*エピローグ
アザムはそうして、ロメオから様々な事を学んでいく──他の仲介屋とベリル専属の仲介屋との違いや、どの情報を重要視しなければならないのか。
覚えなきゃならない事は沢山あった。ハイスクールを卒業し、大学に入学する間にも医師免許取得の勉強を続ける。
ある日──ロメオの家の地下にある仕事部屋に通され、書棚に並べられた大量の資料と書籍にアザムは呆然とした。
「ベリルには要請や依頼の他に、試作品のテストなんかもよく来るんだ」
「死なないから、とんでもない物も送られたりすると聞いた事があります」
「あっはっはっ! β(ベータ)版ならまだマシなんだが、時々α(アルファ)版をよこしてくる奴がいるらしいからな」
それを聞いたロメオが高らかに笑いながら応えた。
「困ったものですね」
「まあな。それでもベリルはちゃんと報告してやってるよ。律儀というかなんというか……安全なものを提供したいっていうのは開発者も同じだからな」
そして書棚にあるファイルを1つ取り出し、少年に手渡す。
「! これ……」
「今はまだ個人情報関係は見せられないが、それくらいならいいだろう」
そこに記されていたものは、ベリルが今までこなした仕事の内容だった。
「そいつは簡単にリスト化したやつだから詳細までは記してない。いつどこで何をしたかを確認するためのものだ」
データ化もしているが、念のために紙媒体にも残しているという。
「覚えることは山ほどある。頑張れよ」
「はい」
自分に彼の仲介屋が務まるかどうか解らない。
ベリル専属の仲介屋は『ナイトメア・ホルスター』と呼ばれているそうだ。僕はそれに納得しつつも、どこか納得のいかない感覚があった。
彼の事を『悪夢』に例え、彼の動きを掴み時には動かすという意味合いを含めて付けられた呼び名だから、僕は少しだけ気に入らなかった。
ホルスターとは、ハンドガンを収めるケースのことだ。それを知れば、自然にその意味が解ってくる。
『悪夢の制御』あるいは『悪夢を収めるもの』
そんな意味なんだろう。
ベリルに敵対している人たちは皮肉を込めて、彼を尊敬している人たちからは畏敬の念を込めてそう呼ばれているんだそうだ。
そう教えられると、気に入らない理由はそこなのかと自分の意識が理解出来た。
いつかその名に恥じないようになれるのだろうか。僕はまだまだこれから沢山のコトを学ばなければならない。
ベリルの力になれるように、彼が充分に力を出せるように……僕だって諦めないよ。
END
*最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
河野 る宇
※作中のアザム、レイ、ティーロは愁明さまのキャラクターです。
そのキャラクターの著作権は愁明さまにあります。





