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サバイバルゲーム  作者: こんぺーとー
サバイバルゲーム〜始まる行方を大調査!〜
7/13

一日目【千代side】

 チュンチュンチュン


 外から聞こえる小鳥の声と窓からの日差しで、私は目覚めた。


 そして自分の体を見ると白を基調とした黄色のラインが入っている、まさにゲーム関連の服を着ている。


 上がワンピースで、膝丈ぐらいの長さ。


 下はスパッツを履いていて、これは黒色。


 色々なところにチャックがあり、中のサイズは大中小と様々だ。


 デスクにある本に目をやると、その上に本の題名が電子板で表示されていた。


 「『ドームのエリア区分』と『■■■■■■と■■■■■■■の歴史』?本の題名が表示されている?」


 題名の部分をタップすると、著者と本の発売日、大体の内容が表示された。


 だけど2冊目は、全てハテナだった。


 不思議に思い本の中を見てみると、ところどころが黒く染みているのがわかる。


 それも一部ではなく、本の全体で染みている。


 どれだけ隠したいことが書いてあるのかはわからないけど、白い部分もあるのは確かだ。


 焦らずにわかるところだけを見れば、大体の内容もわかるはず。


 〈みなさん、おはようございます。予定時刻になりましたので、各自準備が整い次第ホールに集合してください。なお10分以内に来ない場合は罰を受けてもらうので気をつけてください〉


 急遽画面の上に新しい電子板が現れ、美来さんが録ったものだと思われる音声ビデオが流れた。


 終わった後、ビデオは何事もなかったかのように消えた。


 証拠隠滅を感じ取れずにはいられない動きに、私は確信した。


 このゲームで、私たちの命は軽いんだと。


 最低限言わなければいけないことだけを言って、あとは各々にお任せ。


 一番最後の忠告は、最初だからとサービスをしたと見られる。


 10分でホールまで辿り着けるか、という問いにYESと答えられる人間は半分いるかいないか。


 昨日の大雑把な説明で、現状を理解できていないものが今日に向けて準備をしていない人。


 ホールまでの道のりを覚えていない人。


 突然の放送に驚き、慌てて正常な判断が下せない人。


 まずこのビデオが全員に流れているという保証がない。


 つまり、わからないことだらけ。


 改めて今の情報を整理してみると、美来さんがめちゃくちゃ無理難題を押し付けているのが目に見えてわかる。


 私は昨日のうちに準備しといたから時間に余裕があって情報整理ができたけど、時間がない人は今頃どうしているんだろう。


 ランはリンちゃんを使って、自分の身支度でも用意させているのかな。


 はたまた道を忘れて、八つ当たりでもしているのだろうか。


 ヒカルさんとマモルくん、リンちゃんは10分以内にホールに来ることが予想できる。


 しっかり者のヒカルさんは男同士のマモルくんの面倒を見ていそうだし、リンちゃんは性格的にに用意周到なのが窺える。


 残りは、ギリギリセーフかな?


 じゃあ私はどうなのか。


 準備はもうほとんど終わっているし、ホールに行く道は覚えている。


 あとは本を鞄の中に入れて、歩きながら勉強しようかな。


 大体の予定が決まり、私はすぐに部屋を出た。


 鞄の中に本を2冊いれ、電子板はなんとか感覚で消す。


 ドアの方に向かい、廊下に出てから扉を閉める。


 施錠はオートロックと呼ばれる物だった。


 キィー……ガチャッ。


 開けようと思えばどこからか黄色の鍵が出てくるし、閉めようとすると勝手にしまる。


 自動で鍵を閉めてくれるものを見るのは初めてだったから、正直驚いた。


 施設では毎日シフト制で子どもたちが扉を閉めていたから。


 決して建物とは言えない貧弱さと、不衛生を変え揃えている施設。


 引取先が見つかって退院した、ウジ様とリョウくん。


 今は会えない人だれど、私が憧れたヴァンちゃん……。


 どれか一つがいなければ、今の私はなかった。


 いいことも悪いことも含めて、自分が成り立っているんだ。


 後悔なんて、一つしかない。


 復讐のチャンスを、逃してしまったこと。


 あの時の私は、どうかしていた。


 自分よりも明るいみんなといる内に、本来の目的を見失っていた。


 私は復讐者。


 例えどんなことがあろうとも、この決心を帳消しにすることはできない。


 もしここで死のうものなら、這いつくばってでも復讐をしに行く。


 途中で力尽きても、体のどこかに傷はつける。


 誰が死のうとも、絶対に。


 自分の心を確認し、私は開けていたドアを閉めた。


 残り時間を気にしながら、私は目的地へと足を進めた。


 着いた頃にはすでに何人かが到着しており、私の後に来たのはリンちゃんとランだった。


 ランだけはドアの上にあったカウントダウンのブザーが鳴った1秒差で部屋に足を踏み入れたので、今は隔離されている。


 罰を受けてもらうと美来さんは言っていたけど、私としてはなんともない罰ゲームだったので少し安心した。


 「さて、まずはラン様以外の皆さん。10分以内のご到着、おめでとうございます。報酬として、スキルを見る方法を教えて差し上げましょう。これは生きていく上で便利なものなので、お互いのためでしょう」


 「ちょっと!私は1秒遅れただけよ!なんでこんな中にいなくちゃいけないの!ヒィッ!」


 隔離されたガラスの部屋の中で、虫と一緒。


 少し動いただけでも悲鳴を漏らすのだから、よほど嫌いなのだろう。


 むしろ恐怖の対象になっている気がする。


 虫さんたちもかわいそうに。


 特にセミさんなんか、医学的に将来を期待されているのになぁ。


 「まずあなた方の手の甲に、メインカラーである色の宝石が示されています。その部分を指で触れてオープン と呟いてください。そうすれば自分の個人情報が電子板で全て表示されます。なお注意点として、表示を偽装・相手に見せることはできません」


 このように……と美来さんが見本を見せる。


 確かに何か示しているような手の配置はしているけど、特にこれといったものは見当たらない。


 けど一部分だけ、風景がぼやけているところがある。


 多分そこにあると思うけど、見えない以上確信的情報がない。


 予想に似た確信、といった位置づけかな。


 「なお契約違反となる場合は、この際ありません。これからも無意識な契約には、ご注意ください。さて、それでは今からラン様を含めた方々での自己紹介を始めたいと思います。各自、自分の席に座ってください。異議はその後に聞きますので、今は指示を聞き入れてくれることを望みます」


 ランがガラスの部屋から解放され、一目散に移動する。


 他の人間もそれに続き移動していき、表情は戸惑いが多く見られた。


 その間に私は、自問自答する。


 待って、無意識な契約?


 どこでそんな失態を犯した。


 音声ビデオが送られた後、私は何をした。


 私は自分の席に向かって歩きながら思考する。


 ビデオは勝手に消えたけど、本に関しての電子板は出したままだった。


 電子板にまだ痕跡が残っている可能性が高いと踏んだ私は、さっき聞いた方法での練習も兼ねてもう一度電子板を開いた。


 すると契約の承認を確認しました、と契約履歴に残っているのを発見した。


 詳細を確認すると、どうやら表示された10秒内に何も操作がなかった場合、強制的に契約承認をするような仕組みになっていたことがわかった。


 はぁ、まだまだ気配りが足りない。


 このゲームで勝つためには一つ一つの己が持っているスキルや技術を、極限まで使わないといけない。


 なのに私は初日だから大きなことは起きないと、偏見を持って油断していた。


 ゲームマスターに賭けていた。


 内容によっては、これから私が重視すべきものが見えてくる可能性があったから。


 リスクとして、危険なことになる。


 あるいは他の人間に、私の個人情報がバレるかもしれなかった。


 プライバシーは大事だけど、生き残るためには情報が多い方がいい。


 多ければ多いほど、今後の判断に影響が出る。


 良い未来か悪い未来かはわからないけれど、一つ一つの判断の上で成り立つもの。


 日頃の行動が、運命を大きく左右すると予想される。


 次からは必ず無意識のうちに偏見に頼らず、しっかりと考えた上での判断を下すようにしよう。


 他人の見えない葛藤を見ている人間がいたら不思議に思うかもしれないけど、今のところ大切な情報を漏らしてはいない。


 どちらにしろ化けの皮は剥がれるものだし、何も焦ってはいけない。


 焦ったことが表面に現れた時こそ、チェックメイトになるから。


 「それでは今から自己紹介を始めます。順番は年齢順で、中学三年生からですね。内容については、こちらから制限させていただきます。名前と年齢、好きなこと、今後について、メインカラーの合計四つになります。制限時間はないので、ゆっくりお話しをしてくださっても大丈夫です。ただし時間が許容値を超えた場合、今後の予定が変わります。相談時間を1分間差し上げますので、使用する場合は誰かが手をあげてください。時間内では自由な会話が可能ですが、基本的に、席を外すことは許されていませんのでご注意ください。それでは、一番最年長のヒカル様からどうぞ」


 自己紹介の内容や注意事項を説明すると、美来さんは部屋の隅に行ってしまった。


 てっきり美来さんもやるのかと思ってたから、少し残念。


 なんでかと言うと、運営側……つまりゲームマスターの情報が欲しかったから。


 弱みを握ったら何か吐き出してくれるかもしれないし、有利な取引ができる可能性もある。


 強者は弱者を気にしない。


 その余裕を逆手に取り、裏で暗躍したりすることもできる。


 もちろん、そんなお金ないからやったことないけど。


 けど、監視のない状態で行動できるのは大きな利点だ。


 美来さんが私のことを見ているかは分からない。


 だけど今までの行動から見てあっちから関わってくることはなさそうだから、多少のことは見逃してくれるだろう。


 確信がつくまでは行動は控えるけど、少しでも情報が入手できるように方法を考えなくちゃ。


 生き残るために行動する、それがサバイバルゲーム。


 どれだけ難しいかは知っているつもりだ。


 実際やっている人には軽率な言葉に聞こえるかもしれないけど、施設に預けられる前に暮らしていたよりは豊かな地形に恵まれていると思っている。


 近くに自然があるだけでも、食料確保には大きく貢献できる。


 つまり、生き残れる確率がこっちの状況の方が大きいということだ。


 この利点を加味して、ゲームに勝ってやる!


 「はい。僕の名前はヒカルで、中学三年生。好きなことは読書で、今は数学書を読んでいます。今後についてはまだ状況を飲み込めていないけど、精一杯頑張ろうと思います。メインカラーはオレンジ色です」


 最後に、きっちり45度の角度で頭を下げた。


 片方の手を胸に当てており、まさに所作が貴族。


 貴族は滅多に会うことができないから、目の当たりにして驚いている。


 さすが第一印象王子様、と言ったところかな。


 「俺はマモル。中三。好きなことは夜の仕事。今後については、特に言うことがない。メインカラーは緑だ」


 続いたのはマモルくんだ。


 ヒカルさんと同じ年齢だと知ってビックリしたけど、言われてみれば私よりも身長が高くて頷ける。


 最後に測った時に150cm超えてた気がするから、それよりも大きいことは明白だ。


 そんなことよりも夜の仕事?


 施設を終えた先の未開地で最も残酷と言われている職業の一つの、あの?


 ラブラブなピンクオーラましましと聞いた、あの?


 うん、よくないことは考えない。


 人の価値観は理解できないものも含まれてるから、あんまり考え内容にしよう。


 これは私の身を守るためでもある。


 決して、知らないことをじっくり知ることへの快感が欲しいためにやってはいない。


 大丈夫だ。


 私は自分の欲に溺れて行動していない。


 未来の私へ。


 断固異論は認めない。


 最初ぐらいは多めに見てくれと、反省した直後にそう思うバカがどこにいる。


 いない、ここにはいない。


 安心して。


 「私はラン、中二よ。好きなことに関しては、個人情報だから秘匿させていただくわ。今後については、私のリンに関わらなければそれでいいわ。メインカラーは紫よ」


 さっきの昆虫類罰ゲームを根に持っているのか、美来さんに少しの間視線を合わせながら言った。


 もちろんそのあたりは縛られていないから自由だけど、目力がすごかった。


 抗う意思をポキッと折るんじゃないかと疑うくらいには。


 その矛先が私じゃないから正確な効果はわからないけれど、多分ダメージにはなっていると推測する。


 金色の髪に紫の服となると、お嬢様を連想させる。


 しかもドレスを着ているからか、お嬢様感がハンパじゃない。


 よく見てみると、私と同じで白を基調にしていることがわかる。


 でもデザインや形は変わっておらず、最初に来ていた服の色を変えただけのようだった。


 他の人たちの服装を見ても、私以外は全員元の服のままだった。


 私の最初の服はところどころ破れていたし、新しく新調してくれたのかな?


 だとしたら嬉しいな。


 あの服には思い入れもあったけど、初めての新品の服にはやっぱりドキドキしちゃう。


 施設ではボロボロの服しかもらえなかったから、自分のためにある服を着るのは緊張する。


 もうちょっと美人だったら、服さんに自信を持って着れるって言えるんだけどな。


 まあそう簡単に平凡女から美人になったら私も色々と嫌だから、地道にコツコツとやっていくしかないか。


 「わ、私はリンです。中学二年生で、好きなことは勉強です。こ、今後については特に目処が立っていません。め、メインカラーは白です」


 途切れ途切れでリンちゃんが自己紹介を終わらせた。


 ランの時と違って終わるのに時間がかかったけど、聞こえる音量だったからリンちゃんらしく頑張ってやったんだろう。


次は、私の番かな?


出来るだけ自然に、他の人達に変に思われないようにしないと。


 「私はチヨで、年齢的には中一かな〜。好きなことは寝ることで、今後については言えることがないかな〜。メインカラーは黄色だよ〜」


 てまきるだけのんびりと自己紹介をした。


 好きなことを言うつもりはなかったけど、素直に言わないと怪しがられそうだからやめておいた。


 感情を表に出さないことについては自信がある方だけど、時々真実を入れてないと見破られる確率が上がるからこうして定期的に言っている。

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