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大罪と美徳 短編集  作者: 秋雨
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黒装束と紅い影

時分は深夜。

とある人気のない地点に、ひっそりと建てられた教会。


既に人の手が入れられていないらしいそこは、塗装も剥がれ、内装も風化し、屋根も崩れ落ち、備え付けの机や椅子、祭壇の上の十字架もまた、ボロボロになり朽ち果てている。


――そこへ。


ギィッ……!


「――何度来ても、こういう場所は性に合わないな」


花束を手に、1人の来訪者がやってきた。


「――“血染めの黒装束”には、敷居高い場所言うんは納得出来るえ」


雨風に晒され、ボロボロになった十字架の後ろ。


「だったらこんな場所指定するなよ」

「仕方ないやろ。わっちは忍者軍団長やで? あんまり人目につくのは良くない言うたの、光一くんやで」

「そりゃそうだけどさ――」


光一は十字架に向けて歩を進め――後ろを振り向く。


「――何する気だったんだ?」


その視線の先には、憤怒忍者軍団長、神崎深紅が両手を広げ、今にも抱きつかんと言わんばかりの体勢でそこに居た。


「なんや、折角月はんのマネしよ思うたのに」

「――心臓に悪いからやめて」

「わっちのは物足りん?」

「――答えにくいからやめて。それより、こっちだこっち」


話を強引に終わらせて、光一は手を深紅に差し出す。

深紅はそれを見て、自身の手をその手に添え――。


「ん、了解や」


接触感応サイコメトリー”で任務内容を確認し、頷いた。


本来は感応系能力の場合、自身より上位の契約者相手には、決して通用はしない。

しかし深紅は、事前の光一の任務のまつわる情報のみを読み取る感応解読方法を知っている為に、普通に“接触感応サイコメトリー”で一部の記憶を読み取れる。


勿論、それ以外に関する情報は読みとれないし、無理に読もうとすれば当然バレるし出来る可能性も低い。


「じゃあ頼むぞ」

「了解や」


そう言うと、ゆったりとした動きで光一に抱きついて、その身体にそう様に光一の後ろへと回り――そっと、抱きしめる手を光一の頬に添える


「――血染めの黒装束の影は、黒やない」

「ああっ、俺の影は黒じゃない――深紅色の、紅い影だ。だから死ぬなよ、影に代わりなんて利かないんだから」

「お互い様や」


深紅はそっと身体を離し、光一の前に出てそっと手を取る。


「主なくして、影はあらへん」


その取った手の甲に、そっと口づけをし――少女の姿は、ふっと消え去った。


「――さて、と……」


手にした花束を、祭壇に添え――似合わない自覚こそあったが、十字を切ってその場を後にした。


「……///」


手の甲に残った感触で、自覚のないままに顔を真っ赤にしたまま。


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