支倉ひばり強化計画
大神白夜と朝霧裕樹の戦いの後。
傷と疲れを癒したひばりは1人、武道場で備え付けの鏡と対峙していた。
「――あたしには、決め手と言える様な武器がない」
大神白夜がやって見せた、最強格たちのが持つ才能とも言える技能の再現。
一条宇宙の動きとスピード、北郷正輝の拳打、水鏡怜奈の受け流し、明治我夢の防御。
荒川公人の“超重隕石”、鳴神王牙の“金剛爆斧”、朝霧裕樹の剣戟を組みあわせた、独自の乾坤一擲とも言える一撃。
大神白夜はそれらを、オリジナルに劣るとはいえ再現して見せた。
「だけど――見つけた」
幸い自分は白夜と同じ万能型で、突出した力がないが苦手と言える物はない。
だったら、やり方次第では自分にも同じとまではいかなくても、相応の事は出来る筈。
ひばりは愛用の双剣を抜いて、構えをとる。
ただし、いつも自身がやっている構えではなく、朝霧裕樹が二刀流をやる際に取る構えをとって、朝霧裕樹の剣戟と動きをイメージし――。
「……鈍い」
剣を振るうが、鏡を通してみた自分の動きは、イメージとはかけ離れている。
ひばりは深呼吸をして、朝霧裕樹の動きをイメージし、自らと重ね合わせる様にして、もう一度――
「……鈍い」
振るうも、やはりイメージとはかけ離れている。
ひばりは剣を納めて、鏡の自分と向き合い――。
「――体格の差、能力の差……同じ最強格でも、差は出来る。大神さんは、それを克服して、オリジナルを連想させる程の完成度を見せてた……でも、どうやって?」
そこでふと、ひばりは思い出す。
大神白夜は、この力を“最強の眼”によるものだと言っていた
「――最強の眼……そうだ!」
ひばりはそこで目を瞑って、裕樹と白夜の戦いを思い出す。
――正確には。
「思い出すんだ……あの時のユウさんの動き、感覚、思考」
あの時、直接対峙していた裕樹とのブレイカーを介しての同調で感じ取っていた、彼の感覚。
それに身体を委ねる様に、ひばりはその感覚に従い――踏み込んで、剣戟を振るう。
「……違う」
手ごたえが感じられなかった。
と言うより、感覚が馴染まなかった。
「もっとよく、思い出さなきゃ。あたしには、最強の眼なんてない……友達を信じて、通じ合って、理解して、それから出来るって信じるしかない」




