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大罪と美徳 短編集  作者: 秋雨
シリアス系
19/31

IFの世界に迷い込んだら(前篇

今回は、夏目綾香と中原大輔(現:椎名九十九)のIF

あったかもしれないストーリーです


どうせなら、本編に絡めたいと思い--どうせなので、太助を絡めての話にしました。

もしかしたら、BADENDルートの分岐--続きにも出来そうなので。


IF、と言う物をご存じだろうか?

もしかしたら、あったかもしれない――仮定の話。


「また貴様か夏目綾香! 何度も何度もやかましい!!」

「やかましく言われる様な事するからだろ!! また人質ごとふっ飛ばしやがって。今のはあたしが居れば一瞬あれば十分無血で済んだだろ!! なんで待てねえんだよ!!?」

「悪のいる場でボサッとしている間抜け等知るか! 正義は悪を滅ぼす者、そんなどうでもいいゴミの安否より、一瞬でも早く悪を殺す事こそ優先する等当然だ!!」

「それこそふざけんな! 人の可能性を蔑ろにして、一体何が守れんだ!? そうやって皆殺しにしたその先に何もないって、なんでわからねえんだよ!!?」

「悪を皆殺しにしたその先には、正しき世界が待っている!! 成長だの可能性だの、そんな既に害悪にすぎん欲望をすべて消し去り、正しさのみで機能する世界こそが人の求める楽園! 人は完成された存在、故に求めることなど不要だ!!」


「――久しぶりに見るけど、やっぱりやるのか」


正義と勇気の共同任務。

その際、100%と言っていいほど怒る、夏目綾香と椎名九十九のケンカ一歩手前の口論。


新型兵器の実装テストの記録兼軍医として、同伴していた東城太助はため息をついた。

しかし、無理もないなとも思っている


九十九と綾香は、致命的に目指す物も考えも正反対――相容れない。

太助としては、綾香の考えなしな所こそ多いが、まっすぐな姿勢と裏表のないその性格からそれなりに敬意を持ててはいた為、嫌悪感自体はもってない。

寧ろ、裏表ないだけに、それなりに信頼は出来るかもしれない――とまで思っていた。


それだけに、太助はこう思う。


――あの子は、わかってるんだろうか?

自分の願いが、根元から崩された者の苦しみを。


大輔が行方をくらまして、九十九となって戻ってくるまで――その間に、何があったかを太助は知らない。

そして、椎名九十九――それは多重人格による物なのか、大輔自身の人格変化なのか、大輔の自我の崩壊による暴走なのかも、太助には判別が出来ない。


--考えても仕方のない事。

そして、考えた所で誰が聞く訳でもない事でもある以上、太助は頭をかきながら2人の仲裁に。


「はいはい、そこまで! 九十九、正輝様からの言伝忘れた?」

「止めるな太助、こんな正しさを侮辱する様な……」

「僕達が争ったって、喜ぶのは悪だろ? 悪を喜ばせたいの?」

「――ちっ! ……撤収だ!」


九十九が舌打ちをし、部下達に指示を出し撤収準備に。

そして……


「――夏目さん。君もだよ、」

「あたしは認めないからな! 宇宙兄の頼みだから我慢はしてるけど、あんた達のやってる事は……」

「僕達のやり方が異常だ――そう思いたければ、そう思えばいいさ。だけど、それを非難する君は一体何なんだ? そして、このやり方でなければ秩序を維持できないこの世界は、本当に人の世と言えるのか?」

「――そりゃ、わかってるさ。あたしにあんた達を非難する資格がある訳じゃないし、あんた達に代わって世の秩序の要になる力なんてない……けど、願いが潰えたら全部おしまいだろ」

「そう、おしまいこそが人の願いさ。願いなんて迷惑なだけだから、叩き潰す物――そう、人はもう完成されてるんだよ。欲望さえなければ、全て上手くいくと断言出来る程にね」


そう言い放って、太助は綾香に背を向け撤収準備に向かう。


「バカ言うなよ、人は完成されてなんてない! ――不完全だから、欲望も理性も必要なんだろ!!」


それに対して、答えないままに。



…………



「――もう会うとは、思ってなかったけどなあ」


場所は、決闘の島。

先ほどまでの会合相手――来島アキ達を見送って、少ししてのテント。


「……ふぅっ」


今思い返した綾香との言い合いから程なくして、一条宇宙と北郷正輝は決闘を行い――結果、北郷正輝が勝利し、名実ともに正義が世界の秩序の要となり、秩序の実権を手にした。

それからもう会う事はない――そう思っていた。


「……疲れてるのかな? 寝よう」


――今に不満がないと言えばうそになる

けれどもし、願うなら……願っても良いと言うのなら……



「……すけ……太助!」

「ん……? あれ?」


ふと声を掛けられて、太助は眼を覚ます。

見た所、正義の野営キャンプらしいが……と考えて、眼の前の男に目を向ける。


「何だ、疲れてるのか? お前医者だろ、自分の体調管理位はちゃんとしろって」

「――? どうしたのさ、九十九がそんな砕けた口調で心配だなんて、珍しい」

「九十九? おい、幾ら寝ぼけてるからって名前間違えるなよ。俺大輔だろ?」

「え? だって……え?」

「おーい、大輔!」


そこへやってきた声に、太助は混乱した。

夏目綾香が、眼の前の男――椎名九十九ではない、正真正銘の中原大輔に対して、夏目綾香がにこやかにあいさつしている光景に。


「久しぶり、元気だったか?」

「ああ、俺達皆変わりなしだ。そっちはどうだ、綾香。鷹久は元気?」

「元気元気――あれ、どうしたんだ? 太助さん」

「……太助、さん?」

「悪い、太助どうも疲れてるらしくてな」

「そっか。まあ太助さんも、サイボーグ義肢の権威として忙しいのに、わざわざ来てくれたんだもんな」

「……どういう事?」


サイボーグ義肢の権威?

権威も何も、サイボーグ義肢は悪魔の所業と扱われ、治療とは認められてない。


しかし、2人が嘘や芝居など出来る人間ではない。


ギリギリッ……!


「――痛い……どういう事だよ一体?」

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