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大罪と美徳 短編集  作者: 秋雨
シリアス系
23/31

IFルート 死の正義、起つ

こちらは、コラボで書いてる流れのIFルートです。

細かくは考えてませんが、コラボで使うかどうかは未定。

「……そんな!」


一条宇宙の元に舞いこんできた報告。

それは、彼の眼にはあまりにも信じられない内容だった。


「――これは、確かなのか!?」

「はい……北郷様は、大地の賛美者の策略にはまり、正義のブレイカーを奪われて、今は行方がしれません」

「そんな……!」


突如、調査員が駆けこんでの報告――それは、宇宙にとっては信じられなかった上に、これからの未来に暗雲を齎す物だった。


仲裁派閥を利用されての策略。

そして、それにより北郷正輝が行方不明となり――世は正義の契約者を失った事。


「それで正義のナワバリには、これまで正義に反感を持っていた負の契約者や、正義の活動による犠牲者たちが群れを成して、攻撃を……」

「それを先に言え! 綾香、すぐに準備しろ。その暴動を鎮圧に行く!」

「了解!」

「鷹久はナワバリを頼む。それと、場合によっては正義のナワバリの住民を保護するから、受け入れ準備も進めてくれ」

「わかりました!」

「よし! 行くぞ綾香!」

「了解!」


バンっ!


「たっ、大変です!!」


いざ出陣――と言う所で、突如血相を変えて駆けこんだ声で、宇宙達は行動を止めた。


「どうした!?」

「正義の上級系譜“一徹”の契約者、椎名九十九が正義のブレイカーを手に、二代目正義の名乗りをあげました!」

「なんだと!?」


その報告に真っ先に声を上げたのは、勇気で最も衝突していた夏目綾香だった。


「間違いないのか!?」

「はい。椎名九十九が、正義のブレイカーの力を使い、暴徒達を皆殺しにした事実が確認されています!」

「――ちょっと待て、一体どこで!? あいつは先走りこそしても、裏切るなんて事……」

「待て綾香。それだけなら焦る必要はない筈――何かあったのか?」

「はい! 椎名九十九は新生正義軍を率いて、政府の直轄地への侵攻を開始したと!」

「なっ……!」


契約者社会においては、正と負の均衡――そして、その間を政府が取り持つ。

この3つがバランスを保ってこそ、契約者社会は成り立つ。


その政府に対して、最強格が攻撃を仕掛ける事――それは、契約者社会の均衡どころか、根幹その物を壊す大事件になりかねない。


「――綾香、行先を変えるぞ」

「了解――飛ばすぜ」

「ああっ、頼む!」



――所変わり、時をさかのぼる事正義のナワバリにて。


「――何故止めなかったのだクラウス?」

「――正輝様が率先して動かれていました。故に私に……」

「愚かな――所詮はその程度か、北郷正輝」


二代目正義の契約者となった椎名九十九が、クラウス・マクガイアを問い詰めていた。


「――あの方は、いつかは人は変われると信じておられました」

「……?」

「そして、私も同意見です。人道を重んじておられる井上首相も居ますし、可能性を信じて今も尚戦っている一条さんも……」


ドンっ!


「うあっ!」

「人道? 可能性? ――そして、成長? 笑わせるな。人が人道を語るのは、他人を騙し奪い取る為であり、成長を語るのは他人を見下し、踏み躙り、否定する力を得る為だ。欲望を持った者が“自分さえ幸福でさえあれば、他などどうなっても構わない”を前提にしている等、当たり前の事だろうが!!」


クラウスの肩を撃ち抜き、九十九はクラウスの首を掴みあげる。


「成長だの人道だの、そんな物を語っている時点でどうしようもない外道であるとわからんか!? それでよく正義の上級系譜が名乗れたな!!」

「がっ……かっ……!」

「良いかクラウス? 人の頭にあるのは、自分と自分の財布の事だけだ。だから、何千何万と赤の他人が無事であっても、悪党1匹取り逃がしただけでそれは無意味になる――故に我ら正義がすべきは、何千何万と犠牲を出そうとも悪の可能性を根絶やしにする事だ」


掴み挙げたクラウスの投げ捨て、地面を転がり壁にぶつける。


最強格となった九十九相手に、上級系譜であるクラウスに勝ち目などない。

殺そうと思えば、簡単に殺せる――今の九十九とクラウスには、それだけの差が既に存在していた。


「平和とは絶対――可能性を誇示する等、平和を壊す悪魔の所業」

「はぁっ……はぁっ……」

「この世界に神も仏も、救いもない――あるのは我等と言う正義と、欲望と言う害悪だけ」


その手で、正義のブレイカーを握り、それを高々と掲げる。

正義のブレイカーは確かに起動しており、その主が椎名九十九である事――それを示していた。


「世界を救うのだ――我ら正義の手で」

「……九十九、さん」

「戻ってくるまでに、改心しておくんだな――我等は仲裁派閥等と言う邪悪な思想を根絶やしにした後、悪である負の契約者どもだけではなく、友情や慈愛と言った美徳を騙る不届き者も消さねばならんのだ……お前も正義の上級系譜ならば、その本分を忘れるなよ」


そう言って九十九はその場を後にした。


ツッ……!


『……』

「……いい加減諦めろ。正義を全うするのは自分だ――お前ではないのだ、大輔」

『……なんで、だよ……? なん、で……』

「……仕方がない事だろう? 悪を殺さねば、誰も納得など出来んのだ」

『……うっ……ぐっ……』

「……平和の証とは、悪の屍以外にあり得ない――それを悲しむ事自体が、狂人の所業だ。お前は黙って眠っていろ、自分の邪魔をするな」


右目から流れ落ちた涙――未だに自身の中に残っている、中原大輔の人格が流した物。

それをかきむしる様に拭い、九十九は正義の為の歩を進める。


死の正義を掲げる狂戦士として。



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