメチャクチャになりそうだから、やめましょう」
「……そうね。えっと……まずは大罪側、朝霧君ね」
「うおおおおおおおおおおっ!! ヴォルケーノ・シュート!!」
「おおっと、朝霧選手右足にマグマを展開した!」
「あら、爆発させて勢いを加速させたわね」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「対する北郷選手、そのシュートに拳をぶつけたあっ!!」
「流石に契約者最強の攻撃力――朝霧君のマグマにも引けを取ってないわ」
「あーっと、朝霧選手失敗です! ――そして、美徳勢一番手は一条宇宙さん!」
「……」
「軽やかなダッシュです。そして、滑らかな動きで風を利用しての弾丸の様なシュート!」
「流石、風を操る能力者らしいわ」
「――ふっ」
「対する我夢選手、ボールを待ち受ける! ――が、ボールが曲がって、我夢選手飛びついたっ!! ゴオォォォォオオオル!!」
「――惜しかったわね」
「さあ、いきなり美徳一歩リード! しかしまだまだ勝負の行方はわからない! 果たして大罪チーム、最強の鉄壁をやぶるのは誰だ!!?」
「オレだあっ!!」
「おっと、そう宣言したのは強欲の武田シバ選手です!」
「シバ君負けず嫌いだから、いきり立つのも無理もないわね」
「では、まずは武田選手! おっと、シュートを打つ足に砂を纏わせ、砂漠の薔薇でコーティングしたぞ!?」
「シバ君の砂は、ああ見えて重いからね」
「さあ、シュートが撃たれた!! ――が、やはり北郷正輝の壁は、それ以上に固かったあっ!! さあ次は美徳側は、御影凪選手! 思念獣麒麟と融合し、駆けだし――シュート!!」
「今度はとれたわね」
「ダメです失敗! さあ、まだまだ勝負の行方は分からない――さあ次は、我夢選手の番だぞっ!!?」
「――小生の失態は、この足で取り返しましょう」
「さあ、3mに1tはあるその巨体に似合わぬスピードで、駆けだし――シュート!」
「――ダメだったわね」
「ああっと、残念! さあ美徳は、天草昴選手! 軽く駆け、足に光を纏わせ――光速キックによるシュートだ!!」
「昴君は契約者最速――速さは、重さにもなるから」
「ああっとダメだ、我夢選手に止められたあっ!! しかしすごい攻防戦、これは決まるか決まらないかが完全にわからない!」
「――普通止められない物ばかりだからね」
「さあて4番手! 契約者最強の怪力、荒川公人選手! のっそりとした動きで、いざシュート!! 対する北郷選手、やはりパンチで弾きかえ――」
ズンッ!
「いや、これは斥力場だ! ボールに斥力場と重力場を纏わせ、撃ちだしていた!」
「となると、パンチをはじく斥力、体にのしかかる重力と、二重攻撃ね」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「ああっと、それでもやはりダメだ! 北郷選手、気合で弾き飛ばしたあっ!!」
「流石、秩序の要はダテではないわね」
「さあ、ここでとれば美徳の勝利は決まったも同然! さあ、鳴神王牙選手、決められるか!? さあ獣の、それも王者の風格を持ったそれの咆哮を思わせる声をあげ、爆あはつ力を生かしてのシュート……ああっ、ダメだ。通らない!」
「――我夢君も必死だわ」
「さあ、これでラスト! 最後は大神選手!」
「……ふっ」
「胸糞悪い不敵な笑みを浮かべ、駆けだし――シュート!」
「久遠君、私情は控えなさい」
「さ、北郷選手がパンチで――」
ぐにゃっ!
「いや、違う! シュートを繰り出す足で空間を引き裂き、その引き裂かれた空間の影響で、ボールの軌道とと北郷選手の位置が変わった! ――ゴオオオオオォォォォォル!!」
「流石に、空間の歪曲相手では、北郷君も万全――とはいかなかった様ね」
「さあこれで1対1、ラストは北郷選手――さあここが一番の見せ場でしょう!!」。
「最強の矛と盾――契約者社会の矛盾は、どちらに軍配が上がるのか?」
「――我が正義の鉄槌に砕けぬ物なし!」
「ぬかしなさいな。小生の鉄壁、そう簡単に砕けると思わぬ事です」
「おおっと、いきなり白熱だあっ! さあ、北郷選手駆けだして――シュート! そしてその渾身の一撃は、我夢選手の真正面!」
「――これは、サドンデスに……?」
ズンッ!
「なっ、何だ!? 我夢選手の足が、陥没したぞ!?」
「まだ、終わってない様ね」
「ぬっ、ぐっ……ううぅぅぅうおおおおおおっ!!」
「対する我夢選手、粘る粘る! どうだ、通るか!? 通らないか!? ――ああっ、ダメだ。地面が耐えきれず我夢選手を押し出し――ゴオオオォォオオル! 決まったあ、親善サッカー第1試合は、美徳の勝利です!!」
「まずは、美徳の勝利ね――でも、まだこれで決まりと言う訳ではないから、焦らない様にね」
「では、ここで皆さんへのお知らせです。この親善スポーツ、これがみたいと言うのがあったら、是非リクエストを! 以上、政府特設スタジアムからお送りしました」




