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大罪と美徳 短編集  作者: 秋雨
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吉田鷹久、黛蓮華と羽目を外すのこと

「全く、つぐみは……あれだけ私から離れるなと言っておいたのに」

「まあまあ、落ちついてよ蓮華さん。この人だかりじゃ、無理もないよ」

「……いえ、吉田さんにもお手数を」

「だから良いってそんなの」


はぐれたつぐみを探し、1人歩いていた所で出くわした、吉田鷹久。

事情を話すと手伝うと言って、一緒に歩いている。


中性的な顔立ちに、男性物のカジュアルな服を纏っている彼女は、それだけで周囲の女性の眼をひいていた。


「――蓮華さんも、こういうとき位は浴衣でも着てくれば」

「私もそうしたいのは山々なのですが……はぁっ」

「あれ? ――もしかして、何か気に障る事でも」

「そう言う訳ではないのですが……私は子供のころはやんちゃと言うか、お転婆でして」

「え? そうなんですか? ――意外ですね」


鷹久から見て、蓮華は落ちついた大人な男装の麗人で、確かに頭は固い部分はある事は否めないが、お転婆と言う言葉からはかけ離れた性格。


「ええ。そんな時に怜奈様と出会って――あの方は、幼いころからとても綺麗で、礼儀正しく落ちついてましたので、あんな風になりたいと思って」

「? だったらふるまいはわかりますけど、なんで?」

「それが……雰囲気と性格は変えられた物の、女性物より男性物を着ている方が周囲からの受けが良くて、女性物を着る事その物に抵抗感が出来てしまったので」

「そうなんですか……でも、似合うと思うんですけど?」

「怜奈様につぐみもそう言ってくれますけど……あの2人と並んで立つと、どうにも違和感が拭えなくて」


誰もが一度は恋をする――とまで評される美貌の持ち主、水鏡怜奈。

ひばりと同じ位の身長で、慈愛のマスコット的な可愛さを持つ雨宮つぐみ。


この2名と並んで立つ等、そこらの女性では土台無理な話である。


「違和感なんてないと思いますよ。大体蓮華さんだって中性的な美人だから、男装の麗人なんて呼ばれてるんでしょう?」

「――!?」

「だから、あの2人に劣るなんてそんな事――あれ、どうかしました?」

「――いえ、申し訳ありません。私……男性から、美人だなんて言われた事がなくて」

「え? ――そう、なんですか?」

「吉田さん、確かに上級系譜格以上は重婚が許可されていて、私自身もその事については文句がある訳ではありませんが……」

「いえ、違います! 違いますからね!!」


そんな彼らが注目を集めていた事は、2人が知る由となった途端、逃げ出す様にその場を後にしたのはお約束。

そして、少し離れた場にあるベンチにて、買った飲み物を手に1息。


「――もっ、申し訳ありません。私の、早とちりで……」

「いえ、僕も……誤解させる様な事を言ってしまって」

「……こんなにとりみだしたのは、初めてかもしれません」

「僕もです……ふっ、はははっ」

「ぷっ! ……ふふふっ」


2人はその場で、大笑いした。


「――はーっ……はーっ……なんだか、おかしい」

「ええ――まさか、蓮華さんとこんな時間過ごすだなんて思わなかった」

「私もです……考えてみたら、ハメを外すだなんて子供の時以来ですよ」

「こんな時間、やっぱり人だから過ごせる時間――なんだよね」

「吉田さん?」

「鷹久でいいですよ――改めて実感したんですよ。僕達が守りたいのはこういう時間で、創りたいのはこんな時間を誰もが過ごせる、人が人である事が出来るような、そんな世界なんだって。だから……」


『間違う事こそが悪意の表明だろう!!』


椎名九十九の、綾香を激怒させ危うく戦争にまで発展させかけたその時の言葉を思い出し……


「――僕達は人なんだって事を、忘れちゃいけないんだ」


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