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◆第7章「揺らぐ信念と、黒き月影」

――噂という影


晋太郎(しんたろう)が執行者の浅井(あざい) 桐谷(きりや)を倒し、右腕を取り戻してから数日後。

天宮高校では、彼にまつわる様々な噂が飛び交っていた。


「マジで倒したってのか……執行者を?」

「でもそれって、“反逆者”じゃないのか?」

「F組、どうなるんだよ……」


正義か、裏切りか。

英雄か、反逆者か。

誰もが言葉にできぬ不安を抱えながら、F組の教室もまた揺れていた。


――分かたれる想い


その日の放課後。

F組の教室には、数人の生徒が残っていた。


「……みんな、黙ってないで何か言えよ!」


紅月(あかつき) 紅蓮(ぐれん)が机を拳で叩きながら叫ぶ。


「アイツは自分を取り戻す為に戦ったんだ。なんも間違いじゃねぇ!」


「けど、校則と街のルールは破ったわ」

冷ややかな声を放ったのは水鏡(みかがみ) 莉央(りお)だった。


「執行者に個人で手を出すのは、厳重な違反。状況がどうであれ、正当化はできない」


「……私は、晋太郎(しんたろう)の想いも分かる……けど……………………」

と、雫もまた揺れる気持ちを抱えながら言葉を紡ぐ。


沈黙の中、弔伊(とむらい) 直也(なおや)が口を開く。


「……僕は、彼の行動を否定しない。けど、これで周囲が黙っているはずがない。彼は過去にこの学園を救っている。だから、期間を儲けて隔離処分で一旦落ち着いているが、それが、僕たちだったら……"退学処分"になっていただろう。」


「は?なんでだよ。なんで俺たちが……」


紅蓮(ぐれん)の声が怒りで震える。


「……彼は、多分一人で背負ったのよ。私たちを巻き込まないように」

雫の目に、かすかな涙が光った。


「なら、もう一度会って、ちゃんと話すしかないよ」

そう呟いたのは、冷水(ひやみ) 冬弥(とうや)だった。


「黙って離れて、噂に流されるくらいなら、俺は……あいつを隣に戻す」


皆が、静かに彼を見た。


その瞳にあったのは、“決意”だった。


――監視という名の鎖


その頃、天貝(あまみや) 晋太郎(しんたろう)は学院の外れ、特別隔離棟と呼ばれる施設の屋上で空を見上げていた。


右腕は既に完全に再構成されていたが、それでも“心”には傷が残っていた。


(右腕を渡さなかった選択に後悔はない………けど)


自問する彼の前に、風紀委員長・阿久津(あくつ) 大道(たいどう)が現れる。


「よう。相変わらずだな」


「……ここ、隔離施設ですよ?どうやって……」


「風紀委員だからな」


阿久津は階段にもたれながら、静かに言った。


「お前の行動は、正義だの悪だのじゃねぇ。だだ、信じたもののために拳を振るい、奪われた"大切なもの"を取り戻しただけだと信じてる。」


「……ありがとう、ございます」


「模擬戦でお前と戦った俺は、お前がどんだけ真っ直ぐなやつか知ってる。信じる理由はそれだけで十分だと思ってる。執行者(アイツら)がお前の力をどんだけ街の脅威だと感じようが、良くも悪くも責任てのは自分が持つもんだと思ってる。」


「けど、学園や街がそう思うとは限らねぇ。特に、"上"はな」


「“上”?」


阿久津(あくつ)は空を見上げた。


執行者(アイツら)の上層部。お前が浅井(あざい)を倒したことで、連中の一部が動き始めてる。次に動くのは……No.5か、No.3か……」


晋太郎(しんたろう)は目を見開いた。


「つまり、まだ……終わってないってことですか」


「ああ。仲間を巻き込まないようにしたつもりだが、次は――F組全体が、標的にされるかもしれねぇ」


その言葉に、晋太郎(しんたろう)は拳を握り締めた。


(俺は結局……仲間を危険に巻き込もうとしたのか……?)


その胸に、決意とは異なる“覚悟”が芽生えていた。


――忍び寄る新たな影


夜。とある廃ビルの一室。


仮面をつけた男たちが、静かに会議をしていた。


「浅井が敗北した……か」

「雷の少年、天貝(あまがい) 晋太郎(しんたろう)。記録以上の異能と判断すべきか」


「次に出すべきは……“彼女”かもしれないな」


黒棺(くろひつぎ) 災禍(さいか)……裏切りの兆候もある。いずれ、粛清も視野に入れろ」


沈黙の中、最奥の椅子に座る人物が口を開く。


「――では、《雷光》の処理を開始しよう。F組、その力……見極めさせてもらう」


机の上に並べられた、F組の生徒ファイル。


そのページには、全員の顔と情報が記されていた。


静かに“次の嵐”が、動き出そうとしていた。


◆第7章「揺らぐ信念と、黒き月影」了



◆第7章 登場人物


天貝あまがい 晋太郎しんたろう


F組の男子生徒で主人公。

脳力:「右手に希望を(ライト・オブ・ザ・ホープ)」

感情によって力が左右される特異な脳力の持ち主。右腕に「神格者」と呼ばれる被験者の腕を移植されている。雷を宿す脳力を持つが、使用には大きな代償が伴う。第7章では執行者の基地へ単独潜入し、自ら“裏切り”の道を選ぶ。


月島つきしま しずく


F組の女子生徒。

脳力:式神召喚と護符による結界術

冷静で芯が強く、晋太郎への想いを抱きながらも、仲間として彼を支える覚悟を持つ。第7章では晋太郎の“裏切り”に戸惑いながらも、自分の信じるもののために戦おうとする。


紅月あかつき 紅蓮ぐれん


F組の男子生徒。

脳力:「爆熱起動ヒート・ブースト

炎と爆発を自在に操る。快活で熱血漢。晋太郎の真意を信じ、仲間として支える立場を貫こうとする。


水鏡みかがみ 莉央りお


F組の女子生徒。

脳力:「幻光写し(リフレクト・ミラージュ)」

光の屈折により幻影を生み出す脳力。特定条件下で実体化も可能。お嬢様的な性格でありながら、F組と晋太郎を心から友人として想い、自らの信念と秩序との間で葛藤する。


弔伊とむらい 直也なおや


F組の男子生徒。

脳力:「相殺」

自身に向いた衝撃やダメージを打ち消す能力。無口だが、莉央を忠実に支え、彼女の意向に従って行動する。


黒棺くろひつぎ 災禍さいか

執行者No.8「黒棺」。執行者の中で情報共有されていたため天貝(あまがい) 晋太郎(しんたろう)を知っており、晋太郎(しんたろう)を遠目から見ることがあり、神格者に興味を持っていた。晋太郎(しんたろう)と街での“出会い”を経て心を通わせる。彼に対して特別な感情を抱き始める。表情は薄いが、言葉の裏に繊細な想いがある。


浅井あざい 桐谷きりや

執行者No.9。「神速」

脳力は持っておらず、身体能力が化け物並みに高い。

切りたい、切ろうと思ったらとりあえず実践してみるとなんやかんやなんでも切れるという才能を持っており脳力無しで脳力者と渡り合える珍しい実力者。

再度晋太郎と戦い敗北。以降は「ただの浅井」として新たな道を歩み始める。


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