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第三十三話 決着?

 アルカン王の言葉にイワンはすぐに答えられなかった。


 アルカン王はイワンの態度に怒ったりはしない。

「どうした? 今すぐ答えられないのか」


 躊躇いつつイワンは答えた。

「私が良くても、コレット嬢にはコレット嬢の意志があります」


 イワンの答えに対してアルカン王は気を良くしていた。

「もし、即座にお前が『はい』と答えたら、儂はお前を信用しなかった。気が向いたら検討しろ。少しだけ猶予を与える」


 イワンの顔は真剣そのものだった。

「いつまでですか?」


「ハイランド王が生きている間だ。儂はこれからハイランド王の延命に動く。だが、そう長くはもたんぞ」


 さっきまで敗北に打ちひしがれていたイワンの顔には希望が宿っていた。

 イワンにしてみれば地獄から天国だ。


 アルカン王がコレットに向き直る。


「無理にイワンを受け入れる必要はない。他に良い男がいるなら言え。とりあえず、お前が結婚できるようにハイランドの王子をキープしておいた」


 結婚できない未来を危惧しての親心なら、余計の極みである。善意かもしれないが、イワンとの恋愛は重たくてしかたがない。


 一陣の風が吹く。目を庇うためにコレットは三秒だけ目を閉じた。目を開けた時にアルカン王がいなかった。


 イワンは立ち上がった。ここから猛アプローチしてくるかとコレットは身構えた。


 ホッとした顔でイワンは剣を拾うと、コレットに向き直る。

「今日は馬の具合を見るのは止めておく。アルカン王の言葉は救いだが、私は少し混乱している」


 イワンの心中を考えると無理もないので、引き留めなない。


 イワンは帰ると、ミレーが厩から戻って来た。何も知らないミレーはきょとんとしていた。

「もうお見合いは終わったの?」


「怒涛の展開で私はついていけなかったわ」


 コレットの正直な感想にミレーは小首を傾げる。

「お見合いで怒涛の展開ってあるかしら?」


「あったのよ!」


 翌日の夕方、グレンが訪ねてきた。バンを送ったにしてはピンピンしている。あまりに綺麗な格好で、しかも帰りが早い。もしかして、バンを送り届ける振りをしてどこかにバンを捨ててきたのではないかと気になった。


「無事で何よりだけど、なぜが気になるわ。息子が殴り倒されてもカルマン王って笑っていられる魔王なの?」


 コレットの問いにグレンが肩を竦める。

「まさか、王子が自分の身に何が起きたかをカルマン王に申告すれば外交問題でしょう」


 当然の答えだがグレンに焦りは見えなかった。

「ならどうして、そんなにグレンは平静でいられるの?」


 グレンが微笑んで教えてくれた。

「バン王子には頭から酒を掛けておきました。家に連れて行った時も酷く酔われたと説明したので大丈夫でしょう」


 余計に事態が悪化する気がする。

「そんな嘘は王子が目覚めたらすぐにばれるわよ」


「衝撃で王子の記憶が飛んでいなくても問題ないでしょう。同じ相手に二度も負けたとバン王子が家中で言えるのなら、別ですが」


 酷い言いようだ。弱みに付け込んでいる。だが、今回の件に関してバンにも落ち度がある。それにコレットに対しても礼を欠いていたので、憐れみはない。


 ただ、気になる事もある。

「バン王子は復讐を考えるかしら?」


「それは当然でしょう」とグレンはサラリと認めた。

「うげっ」とコレットが悩むとグレンが教えてくれる。


「お嬢様に直接に危害を加える真似は考えないでしょうね。バン王子は思慮が浅いですが、裏表が少ない性格です。仕返しをするならアルカン王にしないと気が収まらないはずです」


 アルカン王がやった仕打ちなので、仕返しをアルカン王にしてくれるのなら問題ない。それにしても、グレンは優秀だと感心した。


「グレンはよくお父様に仕えていられるわね。それだけお父様が好きなの?」


 グレンはサラリと否定した。


「お嬢様は何か勘違いされているようですね。魔王に仕えるとはこういうことが普通なんですよ。これはどこの魔王でも同じです」


「魔王の下で働くって大変だな」とコレットはしみじみ思った。

 報告が終わったグレンが外に出る。グレンがわざとらしく思い出したように語る。


「明日は早起きされたほうがいいですよ」


 コレットはドキッとして不安になった。

「何よ、今度は何が起きるのよ」


 嫌味なほどグレンがさわやかな顔をする。

「モテる、乙女は辛いですね」


 トラブルの予感しかしない。コレットが呼び止めようとしたが、グレンは小走りに雨の中を走り去った。

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