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25話  「ある暑い夏の一日」(後編)

 みんなでレストランに入ると、四人がけのテーブル席がちょうど二つ隣合わせで空いていた。慶次は席を相談しようとしたが、真奈美が素早く右手で慶次の腕をからめ取り、左手で由香里の手をつかんで着席してしまった。

 モニカやドミニクは、あまりの早業にあっけに取られていたが、由香里と怜香は話し込みながらも、さっと慶次のいるテーブル席に腰掛けた。


 なんだか余り物のようになった、モニカ、ドミニク、クリスは、準と一緒に席に着いた。準を見ると、美人留学生三人を前にして壊れたロボットのようにぎこちない。


「まあ、準とゆっくり話す機会がなかったら、ちょうどいいんじゃない?」

「僕もそう思うよ」

「え、あ、う、ん」

「あんた、なに緊張してるのよ?」


「いやぁ、忘れがちだけど、僕たち、みんな外国人だからねぇ」

「それは関係ないで!」


 準は、ドミニクの言葉に、いきなり強い言葉で反論した。驚いたドミニクは、準に理由を尋ねる。

「僕はそれで緊張してるのかと、思ってたんだけど?」

「いや、君ら、みんな美人さんやから」


 準は、余裕がなくなっていたので、素直に思ったことを口に出した。

 しかし、自分がさらりと言ってしまった甘ったるい言葉に、恥ずかしさで耳まで赤くなってしまった。


「なるほど、準はシャイなんだね」


 ドミニクは特上の笑顔で話しかけ、モニカも美人と言われて悪い気はしなかったのか、笑いながら準に指摘する。


「シャイな男は、イタリアでは生きていけないわよ?」

「え、あ、う、ん」


 いきなり慣れるはずもない準は、壊れかけのロボット程度のぎこちなさながら、なんとか応対していたが、それなりに楽しそうではあった。


 慶次のテーブルでは、真奈美が中心となって、食べ物の話で盛り上がり、あっという間にランチタイムは過ぎていった。

 しかし、モニカもドミニクも、食事の後のデザートを忘れるはずはなかった。


「さて、パフェの時間が来たようね」

「僕は、このジャンボパフェがいいなぁ」

「パフェ……」


 モニカらのテーブルでは、すでにデザートメニューを片手にあれこれ品定めが始まっていた。慶次は、既にあきらめていたので、自分のテーブルにもメニューを広げる。


「おごるから、みんなも好きなのを食べて」


 その時、モニカらのテーブルでは頼む物が決まったようで店員を呼んで注文を始めた。


「このジャンボパフェを1つ」

「はい、お一つですね。 あとでお飲み物をお持ちしますが、何に致しましょう?」


 モニカらが紅茶やらコーヒーやらを注文している横で、怜香はメニューを見ながら真奈美に言う。


「このジャンボパフェって、4人分で1200円なら安いですね」

「そうだね~。みんなでこれにする~?」


「うん、いいよ、真奈美さん」

「ああ、じゃあ3人で食べて。 俺はコーヒー飲んでるから」


 真奈美が隣の注文を取り終えた店員を呼んで注文を始めた。

 怜香は、ちょっと黙っていたが、やがて決心したように慶次の方へ向き直る。


「べ、別に一緒に食べてもいいのよ」

「いや、悪いからいいよ」

「だ、だから、いいって言ってるのよ! でもスプーンは別々なんだからねっ!」


 怜香は、当然のことを口にしたが、もしかすると『あーんして』のシチュエーションが頭をよぎったのかもしれない。

 しかしそんなことを慶次は知るよしもなく、じゃあ私が食べさせる~、と暴走気味の真奈美を抑えるのに必死になっていた。


 しかしパフェが来ると、店員が気を利かしたのか元々なのか、小分け用の皿が付いていた。そこでみんなは自分の小皿に大きく盛りつけて、わいわいと食べ始めた。

 しばらくしてドミニクは、面倒になったようで、途中から本体の方にスプーンを突っ込んで食べ始める。準は、ドミニクが食べた場所をちらちらと確認していたが、さすがにそこから自分の分を取り分けようとはしなかった。


 ――そんなこんなでデザートタイムも終わった。

 その後の会計では、みんな少しずつ多めに支払い、また真奈美や準のカンパもあったので、結局、慶次の支払額はたいしたものにはならなかった。



 その後、全員が水着に着替えて集合。園内で一番目立つウォータースライダーへ滑りに行くことになった。

 ちなみに、みんなの水着は試着していたものと同じだったが、真奈美のビキニだけは試着室で見せた超過激なマイクロビキニではなく、普通のビキニだった。どうも慶次に見せるために着てみただけのようだ。


 怜香の水着は競泳用に近いスポーティーなもので、あまり色気のあるデザインではなかった。しかし怜香は長い髪をアップにして束ねていたので、ときどきうなじにかかる髪を直していた。慶次は、両手を挙げて髪の後ろを直す怜香の仕草を見るたび、実はドキドキしていたのだった。


 おしゃべりしながら八人がウォータースライダーの入り口に着くと、そこから上へはエレベーターで上がるようになっていた。エレベーターに乗って最上階に着くと、そこは、想像していたような普通の滑り台とは全く異なるものだった。

 そのフロアには、透明な筒状の発射台が2つ設置されていた。その筒の中に入って待つと、係員が秒読みを始める。カウントがゼロになると、立っている場所の足場が開き、中の人が下の滑り台へ落下する。そんな仕組みの本格的なウォータースライダーだった。


 見慣れぬ発射台に、モニカらは少しとまどっているようだったので、慶次と準が最初に手本を見せることになり、発射台の中に入った。係員に両手を胸の前で組むように指示され、カウントダウン。

 カウントゼロと同時に、彼らの立っている足場が開く。


「うひゃぁぁぁ~」

「なんじゃこりゃぁぁぁ~」


 慶次と準は、順番を待つモニカらにも聞こえるような大声で叫びながら、滑り台へと落ちていった。滑り台は透明なチューブ状になっていて、途中でくねくねと曲がりながら、20秒もかからずに一番下のプールまで慶次らを運んだ。


 水しぶきを上げて慶次らがプールに着水すると、下で待つ係員に誘導されて彼らはすぐに水から上げられた。ちょっと食い込み気味の水着を直しながら、慶次らは彼女らが滑り降りてくるのを待つ。


 スライダーの発射台では、次に滑るモニカとドミニクが係員の誘導を待っていた。

 すぐに下からの連絡が来て、係員の誘導で発射台に立つ。係員はおもむろにカウントを始めた。


「スリー、ツー、ワン、ゼロ!」

「きゃぁぁぁ~」

「うわぁぁ~」


 モニカとドミニクは、同じように大きな声で叫びながら滑り台へ落ちていった。そして、くねくねと曲がりながら、すぐに下のプールに着水した。


 ――バシャーン


 慶次らの目の前で盛大な水しぶきが上がる。

 着水したモニカは水の中でごそごそと水着を直しているようだ。ドミニクは、楽しかった~、と言いながら立ち上がったが、すぐにその過ちに気付く。


 ドミニクのチューブトップは幸いにも脱げてはいない。しかしちょっと上の方へずれていて、胸の下の方がすこしはみ出たような形になっていた。

 ドミニクは、おっと、と言いながら、素早く水着を直したが、そのこんもりとした形は慶次らの目に焼き付けられてしまった。

 準は、気になるドミニクのチラ見せに固まってしまい、ドミニクを見つめた状態で動かなくなっている。


「おいおい、準は僕の胸をガン見しすぎだよ?」


 ドミニクの抗議の声で我に返った準は、あたふたと取り繕おうとする。しかし、口をぱくぱくさせるばかりで声が出ていない。


「まったくもう、ドミニクは不注意なんだから……」


 上下の水着のずれや食い込みを水の中で素早く直したモニカは、あきれた口調でドミニクに言ったが、ドミニクはあまり気にしていないようだ。


「まあまあ、サービスということで……、ねえ慶次?」


 いきなり話を振られた慶次は、どぎまぎしながらも平静を装って答える。


「え? 何も見てないよ? なあ、準?」

「え、あ、う、ん」

 既に、しらばっくれることさえできなくなっている、純情一直線な準だった。


 水着を直すのを待っていた係員は、モニカらを外へ誘導すると、上に準備完了の連絡を送る。

 しばらく待っていると、きゃぁぁぁという声とともに、由香里とクリスがプールに着水してきた。


 クリスに比べて由香里は盛大な水しぶきを上げたが、やはり由香里の水着も少しはだけてしまったようだ。

 由香里は、慶次の方に背を向けながら、水の中で水着を直している。しかし、クリスは、気にすることなくいきなり立ち上がった。慶次らは一瞬ハッとしたが、クリスの水着は、腰のフリルがめくれてちょっとエッチな感じになっている点を除いて、脱げたりしてはいなかった。


 由香里は、自分の水着を素早く直すと、クリスの後ろから素早く近づいて水着のめくれた場所を直してあげた。そして、慶次の方をジロっと睨んだので、慶次はなんとなく視線を空の方へそらした。



 しばらくして、またもや悲鳴とともに、真奈美と怜香が盛大な水しぶきを上げてプールに着水してきた。

 怜香は髪を結んでいたひもがほどけてしまったのか、水着を直して立ち上がったとき、長い黒髪が顔の前に垂れ下がって、ちょっとうらめしい感じになっていた。

 それを見たモニカは、自分の髪をしばっていたひもの一つをはずすと、怜香に何か言って渡していた。


 慶次が怜香の方に気を取られていると、真奈美がプールの中からこそっと話しかけてきた。


「ねぇ、慶ちゃん。 わたしの水着、知らない?」

「えっ?!」


 慶次がぎょっとして水の中の真奈美を見ると、真奈美は胸を手で隠し、きょろきょろしている。水の中なのでよく見えなかったが、左手を横にして両胸を隠しながら右手で水をかいて移動しているようだ。


 慶次は思わず目を凝らしそうになった。しかし、困っている真奈美を裏切るようなことはできるはずもなく、すぐに周囲に水着が浮いていないか探し始めた。

 すると、さきほど滑り降りてきたスライダーから、真奈美のトップスがつるつると流れ落ちてきた。真奈美はそれを素早くつかむと、慶次らに背を向けてさっと着けた。


「ポロリもあったねぇ~」


 なんだか準が言いそうなセリフを口にしながら、真奈美はプールから上がってきた。

 準の方は、姉の苦境に気もつかずにドミニクの方をちらちらと見ていた。


 ――そんな彼らの様子を、ランフェイは、遠くの方から観察していた。

 ランフェイは、目を引く鮮やかなピンク色のビキニを身につけていたが、一方でサングラスと帽子で顔を隠して、目立たないように歩いている。


 ランフェイは、筋肉質の締まった体つきで、日本人の平均的な体型よりも明らかに足が長い。そのため目立たないように歩いていたにもかかわらず、周囲の注目を集めていた。


 しかし、熱い周囲の視線には気付いていないのか、ランフェイは、音楽を聴いているフリをしながら無線機の調整を済ませると、別のプールへ移動していく慶次らの後から尾行を続けるのだった。



「よぉ、お姉さん、色っぽいねぇ。 お茶しない?」


 慶次達が波乗りができるプールへ向かおうとしているときに、いきなり声をかけてきた男がいた。

 慶次が振り返ると、あきらかに一般人とは異なる感じの派手な服装で、髪を鮮やかな金色に染め上げた三人の男達が真奈美を取り囲んでいる。


 真奈美と一緒に話していた怜香と由香里は、彼らに抗議の声を上げたが、男達の一人が怜香と由香里の肩に手を回してきて、何かいかがわしいことを彼女らに言ったようだ。


「俺らのツレに、何か用でしょうか?」


 慶次は、由香里なら素人の男など、あっという間に制圧できるだろうとは思った。

 しかし、プールなのに服を着てうろついている彼らに嫌な予感がして、由香里を目で制止しながら、彼らに声をかける。


「ガキはすっこんでろ!」


 男達のリーダー格と思われるチンピラ風の男が慶次にすごむ。慶次は声が大き過ぎると感じて顔をしかめた。そんな慶次の態度が頭に来たのか、三人はまず慶次を排除しようと近寄ってきた。


「おら、ガキは失せろ!」


 三人の一人がそう言うと、いきなり慶次に殴りかかってきた。

 慶次は、いきなりぶち切れすぎだろう、と思いながら、体を逸らして男のパンチをかわす。もう一人も殴りかかってきたので、さらに体を左右に振りながら、全ての攻撃を軽くいなした。


 少し離れた所から、加勢しようか?、と目で言っているモニカとドミニクを、やはり目の合図で断りながら、慶次は、リーダー格の男の方に目をやった。

 男は、かなり頭に来た様子で、自分のポケットを探っていたので、慶次は男がナイフを使う可能性に気がついた。


 慶次は、相手がナイフを持っていても、自分が傷つくことなく勝てる自信はある。

 しかし、近くには全く格闘技ができない真奈美と怜香がいたし、モニカらも肌を露出させていることから、肌に傷を付けられる可能性がある。慶次は、そうしたことはなんとしても避けたかった。


 慶次は、一瞬でそのようなことを考えると、彼らの攻撃を受けてやることにして、避けるのをやめた。いきなりパンチが当たり始めたことに気を良くして、男達は慶次をタコ殴りにし始めた。


 そのとき、準が、やめろー、と言いながら、飛び出してきた。

 準は、格闘技の経験など微塵もないので、男にいきなり顔を殴られてしまった。


 慶次が準をかばおうと手を伸ばしたとき、突然、金属を引き裂くような、ものすごい高い声の悲鳴が周囲に響き渡った。慶次は、顔をガードする手を少し下げて周りを見ると、クリスが自分のおなかに両手を当てて、大音量で悲鳴を出している。


 喧嘩かと遠巻きに様子を見ていた人たちは、その悲鳴で彼らが襲われているのだと実感しざわめき始めた。すぐに、数人の警備員と思われる係員がへ駆けつけてくる。


「やべぇ、ずらかるぞ」


 リーダー格の男がそう言うと、残りの二人は慶次らを殴るのをやめ、そろって警備員が来るのとは反対方向へ走り去っていった。


「もう、いいよ。ありがとう、クリス」

 慶次が殴られた腹をさすりながら、クリスにお礼を言う。クリスは慶次の方へ近づいてきて、慶次の手の上から腹を触る。

「痛いの、痛いの、飛んでけ~」


 すぐに全員が慶次と準の回りを取り囲み、あれこれ心配する言葉を口にする。しかし、準はともかく、慶次は特に大きなダメージを受けてはいない。準も顔が少し腫れているようだったが、出血もなく、治療が必要な感じではない。


「もう、慶次はともかく、準は無茶しすぎだよ!」


 ドミニクが準の顔を軽く手でさすりながら、声をかける。


「あ、うん、なにも考えてへんかったわ……」


 ドミニクに触られて固まりながらも、準は、ぽそりと答える。


「でも、ちょっとかっこよかったよ」


 ドミニクはそういうと、さっと準の腫れた頬に軽く口づけをした。

 準は、頭から湯気が出そうなほど真っ赤になって、完全に固まってしまった。



 ――ランフェイは、離れた木陰からそんな彼らの様子を観察していたが、慶次を見るその目には、情けない男を見るような嘲りの色が浮かんでいた。


「あのような男達にも、勝てないのか……」


 ランフェイは、彼らから視線を戻すと、自分の方へ走って逃げてくる男達を不快な虫を見るような目つきで眺めた。

 男達は、隠れているランフェイの横に偶然に駆け込んでくると、不快な顔をして立っているランフェイを見つけて、性懲りもなくニヤつきはじめた。


「よぉ、お姉さん、色っぽい……」


 男は、最後まで言葉を口にすることなく、体を二つに折って苦悶する。

 ランフェイは、男の胃のあたりにめり込んだ自分の右手をゆっくりと引き抜くと、呆然としている他の二人に質問する。


「何かご用?」

「このアマ、ふざけんなよ!!」


 激昂した残りの二人は、ポケットにしまっていたナイフを取り出すと、それぞれ見せびらかすように前に構える。


 ランフェイは、前に一歩踏み込むと、男の手を蹴り上げてナイフを上に飛ばし、体を回転させてもう一人の男のナイフを横へ蹴り飛ばした。

 そして、立ちすくむ男の腹へ突き込むような前蹴りを入れて戦闘不能にすると、もう一人へは顔がひっつくほどに接近して、猛烈な膝蹴りを胃のあたりにめり込ませた。腹を蹴られた男達は、苦悶しながら地面をのたうつ。


 ランフェイは、のたうつ男達を這い回る虫を見るような目付きで見下ろしながら、ふっと空を見上げる。

 すると、先ほど蹴り上げたナイフが計ったかのように落ちてきた。ランフェイは、にやっと笑って、落ちて来たナイフの柄を空中でつかむと、そのナイフを地面に転がる男の顔のすぐ横に突き立てて言った。


「次は、殺す」


 ランフェイは、何ごともなかったように身を翻すと、見失ってしまった慶次らに追いつこうと小走りにその場を離れた。

 その場に残された男達は、ランフェイに対する怒りや恨みといった感情をきれいにぬぐい去られ、ただその恐ろしいほどの戦闘力に呆然としていた。


 また、始めに殴られた男は、ぶつぶつ言いながら身を起こした。しかし、さきほどランフェイが横へ蹴り飛ばしたナイフが自分のカバンに深々と刺さっているのを見て、そのまま絶句した。



 慶次達は、色々あったが、そのまま日が暮れるまでプールで楽しく遊び、夕食もみんなで食べてから解散となった。真奈美は、自宅まで違うバスで帰るのが近道であるため、ゲートの所で慶次達と分かれた。


 慶次達は、今日一日の出来事をあれこれ話しながら、やって来た駅へ向かうバスに乗り込んだ。その後、すぐに来た別のバスに真奈美も乗り込み、自宅へと帰っていった。



 ランフェイは、道路脇に停められたワンボックスカーの中に戻ると、中の男から声をかけられる。


「何か報告することは?」

「野蛮な一般人を制圧したほかは、特にありません」

「それは了解している」


 男は、前を向いたままそう言うと、出発したバスの後につけて、車を発進させた。

 ランフェイは、無線装備を所定の場所にしまうと、今日買った水着を小さく丸めて、自分の私物が入ったカバンに突っ込む。

 そんな彼女の顔をバックミラー越しに見て、男は厳しい口調で尋ねる。


「何がおかしい?」

「はっ、申し訳ありません!」

「大事を前に気を緩めるな」

「はっ!」


 ランフェイは、ふと笑顔になってしまったことに恥じ入って、気を引き締め直した。

 しかしそれでもお気に入りの水着で歩いた暑い夏の一日を思い返さずにはいられなかった。もちろんその思い出の中には、ぶちのめした男達の姿などかけらも残ってはいなかった。

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