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沫
病院であびるシャワーは、イタリア旅行のホテルと似ている。
満たされたようで、そうでもない、かといえば不満はない。
けれどイタリアのバスルームほどの不便はない。
それが病院のシャワーというものだった。
つまりわたしの目の前にあるもののこと。
つまりあたたかい飛沫をわたしの素肌に、皮膚に、細胞に叩きつけて、肌から剥落させてゆく垢、体毛、泡立つ洗剤、きのうのこと、おとといの高熱、くるしいこと、かなしいこと、それからたのしいことも、存在も、
お、ち、て、ゆ、く
病室に横たわるわたし。四肢をなげだし、
お、ち、て、ゆ、く
ランドマークのそば、都会のビル
お、ち、て、ゆ、く
見送るさまは、北京を廻る観光バス、建物がたちあらわれては消え、骨格を野ざらしのままたちあらわれては、まるで郊外ですて置かれた街頭
公安に先導されて道をかきわけるに乗ったときだった。
みやこはどこもくすんだ色をしている。
2011年 06月09日 12時00分