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*引鉄-ひきがね-
「確かここで良いはずだが」
その青年は、いぶかしげに辺りを見渡した。
アメリカ合衆国──ネブラスカ州オマハ市、その郊外に立つ。
青年の外見は25歳ほど、金のショートヘアに瞳はエメラルドを思わせる。藍色のソフトデニムのジーンズに象牙色の前開きの長袖シャツを合わせた格好だ。
今日の昼過ぎ、突然の電話でここに呼び出された。随分と焦っているような口調に、深く聞かずに従ったのだが……丁度、近くで休暇を取っていたため同じ日の夜に落ち合う約束を取り付けられた。
せっぱ詰まった状況なら早く落ち合った方がいい。相手の声はある程度、年のいった男のようだった。
「ベっ、ベリルか……?」
「!」
背後からの声に振り返ると、コンクリートの地面にへたり込んでいる影が確認出来た。荒い息で、かなり周りを警戒しているように見える。
「?」
建物の物陰で、こちらの様子を窺いながら後ろに何かを守っているような仕草に青年は怪訝な表情を浮かべた。
「電話をしてきた者だな」
「……そうだ」