BADENDルート 終焉の彼方で
今回の短編は、本編のBADENDルート
魔王・東城太助の手により、人が滅ぼされたその先での太助の独白となります。
書いてて少々重かったので、先に警告しておきます
人はどこで間違えたのか?
――そんな事、一体誰が定義できるのか?
定義できたとしても、一体何の意味があるのか?
間違いがあれば全てを罪と定義出来てしまう程、人は完成された存在――そうだと言うのなら、全てが理解はできる。
絶対があるなら、人に考える余地など必要ない。
何かを欲する事も、何かを想う事も、何かを律する事も、人に纏わるあらゆる事柄が全て無意味になってしまうのだから。
――絶対者の目線で物事を見る。
ここから、全てが歪んだ――それがわからなかった事が、今の結果。
この僕、東城太助に人が植え付けた絶望――それが人を滅ぼしたという。
「――んっ……」
地べたにシートを敷き、上にぼろ布を掛けただけの質素な寝床で、眼を覚ました。
日は高く、既に朝方の雰囲気など過ぎ去った物らしいが――特に気にはならなかった。
既に時間の概念等、必要ないから。
「……あー――」
青い空に、流れる白い雲――一見さわやかな空模様に見えるだろうけど、僕にはもう非情な程の広さしか見えなかった。
この世界に色彩など存在しない。
それは僕の錯覚かもしれないし、本当にそうかもしれないけど、僕にとっては既にこの世界に色彩等どこにもない――色あせたセピア色にしか見えなかった。
それも北郷正輝が死んだ時からなのか、サイボーグ義肢を悪用された悲しみ故なのか、暴徒に家族を殺された時なのかも、既に僕にはわからない。
そして――この世界にはもう、人と言う種は存在しない。
魔王となった僕が、根絶してしまったが故に
全てを奪われ、人としての物すらも壊され――明日さえも失った。
そしてもう、自分から奪う敵も存在しなければ、大罪の契約者達も、美徳の契約者達も、井上首相も――ボクガコロシ、ケシサッタ。
残った物は、北郷正輝への懺悔と、永遠の孤独――そして、大罪達も美徳達も葬り去った、既に人ならざるこの身体だけ――僕は死さえも失った。
――こんな生き方が、本当に必要だと思えたのだろうか?
何かに執着する事も、何ともつながる事も、何かが変わる事もない。
脅かす者も、苦しめる者も、傷つける者も存在しない。
ただ、自分のしたい事だけをやって、自分の欲しい物だけを手に入れ、自分の望む物さえ存在していればいい。
――それを願っておきながら、それを否定したその先。
矛盾のその先には、何もない――ただ、すべてを歪にしていただけだ。
――人は、他人の意思を邪魔だと思ったその瞬間から、終わっていた
全てを失い、全てを壊され、全てに絶望した僕が手に入れた、たった1つの答え。
そして、この答えを出せた事――その事に対しての、僕にとっての最後の幸運。
「――さて、何しようかな?」
退屈な自由、根絶やしとなった繋がり、意味のなくなった意思――人が求めてやまない、このがらんどうな楽園で、僕はただうつろに生きて行く。




