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転生猫は、第二の生を謳歌したい。  作者: 禄星命


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第四十三話

 何も進展しないまま、悪戯に月日は経ち。ついぞ彼女が目覚めぬまま、夏休みは終わりを告げた。――そしていよいよ、鈴虫が鳴き始める季節となる。


「……琴音の母は、今日も不在か」


 琴音が昏睡してからというもの、家はすっかり寂れてしまった。皆で囲っていたテーブルは常に無人になり、君主を失った城のような侘びしさだけが漂っている。猫の姿でなければ、画家に絵を1枚頼んでいたかもしれない。


『幸いなのは、レイが変わらず元気なことくらいか』


 彼女はリビングを走り回っており、安堵に顔を上げる。厚ぼったい雲が点在する空は、目が眩む程明るい。ニュースから得た知識だと、これから“狐の嫁入り”が始まるらしい。


「たまには雨もいいかもな」

「ニャ」


 早速降り始めると、レイは窓際に立ち耳をそばだてる。どうやら今世でも、雨音に執心しているようだ。


『聴いていると、不思議と気分が落ち着く。……俺が気付けていないだけで、レイも内心不安なのだろうか』


 視線を少しずらすと、神妙な面持ちのレイが窓に映る。そのまま彼女を眺めていると、雨はあっという間にあがってしまった。――と思えば直後、ここぞと言わんばかりに粘着質なチャイムが鳴り響く。


「誰だ? いや、今日は何の予定も無かったはず。……無視するか」


 しかし少しの間をおいて、人が変わったようにチャイムが短く鳴る。だが()()()()輩がいることは知っていたため、再び無視をする。すると今度は連続して二度三度と鳴り、意地でも出てもらうといった意志を露わにした。


「ン〜……」

「……すまん。少し確認してくる」


 煩さにレイが顔をしかめたため、仕方なく庭から玄関へと向かう。ここで役に立つのは、インターホンに付いたカメラだ。背伸びをし、音を殺してボタンを押す。そうして靴箱から画面を覗くと、そこには見覚えのある女3人組がいた。


『あれは、琴音のクラスメイトの……。アポイントもとらず一体何の用だ?』


 制服姿の彼女らは、学校帰りといったところだろうか。シャツやスカートを着崩し、だらしなさに洒落を見出している。いや――俺から見ればぞんざいな格好だが、現世ではあれが流りのファッションなのかもしれない。


『時代が変われば価値観も変わるということか』


 興味も相まって様子を覗っていると、リーダー格の女が口を尖らす。


「えー、なんか全然出ないんですけどー」

「平日の日中だし、普通に留守なんじゃない?」

「だよねー。これ、ポストん中入れてさっさと帰っちゃう?」


 リーダー格の女の手には封筒が一通あり、表面には校章が印刷されている。どうやら、学校で配られたものをわざわざ届けに来たらしい。しかし中々に厚みがあり、挿し込まれれば郵便局員が困りそうだ。


『ならば、投函後すぐに回収しよう』


 靴箱から飛び下り、庭を経由し玄関口に回り込む。だが存外粘り強く、未だにドアの前で応答を待ち続けていた。


『まだ居座っていたか……!』


 柱の陰に身を潜め、動向を窺う。とはいえ流石に観念したのか、リーダー格の女はポストに手を伸ばした。しかし長髪の女は、インターホンを見つめたまま不敵に微笑む。


「……いえ、少し待ってください。近くから気配がします」

「気配?」


 貴様は暗殺者か。捕まる前に部屋へ引き返そうとしたが、足もとに砂利があるため身動きがとれず。彼女らの視界に入らないよう、姿勢を低くし息を殺すのがせいぜいだった。


 ――しかし、その甲斐虚しく。頭上からは、穏やかな声が降りかかる。


「ふふ、やはりいらっしゃいました。お久しぶりです猫さん」

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