魔法科にいるアヤカシ
船長室。大きな窓ガラスが何十枚も並んでいる息が詰まりそうなほど広いエリアで、飛行船アズールの先端部分に位置する。
船の記録を記す書斎の隣には、昨日お持ち帰りされた風音が薄い毛布にくるまってすやすや寝息をつく。
そして、エリアの最も奥の高級そうな赤い回転する椅子には真由利が脚を組んで座っていた。
「早速来たようだね。もう少しこちらへ来たまえ」
「はい! それで、なんのご用でしょうか」
ドロピアが背筋を伸ばして、堅苦しく固唾を飲む。
まばゆい黄金の朝日を見ながら、まずは質問を受ける。
「少女、本名は?」
「ドロピア スピリットです。こちらはたましい…」
「違う。本名は、と尋ねている」
「え、」
いきなりのとんでもない問いに片足下がる。朝日に負けない真由利の鋭い眼光に、胸の鼓動が速くなる。
が、負けじと凛とした表情に変え、後ずさった半歩を戻した。
「ドロピア スピリットです!」
「嘘をつくな。魔女に『妖力』を持つ者はこの世界にいない。そう、あの警視庁のトップのようにな。それに」
「それに?」
「本当の事を言えば学園関係者、及びその他。つまりはわたし達だけの秘密にしておく。これでも約束を守る職に就いているもんでな。頼む」
立ち上がって深くお辞儀。
して、何回も起きる予想外の行動に、慌ててお辞儀をやめるようドロピアはお願いした。
「ああ、あの。本当の名前は、九尾です。たましいくんもほら」
「えっと、ぼくは生きてる時の記憶がないので、分かりません……」
「なるほど。ご協力感謝する。いやはやつい懐かしくなったもんでな。狐の里に住んでたんだろう?」
「はい!」
元気よくドロピアは答える。
「わたしも住んでたからな! 同志だ! 仲良くしよう! と、ついでにここに来た理由も教えてくれ」
「それはですね」
その丁度悪いタイミングで船内が大きく揺れた。真由利の部下である船員が扉を勢いよく開け、汗だくで報告を行う。
「大変です! 何者かが襲撃に来ました!」
「分かった。ドロピア少女! また今度だ!」
真由利と船員はすぐさま船長室からいなくなってしまった。それを見たドロピアは、
「たましいくん、私達も行くよ!」
と言って真由利を追いかける。




