雨宮つぐみ、一条宇宙との空のデート
「あっ、見てよ雨宮」
「あの……つぐみでいいですよ、一条さん?」
「俺も宇宙でいいよ。じゃあ見てよつぐみ」
場は、政府主催の花火大会
そこで怜奈達とはぐれたつぐみは、こちらも1人で歩いていた宇宙と出くわし、一緒についていくこととなった。
人が多いからという理由で、手をつなぎながら。
「…………」
「? 痛かった? それとも、やっぱり厚かましかったかな?」
「いえ……ただ、慣れないだけです」
つぐみは内心ドキドキしていた。
宇宙は男性の契約者としては、美形に分類される顔立ち。
正の契約者では一条宇宙、負の契約者では大神白夜と、女性の話題として上がる程。
「……それに、ですね」
「ん?」
「あたしみたいな、ちんちくりんと一緒で……宇宙さんも、つまらないのではないかと。精々兄妹位にはみられるかもしれないですけど」
「ははっ、ちんちくりんだなんて、とんでもない。確かに妹はいるけど、俺だってそんなに余裕ないよ」
「え?」
「実は俺も、同じ最強格以外じゃ、綾香や妹以外の女性と面識あまりないから」
「そう、なんですか?」
「正の契約者きっての美男子、何て言われてるけど、実際はそんなに女性経験なんてないからね。そう言う意味じゃ、同じだよ」
内心ホッとしつつ、つぐみはつないでる手に目を向け、ちょっと気持ちが和らいだ。
「それに、妹――宇佐美も綾香もおてんばだからね。まあ女子力で言えば、宇佐美は安心はできるけど」
「そうなんですか。あってみたいですね」
「機会があればね――おっ、始まるみたいだ」
宇宙が空を見上げ――バーンと轟音が鳴り響き、空に花火が。
「たーまやー!」
「かーぎやー!」
周囲は花火に見入り、中にはちょっと古臭い事を言ってるのも何人かおり――
「わあっ、綺麗ですね」
つぐみも人ごみの中、窮屈そうにしつつも花火をしっかりと見ていた。
そんなつぐみを見て――
「ちょっと特等席で見てみないか?」
「え?」
「――わわっ!」
「ああっ、あんまり暴れないでね」
場所は、花火大会上空。
宇宙は風の能力を持ち、それを用い空を飛ぶ事が出来――契約者社会の空は勇気の契約者、一条宇宙の物と言う言葉がある。
「――シャレっぽいのが気に入らないけどな」
勇気の契約者、一条宇宙――宇宙と書いて、そらと読む。
バーーーン!!
「わわっ! びっ、ビックリした……」
「まあ、近いからね――でも、綺麗だろ?」
「はい――とっても綺麗です」
花火もそうだが、宇宙の背におんぶと言う形で空を飛んでいる事。
勇気の契約者だけに許された景色を見る事に、つぐみは感激している。
「すごいなあ……宇宙さんだけに許された景色だなんて」
「ただ単に、撃ち落とされる事がまずないから――って云う理由だけどね」
実際、空を飛ぶ事自体は難しくない――が、撃ち落とす事もまた、出来ない事ではない。
高く飛べば飛ぶほど、やはり危険も増すのだから。
「――綺麗だろ?」
「はい……とても、綺麗です」
「俺はさ――空を飛ぶ度に、おもう事があるんだよ。世界の広さ――そして、この場所からじゃちっぽけに見えるけど、たくさんの人が生きてるんだって」
「……」
「俺はさ、守りたいんだよ――確かに、人には悪い奴だってたくさんいる――だけど、多少歪だろうと、何かの為に懸命に生きてる人が居るから、この景色は綺麗なんだって、そう思ってるから」
そう洩らす宇宙に、つぐみは……
「……くすっ」
「あーっ……やっぱりクサいか」
「いいえ――それにそうだとしても、一条さんなら似合いますよ。やっぱり、頂点に立てる人って違うんだなって」
「……そう――あっ!」
そこでふと、宇宙が花火大会の場に目を向け――
勇気の上級系譜、吉田鷹久が、慈愛の上級系譜、黛蓮華と一緒に歩いているのを見つけた
「あれ、蓮華さん?」
「――ははっ、鷹久も隅に置けないな。降りる?」
「はい――あの、ありがとうございました。良かったら、また乗せて下さいね」
「ああっ」
次回は吉田鷹久君と、黛蓮華の話を書きます!
綾香と鷹久の絡みとは別物の雰囲気を描けるよう、頑張りましょう!