表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鈴の音

作者: 絵室 ユウキ

 カラン、カラン。


 この音が合図になる。

 僕を眠りの世界から呼び戻す音。この音が鳴ると、僕は閉じていた瞼を開き、耳を澄ます。

 そうすることが、いつの間にか僕の習慣になっていた。

 耳を澄ますと、いつも遠くの方から声が聞こえてくるのだ。

 その声は、僕ではない誰かに向けられたもの。誰も、僕のことは必要としていないみたいだった。皆、何か勘違いをしている。

 僕はその声を聞いていることしかできないのに。


 忘れた頃に、またあの音が鳴る。今回は随分久しぶりだったような気がした。

 僕は耳を澄まして声を聞いた。

 ――「あの人が帰ってきますように」

 柔らかい声だった。全てを包み込む朝もやのような声で、その人は言った。

 ――あの人って一体誰なんだろう。帰ってきてほしいって、その人は今、何処にいるんだ?

 そんなことを考えることぐらいしか、僕には出来ない。その願いを叶える力なんて、僕にはない。本当に叶えてもらいたいなら、別の誰かに頼めばいいのに。どうしてこの人は、僕にこんなことを言うんだろうか。

 分からない。

 さて、また眠ることにしよう。



「こんな寂れた神社に、ご利益なんてあるのかな?」

「分かんないけど、折角来たんだしさ。いいじゃない。浩太は何もお願いしないの?」

「俺はいいよ。こんな古ぼけた神社じゃ、神様もどっかに引っ越してるよ」

「でも、こんなところにまだ住んでくれてる神様なら、きっといい神様に違いないわ。願い事、叶えてくれそうじゃない?」

「よく知らないくせに、よく言うよ。早く行こうぜ」

「もう、ちょっと待ってよ」

神社の神様の本音。

願い事をした女性は、過去の恋愛に固執しつつも、別の男性と付き合っている。

あわよくば、あの彼がまた戻ってきてくれれば……そんな願いをかけました。

けれど、その願いは叶えられない。

それが、彼女にとっていいことなのか、悪いことなのか。


読んで下さってありがとうございました。

もしよろしければ、感想・評価等、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ