*痛み
「?」
突然の銃撃戦に、レイはどうしていいか解らず拘束されているパイプイスから動けないでいた。
おかげで監視は1人になったが、この状況の中では対処の仕様が無い。
しかし、銃撃が行われているということは彼らにとっての敵が現れたという事だ。相手は警察? それとも?
「……」
銃声に聞き耳を立てると、少しずつだが少なくっているのに気がつく。どちらかが倒されているのか、共倒れになっているのかまでは解らない。
監視の男を攻撃すれば殺されてしまうだろうか……もしそうなら、私の持つウイルスの記憶は2度と利用されない。
そう思ったとき、アザムの顔が浮かんだ。
私は何を考えているんだ。誰のために生きると誓った? 罪を償うことは死ぬことじゃないと彼にそう教わったじゃないか──レイは強く瞼を閉じた。
「徐々に前進」
<了解>
ベリルの指示で少しずつ包囲網を狭めていく。1人、また1人と相手が倒れていくのをアザムはどこか夢見心地で見つめていた。
相手の戦力が1人になったらしく、向こうからの攻撃が単発になる。
[勝ち目はない。投降を勧める]
ベリルが彼らの言葉で発すると、拒否するという意思表示のように銃弾が飛んできた。距離を縮めるために銃撃の合間をぬって、前にある積まれた木箱に駆け寄る。
「!」
そこにいた男にアザムは驚いた。
[うっ!?]
倒れていた男は、撃たれた傷を押さえながら後ずさりする。ベリルはその男を無言で見つめると、仲間の1人に求めるように手を差し出した。
手渡されたポーチを開き、必要なものを取り出していく。
「!」
アザムは取り出されたものに少し驚きつつも、手伝うため隣にしゃがみ込んだ。
「な、なんで敵を助けるんだよ……」
2人の行動に少年は「信じられない」と目を丸くした。
「理解し合えないからと排除することが正しいとは思わんだろう?」
エメラルドの瞳が少年を一瞥し、応急手当をしながら発する。
「誰でも怪我をすれば痛い。心の傷はさらに痛むものだ」
男は英語を理解出来るらしく、ベリルの言葉に目を見開いた。手当を終えて戸惑っている男を見下ろす。
「理解してもらいたい感情が勝手な押しつけだと解っている。それでも、少し考えてはくれまいか」
[……]
静かに発した言葉には応えず、男は顔を伏せる。ベリルは返事を待つつもりはなく、未だ攻撃してくる相手に目を移した。
「狙撃を頼む」
「了解」
[……っ]
仲間の1人がライフルを構えると、男はビクリと体を強ばらせた。その男に、ベリルは柔らかな眼差しを向けて発する。
「心配ない」
たったそれだけの言葉なのに、男は何故か安心出来た。





