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ボクの初恋のひと 出会いそして最初の失恋  作者: 明けの明星


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9/28

梅雨から初夏へ~ 梅雨入り

運動会が終わり、ボクたちの日常はいつもに戻った。

と言っても、入学してすぐに運動会の練習なんか始まったから、

日常の学校生活を初めて体験する、といった方が正しい。


雨の降る日が増えて、そろそろ梅雨の季節のようだ。

そんな週のまんなか、平日だけど家族みんなで夕食にでかけた。

近所にある少しだけ高級な回るお寿司屋さんだ。


ボクはお寿司屋さんというのは回るのが普通だと思っているのだけど、

回らないお寿司屋さん、というのもあるのだろうか。

まいかに聞いてみたけど、彼女も知らないと言っていた。


そのお寿司屋さんはのれんのついた個室スペースがいくつもあり、

お店の中央では「板前さん」という白衣を着た人が数人で寿司を握っている姿が見えた。


いつも行くお寿司屋さんは皿のまわるレーンがあるだけで、

調理人のような人の姿を見ることはなく、寿司も壁の向こうから出てくる。


パパとママはビール、まいかとボクはジュースを持ち乾杯をした。

「けいた、お誕生日おめでとう。それから運動会お疲れ様」

とママが言った。

そう、きょうはボクの誕生日だ。

ボクの家では誕生日当日にお祝いをすると決まっている。

今日みたいにお寿司屋でだったり、ファミレスでだったり、お家でだったり

場所はそれぞれだけど、お誕生日のその日に家族みんなでお祝いをする、

というのはボクの家の決まりのようなものだ。


パパが会社帰りに慌てて買ったと思われる、書店の包みを差し出した。

「これ、プレゼント」

それは「かがくずかん」と書いてあり、表紙には記号のようなイラストや実験につかう

道具の様な絵が付いていた。

ボクはこういう図鑑が大好きで、それをわかってきれていたパパのプレゼントが嬉しかった。

「ママからは。。。」

何も用意をしていないらしいママは少し気まずそうだ」

「あ、このまえのスーパーパワーがプレゼント!」

そりゃないよ。ボクがそういう前に

「脱げちゃうスニーカー、プレゼントって言われてもね」

とまいかが代わりに嘆いてくれた。

それとは別に、自転車を誕生日プレゼントに買ってもらうことになっているから、

ママからのプレゼントがなくても別にいいんだけど。

口には出さなかったけど、新しい自転車を今度の休みに買いに行くのがとても楽しみだ。


このお寿司屋さんは回るレーンはあるけど、ほとんど寿司は流れてこない。

ほとんどが中央の板前さんに注文して握ってもらう。それがレーンに乗せられて

運ばれてくる仕組みだ。

板前さんの手さばきが見たくて、少し体をそらして横を向いてみた。

そうしたら、ちょうど斜め反対側の席、ボクたちがいるような

4人くらい座れる、半分個室の席に、あすかがいるのが見えた。


あすかの隣にはあのあすかのお母さん。

そして正面には見知らぬ男の人が座っていた。

あすかのお母さんはにこやかにあすかに微笑みかけて何か話していた。

この前の怒ったような表情とはずいぶんちがって穏やかな優しそうな人に見えた。

あすかは、笑いもぜず、かといって不機嫌な様子でもなくといった顔をして

寿司を口に運んでいた。


あすかはつまらないんだ。

ボクはそう思った。


ボクは家族に悟られないようにちらちらと時々あすかのほうに視線をやった。

しばらくすると、あすかのお母さんが席をたってどこか行った。

正面の男の人と二人きりになると、あすかは突然その男の人に

なにか話し始めた。

楽しそうに、嬉しそうにずっと話している。

男の人は優しい眼をしてあすかの話を聞いていた。

その顔はあすかと何となく似ていた。

あすかのお父さんだ。ボクは直感でそう思った。


ボクの好きなサーモンの寿司をたくさん食べ、デザートまで食べおなかがいっぱいになった

とことで、そろそろ帰ることになった。

ママがお会計をしている間、寿司やの入り口ホールで待っていた。

まいかがパパにホールに置いてあったお寿司モチーフのおもちゃをねだっているのを

ボクは遠目に眺めていた。


「けいた、偶然だね」

後ろから声をかけられ振り向くと、そこにはあすかがいた。

いたずらっぽく笑っていた。

ボクが見ていたの、気付いていたのかな。

それだとボクが恥ずかしい。


「お誕生日でしょ。これあげる」

と言ってボクにガチャガチャででたカプセルトイを握らせた。

あすかはそのままお母さんとたぶんお父さんの元に走って行った。

その時にはまたさっきの無表情に戻っていた。


カプセルトイにはイクラの軍艦巻きのキーホルダーが入っていた。

なんだか嬉しかった。

そんな5月最後の日、ボクは7歳になった。




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