冬~今年が終わる
いつの間にやら吹く風は冷たく、
空気がツンと鼻に痛く感じる寒さとなっていた。
それでも街の中は色とりどりのイルミネーションで彩られ華やかだった。
クリスマスがもうすぐだ。
普通の家でさえ玄関先に見えるようにトナカイやサンタの置物があったり、
夜になるときらきらとライトが光ったりしていた。
ボクに家でもクリスマスツリーを飾り、
玄関にはクリスマス仕様のリースを付けた。
「今年はサンタさん来るかな。」
まいかが不安そうに言った。
「え、なんで、サンタさん来ないなんてあるの?」
ボクは聞くと、
「だっておばあちゃん死んじゃったから。喪中でしょ。」
おばあちゃんが死んだのと、サンタさんが来ないのと、どういう関係があるんだろう。
ボクにはわからなかった。
クリスマスが目前に迫った日、2学期が終わった。
今度は夏休み前日のように大荷物で困ることはなかった。
冬休みは夏休みに比べるとずっと短い。
それにプールもないし、登校日もない。
先生は
「楽しいクリスマスとお正月をすごしてね」
と言ってボクたちを送り出した。
冬休みも何日かは学童クラブに通う予定だけど、
あまり多くない。
学童クラブ自体がお休みの日もあるみたいだ。
この冬休み、まいかは学童クラブにはいかず、
塾の冬期講習に行く。
ボクも「行かない?」って言われたら
すぐに行くってこたえるつもりだったけど、そうは言われなかった。
「冬期講習は3年生からなんだって。だからけいたは来られないよ。」
まいかが教えてくれた。
ママの話だと、冬休みは受験を控えた学年にとっては正念場。
先生たちもかかりっきりになるから、小さな子の冬期講習はなし、なのだそうだ。
冬休みが始まり、ボクは学堂クラブ、まいかは冬期講習に行く日々となった。
ママはボクたちより早くお仕事に出かけるから、
ボクとまいかはしばらく二人で家で過ごし、それから一緒に家を出た。
まいか、出かけるまでの間ずっとテレビの推しが出てる番組を見ている。
ボクが声をかけなければ遅刻しそうだ。
学校に着くと、学堂クラブの部屋に向かった。
校内には人の気配はなく、がらんとしいてとても静かだった。
学堂クラブでやることは、夏休みと同じで外で遊ぶもよし、教室にいてもよし、だった。
ボクは図書室で過ごした。
そこにあった雑誌を見ると、
どこかのお父さんやお母さんがインタビューされている記事がった。
その何人目かに、あすかのお母さんが載っていた。
そこには
「娘の夢は医師になること。私と同じ夢をもってくれてうれしい」
といったことが書いてあった。
それから数日が過ぎ、その間にはクリスマスもあって、
ボクとまいかにサンタさんは来てくれて、ケーキもあってほっとした。
街はこの間までのきらびやかなイルミネーションは姿を消し、
どこか慌ただしくなったように感じた。
学堂クラブからの帰り道、あすかと出くわした。
塾の帰り?と聞いてみると、
「忘れ物取りに一旦もどっただけ、こんな時間に終わるわけないじゃん。
10時まではいるかな。」
と遅くまで塾にいると言った。
「すごね、お医者さんになりたいならそれくらい勉強しないとダメなんだね」
とあの記事を読んだこともあって言ってみた。
「あ、お医者さんにしたいのはお母さんの希望ね。私は」
そういうとボクの耳元に近付いて
コソコソ話のように話し始めた。
「私はね、シンガーになりたいの」と。
シンガー?と首をかしげていると
「歌をうたう人だよ」
と少しほほを紅潮させながら言った。
そうだった、あすかは歌が好きなんだ。
そして大晦日、今年の最後の日が来た。
大晦日からお正月の間はボクの学堂クラブもまいかの冬期講習もお休みだった。
「6年生は元旦も塾があるんだよ。正月特訓っていうんだって」
とまいかが言った。
あすかも行っているのかな、そう思ったとき、
「6年生、塾の成績トップはあすかちゃんだった」
とまいかが言った。
塾ではいろんな順位を貼りだしているから、6年生の成績が貼り出されているのかもしれない。
「それ、すごいの?」
と聞いてみた。
「そりゃ1位だもん。名門中学に入れるよ」
「あすかちゃんはお母さんがお医者さんだからあすかちゃんもお医者さんを目指すのね。」
ママが口をはさんだ。
あすかの夢がお医者さんになることではないことをボクは知っている。
でもママにもまいかにも言わない、そう思った。
シンガーになりたい、それはあすかとってとても大切な夢だ
それを知っているボクにとっても大切なことだ。
そしてボクにとっては二人だけが知っている秘密なんだ、
とその時のボクはそう思っていた。
子供の夢は無限大ですね。
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