梅雨から初夏へ~梅雨も終盤
6月も半ばを過ぎ、雨が続くうっとおしい日々が続いていた。
傘をさして長靴での登校にも慣れてきた。
校門を入ってから下駄箱までの間に、雨水を跳ね上げてしまうことも
なくなっていた。
雨の日はもちろん外で遊ぶことができず、動かずにはいられない数名の男子は
教室の中で暴れまくっていた。
時々、6年生がボクたちと遊んでくれるために教室までやってきた。
ボクは暴れなくてはいけない男子ではなかったので、
休み時間に図書室に行くのがこのころの定番になっていた。
ボクは本が好きだ。
図鑑が一番好きだけど、物語もよく読む。
1年生になる前から、ママとまいかとでよく近所にある公共の図書館に行っていた。
そこでは時々、「読み聞かせ」の時間があって、
靴を脱いで上がるカーペット敷のスペースに子供たちが集まり、
お話を読んでもらっていた。
ここは普段はまだよく歩けないくらいの小さな子が遊ぶスペースだった。
小学校の図書室にはそういう場所はないようだ。
教室と同じ造りで、真ん中にいくつものテーブル。
周囲には大きな本棚が並んでいて、たくさんの本が詰まっていた。
その日のお昼休みも雨で校庭には出られずボクは一人で図書室にいた。
いつもなら図鑑を抱えてテーブルで読みふけるのだが、
たまたま背の低い棚にあった、雑誌のようなものが目に入った。
その表紙には制服を着た男女数人の姿があり、
沢山のまだ読めない漢字と、
「おすすめ」とか「ピックアップ」とかいう文字が見えた。
何気なく手に取って眺めてみると、数ページごとに校舎の写真と制服を着た中学生?くらいの
人が載っていた。
「それ、中学の学校案内だよ」
と図書室の先生が教えてくれた。
「中学にはね、そのまま行ける公立の中学と、勉強して受験をして合格したら入れる
私立や国立の中学があるんだよ」
うちでもまいかがパパやママと受験の話をしていることがあって、
そういう言葉は聞いたことがある。
その学校案内の雑誌をペラペラとめくってみた。
制服を着た生徒が、男女のこともあれば、女子だけ、男子だけなところもあった。
校舎の写真も、ボクの通う小学校とは比べ物にならないほど豪華な校舎の学校もあった。
それからしばらくして、家のリビングに
「夏期講習のお知らせ」というパンフレットが置かれていた。
今度の夏休み、まいかが駅前にある中学受験塾の夏期講習に通うのだそうだ。
その申し込みに行くというので、ボクもついて行った。
駅前のビルの中にあるその塾には、同じリュックをしょった大勢の小学生がいた。
ほとんどが、まいかよりも大きいのかな、という5年生か6年生にみえたが、
なかにはボクと同じくらいの子もいた。
ママとまいかが受付で手続きをしている間、ボクはロビーで待っていた。
ロビーの向こう側には、教室を思われる部屋がいくつもあって、
小さな窓から中の様子が見えた。
その教室のなかに、あすががいた。
真剣な表情で前を向き、何かノートに書いている。
あすか、ここに通ってるんだ。
そう思ったけど、そのときのボクにはここで授業をうけているあすか
と中学受験がつながらず、ただここにはあすかがいるんだ、と思っただけだった。
しばらくして、手続きを終えたままとまいかが戻ってきた。
すると今度はボクがママに連れられて、受付に連れてい行かれた。
「けいた、1年生用の夏期講習もあるみたい。まいかと一緒に通えるし、
行ってみない?」
と言われた。
夏期講習なんていわれてもピンとこなかったけど、
ここにはあすかがいる、そう思ったボクは
「うん、行ってみる」と即答していた。




