第2話:写真との出会い
20分も過ぎただろうか、電車はいつもどおり、各駅停車し、目的の駅に着いた。そして、いつもどおりの駅で降りて、いつもどおりのバスに乗って、会社へ向かった。まるで登校中の高校生のようだ。しばらく人ごみの中を割ってはいると、大きな看板が見えた。ここが俺の仕事場だ。いつ見てもその建物は清潔そのもので、ますますやる気が出てきた。さあ、今日も一日頑張ろうか。
パソコンのキーボードをたたく音と共に、時計の針は順調に追いかけっこしていった。やがてパソコンのカタカタが鳴り止むと、時計の針は4時ジャストをさしていた。今日の仕事はもう終わり、家に帰って休むことにした。いつもの角を曲がって、マンションのオートロックを解除すると、家が近づいたからか、安心してどっと疲れがこみ上げてきた。さっさと寝てしまおうと、部屋に戻ろうとすると、このマンションの管理人に呼び止められた。
「あ、佐々木さん、今朝も新聞取ってなかったでしょう。たまると困るんだからちゃんととっといてよ。」
こういう日に限って、管理人はうるさい。「はいはい、分かりましたよ。」といった感じで、[402 佐々木]のプレートを探した。本当だ。6月なのに、5月10日の新聞が入ってる。明後日は資源ごみの日なので、そのときまとめて出そう。そう決心したとき、新聞の下には、勧誘などの広告が山になっていた。その山をかき分けていくと、次に手紙の山があった。その手紙も、やっぱり生命保険の勧誘で、ため息が漏れた。
そのときだった。その手紙の山から、1枚の写真が、まるで紅葉のもみじがくるくると、ひらひらと落ちていくように落下した。その写真には、一本の苗が写っていた。