断罪イベント365ー第14回 王子のトンデモ理論
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
「よって、この場をもって
――婚約者アイリス・ハルトンを、断罪する!」
王子の断罪宣言が、静まり返った会場に響く。
しかし、観衆の表情はいつになく微妙だった。
理由は明白。
王子がこれまでに語った“罪状”が、
まったく筋が通っていなかったからだ。
「婚約期間中に別の男性と話していた」
「お茶会で自分より別の貴族に微笑んだ」
「俺の話より猫の話を聞いていた」
そして、極めつけのひと言がこれだった。
「つまり、浮気というのは――愛情の証なんだ!」
会場「……」
観衆(え?)
観衆(今、何て?)
王子は真顔だった。
「本当に愛しているからこそ、人は揺れる。
これは父上がよく言っていた。
『浮気しない男はいない。だから文学に描かれるのだ』とな!」
観衆(……意味不明)
黒幕令嬢が必死にフォローしようとする。
「そ、そうですわ殿下!
愛が深いがゆえに、アイリス様の行動は――」
だがその時、婚約者アイリスが一歩前に出た。
「殿下」
その声は凛としていた。
「あなたが“愛情の証”と呼ぶそれは、
私には“誠実さの否定”にしか聞こえません」
王子「な、なに?」
「私はあなたに誠実であったし、あなたにもそれを求めてきた。
ですが今日、それは……あなたには重すぎたのでしょう」
観衆「アイリス様カッコいい……」
「理論より真実だよな」
アイリスは最後に一礼し、静かに退場していった。
残された王子は、ぽつりと呟いた。
「だって……だって父上が言ってたのに……」
観衆「……全くもって、意味不明」
断罪イベントで理論が破綻・・
亡き父の言葉にすがる息子の切なさが、
ほんの少しだけ哀れ。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m