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2-6部分


感染症対策で大浴場が使えないのは、予約した時から分かっていた。その代わり、個室風呂付きの豪華な部屋を割引料金で取れたのだ。

むしろ、その方が落ち着く。営業時間を気にせず都合のいいタイミングで動けて、人目も、気にしなくて済む。


服を脱いで浴室に入ると、雨の外気とは質の違う、暖かく湿った空気が満ちていた。お湯の流れる音と檜の匂いもする。個室というだけあって露天ではなく、一面が大きなガラス窓になっていた。目隠しの植え込みがあり、その黄色に近い緑色の葉の向こうに、別館らしい建物のオレンジ色の明かりが少しだけ見える。

曇り空から白っぽい光が入っていて、窓の外を見ている銀ちゃんの後ろ姿がお湯から出ている。なで肩で丸っこいシルエットが、7センチの身長差を差し引いても、たまにとても小さく見える時がある。


僕が入ってきたのに気付いた銀ちゃんが振り返った。

「氷治、おいで」

「……子供じゃないんだけど」

と言いつつ、その隣に、その腕の中に、抱かれに行ってしまう僕もいる。

「来られて良かった」

銀ちゃんが穏やかな笑顔で言った。僕は銀ちゃんに肩を寄せて窓を見る。

「ほんと。休暇ずらしてもらったらいつになるか分かんないもんね」

平日に旅行に来られているのは、銀ちゃんの勤続年数を労う、リフレッシュ休暇という制度を利用したからだ。

僕が生まれる前から、銀ちゃんは同じ会社に勤めて毎日仕事をしている。想像もできない。

その休暇も、コロナウィルスの流行が収束するまで取得を伸ばす事もできたらしいが、銀ちゃんは僕の仕事が一段落する時期に合わせてくれた。

「……まあ、もっと天気のいい時期もあったかもだけど」

風流と言えば聞こえはいいが、観光ができないのは残念だった。


「雨が止んだらどっか行けばいいよ。何だっけ、滝?」

「滝だけど……行けたらでいい。土砂で危険ですって言われるかも知れないし」

「そんな山奥にあるの?」

「後で調べるよ。あんまり期待しない」

行き先まで僕の希望を聞いてくれたのに、雨なんて気の毒な銀ちゃん。


そんな銀ちゃんは浴槽の中の一段高くなった部分に座り、僕はその脚の間に入った。底に座って、まだ筋肉が衰えきっていない胸とお腹に背中を預ける。肌がぴったりと触れ合うのは少し久しぶりで、非日常的な空間もあって、急にドキドキしてきた。

「あんまりくっ付いてると、ほら……」

言えずに手を動かすと、すぐに銀ちゃんは察したらしい。

「いいよ、別に。気にしないよ。男同士なのに何いまさら」

「いや……僕が気にするから」

「氷治は若いもん、元気な証拠」

「若くないよ。10代の頃の方がもっと……何でこんな話。違うって、もう」

意味をなさない言葉を話しながら、離れようとした。若いと言うより、自制が利かない部分だから、どうしようもない。


ふと、銀ちゃんが真面目なトーンになる。

「けど、そうなってくれるのは嬉しいよ、俺は。こんなおじさんにも……反応してくれてるって事でしょ」

珍しくこんな話題になったから、

「おじさんとか関係ないから。銀ちゃんだからこうなるの」

と返した。

汗が出てきて、顔やこめかみを伝い始める。いい大人だし、誰かにドキドキなんてもうしないはずだった。

でも、

「困るなぁ」

言葉ではそう言いながら、嬉しそうに銀ちゃんが手を伸ばしてくるのを待っていた。

触れるか触れないか、ギリギリの所を動く。お湯の流れる感触だけが来て、下の毛が揺らされる。ぶわわっと、意識と一緒に血が集まっていく。腰の周りや腿の内側がもぞもぞする。黒い毛の中から、暗めの肌色がその範囲を広げるのが、外からの光を反射する水面越しに見える。


「ああ、もう無理。銀ちゃんのせいだから」

きちんと宣言して、体を反転させた。脇の下に手を入れて持ち上げる。銀ちゃんは最近、脇毛も薄くなったようだ。

「えっ!」

驚いて声を出すのが聞こえた。

浴槽のへりに座らせて、脚の間に体を入れる。ちっとも反応していないのが目の前に垂れ下がっている。口に含んだ。一気に奥まで咥え込む。

「待って、こら、氷治!」

焦った声が浴室に反響する。片手で顔を離させようとしてくる。僕は片腕で腰を抱え込んで、首に力を込めて逆らう。そうしながら無理やり吸った。

頬で圧迫して、舌で裏側を上下に擦る。その動きを何度かすると、少しだけ硬くなった気がした。

銀ちゃんが淡白と言うより、年齢相応なのだろう。死ぬまで現役、お盛んな人もいる。銀ちゃんと出会うまで、付き合うのは同世代だったから本当のところは知らないけれど。


「ごめん、氷治、悪かったって……」

往生際の悪い銀ちゃんは一向にその気にならない。僕も往生際悪く続ける。

体だけが目当てで付き合っているわけじゃない。無いなら無いで構わないし、銀ちゃんの年齢を知った時から、予想も覚悟もしていた。

けれど今は、僕の言うことを聞かずに、からかってきたからその仕返しだ。

「ねぇ、きついでしょ? しなくていいから、ほんとに……」

「僕がしたいの」

一度顔を離して言い返し、右手も使う。もう片方の手は銀ちゃんの腿に置く。


下の毛にも白髪が混じり始めているのを、初めて見た時はさすがに驚いた。その中で項垂れている中心が、何だか自信を失っているように見えたのも覚えている。

「明るいと恥ずかしいから……」

銀ちゃんが言い訳のように言ってくるが、

「そんなの、今どき女の子でも言わないよ」

と返して、また口に含んだ。手も使いながら、首を前後に動かす。

味も臭いもないし、きついという事はない。


銀ちゃんが僕の頭に手を置いて、少しだけ体を反らした。腰を突き出してくる。先端を喉の奥に入れさせる。

「氷治……」

上がった息の合間に呼ばれると嬉しくなる。ようやくその気になったのだ。

「ン」

声を出して上を向くと、流れ落ちた汗が目に入ってちかちかした。しみて痛くて片目を閉じる。それでも感じている銀ちゃんが見たくて、一瞬動きを止めて、お湯に濡れた手で目を拭った。

銀ちゃんも顔を下に向けて僕を見てきた。いつの間にか頭に乗っていた手が後頭部に回っていて、引き付けるように力がこもっている。

やばい、と思った。良い意味での、やばい。

銀ちゃんに仕返しのつもりで始めたのに、僕自身が興奮していた。ドキドキするのとはまた違う、今すぐヤリたい、ヤッて欲しいと。衝動のような強い感情が湧き上がって来た。


お湯に浸かった下腹に分かるほど、ヌルヌルした感触が溢れていた。堪えられなくて、銀ちゃんの腿から離した手で擦る。

すると、銀ちゃんも手の力を強めてきた。髪に指を埋めてくる五本の指の腹が、しっかりと分かる。もっと奥に、とねだられているような、それでいて、銀ちゃんに犯されているような感覚に陥ってしまう。

舌の付け根や喉がねっとりし始める。そこを窄めて出し入れさせる。口の中も、喉の奥も、粘膜だ。敏感な部分には変わりない。

「ン、ン……!」

思わず声が出てしまう。苦しいけれど、気持ちが良いと思ってしまう。

右手は貼り付けるように銀ちゃんの下腹に置いて、親指の付け根で銀ちゃんを支えていた。左手は使い慣れていないから、自分で刺激するにはもどかしい。

「ごめんね、でも、もうちょっと……このまま」

銀ちゃんが余裕のない声で言ってきた。ぞくぞくっとした感覚がお尻を包み込んで、そのまま背中や肩を駆け上がる。


喉が塞がり、息苦しくなっているのに気付いた。ぴったりと密着させた唇が麻痺して、端から涎が垂れてしまう。口の中に閉じ込めていたグチュッ、グチュッ、という音が頭蓋骨に反響して、耳に聞こえてくる。

旅行や温泉という非日常的な空間の特別感に浮かされるのは、単純だけど、たまには悪くない。


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