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大罪と美徳 短編集  作者: 秋雨
シリアス系
25/31

“死の正義”と“幻想舞踏”

椎名九十九と、夏目綾香の対決--その直前のやり取りです。

なんか正義の面々とGAUさんのキャラって、正反対的な意味で似通ってるから、絡ませやすいです。

「――どけ!」

「どくか!」


政府議会における、仲裁派閥思想の崩壊。

それに伴っての、仲裁派閥に対する椎名九十九の襲撃


それを止めるべく、綾香は九十九と対峙していた。


「――お前と対峙するのも、これでもう何度目だ? ……とことんまで自分が何をしているのか、わかっていないようだな!?」

「それはこっちのセリフだ! ――救いを求める人達を無視なんて、出来る訳がないだろ!!」

「見捨てろ! それが平和となる」

「……本気で言ってるのかよ、それ!?」

「人を救う事、守る事、信じる事……その全てがやってはならん事であり、平和への冒涜だ! 平和とは何においても優先して維持せねばならん――何を犠牲にしてでもな」


人との繋がり、人の情とその尊さ。

それらを眼の前の男が足蹴にしてきた事も、実際にそれを躊躇もなく実行し、幾多もの命を消し飛ばしてきた狂気的な行為も、綾香はもう数えきれないほどに見て来た。


“死の正義”

……椎名九十九をそう呼ぶ声を聞いて、綾香は頷けるくらいに。


「――ざけんなよ。平和の為なら、何やってもいいのかよ!!?」

「人など放っておいても勝手に生まれる――その程度の存在だと認識出来んから、いつまで経っても平和が来ないのだ!!」

「そんな平和があるかよ! ――泣いたり笑ったり、怒ったり喜んだりするから人間なんじゃねえか!! 人間やめなきゃ平和にならないって、! 

「それが悪いと言っている!! 他人など見捨てろ、正しさを順守する事だけを考えていればいい――それが平和だ」


人その物の否定――それが、椎名九十九の出した答え。


「――人その物を否定するのかよ……救いようがない平和だなおい」

「救いなんてあるから、余計な考えが生まれる――その余計な考えこそが、平和にとっては何よりも邪魔なもの。我ら正義の真なる使命とは、その余計な物を消す事だ」

「――それがお前の答えかよ、九十九!! ……いや、中原大輔!!」

「人の答えだ」


九十九が袖をまくり、二の腕を露出させ――

そこから、人肉が年度の様にぐにゃぐにゃと動き、やがてそれが人の上半身の様な形に整っていく。


「――!?」

『うっ……つっ、九十九! 俺を……!?』』

「……さあ、敵は目の前だ……やるぞ、大輔」

「……まさか、二重人格!? ――そうか。それが中原大輔の変貌の正体か!?」

「正確には、人が大輔を変貌させたのではなく、人が自分を大輔の中に創りだした上で、主人格に据え置いた――それが真実だ」

『…………』

「――そんなこと、どうだっていい。けどな、それをあたしに知らせたのは間違いだぜ」


ステップを踏み、ゆらりと綾香の輪郭がぶれ――分裂する様に、綾香が九十九を取り囲む。


「――待ってろよ、中原大輔……今助けてやる」

「――助ける、か……悪とみなす。その罪、死をもって償え」

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