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プロローグ

 昼下がりの時間帯、空を切る飛行船アズール内部では、魂の形に可愛らしいキャラクターのような顔がついた「たましいくん」が廊下を脚の速い小学生並みのスピードで乗組員達を避けながら先を急ぐ。


「どうしたんだ?」「どうせそそっかしい『ドロピア』の忘れ物だろ」「へっ、いつも通りだ」


 もうすぐ魔法についての授業開始の時間で、ヒソヒソと話されている通りに忘れ物を必死に届けようとしていた。謎の妖力で浮かせた、魔導書2冊を抱えている。

 ようやくの想いで『B-2室』へたどり着いた、が。そこにドロピアの姿はなかった。つまりはと言うと、入れ違ってしまったのだ。室内はたましいくんの登場で笑いの渦に包まれ、いかにも魔女な女性教師が「静粛に」と、細長い魔法使いの杖を地面につつく。


「ドロピアさんは後ほど職員室に呼ぶとして、たましいさん? 今すぐ、追いかけなさい」

「は、はい〜…」


 丁寧に扉を閉め、間髪入れず追う。

 霊体といえど疲労は溜まる。先ほどよりやや遅いスピードでドロピアの寮室へ。しかしまたしても姿はない。


「もしかしてまた、すれ違ったのかな〜」


 アテもなくキョロキョロ見渡すも、助けてくれる相手もいなければ、目的の相手が来るわけでもない。諦めてドロピアの使用しているデスクに置く事にした。


 場所は戻ってB-2室。

 膝に手を当てて床を見ながら息を切らす一人の魔女の学生。耳には青い宝石のピアスをしている。彼女こそドロピアと呼ばれる女の子で、魔法科学校に入って2年目だ。

 ようやく呼吸が少し整って見上げると、魔女の先生が鬼の形相で発言するのを待っている。

 恐々と苦笑いで質問を投げかける。


「あの〜…たましいくん、見ませんでした…?」

「先ほど焦って教室に来て、貴方を探すように言いましたよ。それはともかく、今日はもう時間がないので他の生徒と一緒に魔導書を見てください。いいですね!」

「はい! ごめんなさい!」

「全く、元気だけはいいんですから」


 小走りで自分の席に着き、隣の優しい女の子に魔導書を見せてもらいながら、授業が始まった。


「……で、この呪文とこの素材が……ええ」


 文字を走らせる音と、数名眠ってしまっている生徒のイビキやつまらなさそうにホワイトボードを見つめるあのなど、十人十色で今日もいつも通り終わる予定だった。

 この飛行船アズールを揺るがすほどの大きな地響きで教室が小刻みに揺れる。約20秒ほどしてから警報ベルト船内アナウンスが爆音で響く。


「付近の地上で巨大な魔力の衝突有り! 船内の皆さんは急いで身を守ってください! 繰り返します!」


 船内全体で大騒ぎとなった。

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