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転生猫は、第二の生を謳歌したい。  作者: 禄星命


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第三十三話

「ニャ?」

「ふっ、紙が丸まって気になるよな。だが俺と二階堂が端を押さえるから、落ち着いて読んでくれ」

「ニャン」


 レイは香箱座りをすると、視線を落とす。俺が書いた短文と絵で、視界を埋め尽くすように。


 思いついた名案というのは、家族しか知り得ない情報で判別するという、至極単純明快なものだった。寝る間も惜しんで描いた、四人の生前の姿と、生前の言語で書いた家族の名。しかし画力には自信がないため、せめて雰囲気や名だけでも伝わればと、固唾を呑んで彼女の反応を見守る。


「ナ……ンナ、ニャア……?」


 結果は存外早く分かった。彼女は震える声で何かを訴え、紙を涙で濡らしたのだ。


「どうしたレイ! 二階堂、彼女は何と言っている!?」

「――分からない」

「な……!? そんな筈は」

「“何でか分からないけど、涙が止まらない。読めない言葉なのに、知らない人たちなのに。胸がぎゅっとなって苦しい、苦しいよ”。そう言ってる」

「……!」


 泣き続けるレイに視線を向ける。その表情は猫でありながら、家族とはぐれ顔を歪める少女のようだった。


「琴音。猫が泣くのは有り得るのか?」

「……ううん。聞いたことない。だからきっとこの子は――」

『そうか、本当に……予想が的中したというわけか。だが、何故言葉を話さない? 何故記憶が失われている?』


 まさか、たった数ヶ月で全てを喪ってしまったのか。それについては心当たりがあるが、今すべきことは考察ではないと自身を戒める。――そう、今俺が成すべきことは。


「……逢えて良かった」


 心からの喜びを呟き、彼女を背中から抱きしめることだった。


◇◇◇


 レイが泣き疲れ眠った頃。俺は悩みながらも、二階堂に軽く状況を説明する。


 自分は生前人間であり、転生別れした妻子を探していると。俺の声が聞こえるという共通項から対象者を絞った結果、案の定そのうちの一人がレイだったと。そうして最後に「我ながら奇天烈な話だと思っているが」と添えるも、二階堂は、眉一つ動かさずに感想を述べる。


「そう。大変だったね」

「驚かないんだな」

「レイの声が聞こえた時から覚悟してた。もっと不思議なことが将来あってもおかしくないって」

「成程な。時に、レイとはいつどこで出逢ったんだ?」

「うちの中庭で。今年の1月中旬、枯れ木の下で震えているところを保護した」

「……1月だと?」


 俺が転生したのは今年の4月頭。ある程度の時期のズレは想定していたが、わずか3ヶ月で記憶や会話が薄れてしまうのは、予期せぬ報せだった。


『暑さだ何だと言い訳をしている場合ではないな。だが、外出がままならぬのも事実。どうする……夜間探索の許可を得るべきか』


 思案に耽っていると、琴音が首をひねる。


「それにしても、あとの二人はどこにいるんだろう。二階堂さんは何か知ってたりする?」

「ひとつ、心当たりがある」

「えっほんと?」

小鳥遊(たかなし)さんの家、最近迷い猫を見つけたみたい。会いに行ってみる?」


 行き詰まっていた話も、一度転べばトントン拍子に進むものだ。二階堂によれば、彼が申し出た日取りは二週間後。丁度、花火大会が行なわれる日らしい。


◇◇◇


 それから暫く経ったある日。新城親子の買い出しを見送った俺は今、レイと二人きり――もとい、二匹きりでリビングでくつろいでいた。


「ニャアニャ」

「どうした?」

「ンー」

「……撫でてほしいのか?」

「ニャン!」


 あれからレイは、俺に甘えてくるようになった。


 二階堂の好意により実現した、新城家にて二匹水入らずで過ごす日々。レイもそんな幸運を噛みしめているのか、食事や睡眠、室内の散歩にいたるまで、片時も俺から離れない。


『初対面の頃に見た、凛とした佇まいが嘘のようだ』


 俺の腕に掴まり喉を鳴らす彼女を一瞥し、天井を見上げる。


 後日改めて確認したところ、レイは次女だと判明した。興味を示したものが、生前の彼女と合致していたからだ。


『生前構ってやれなかった分、相手してやらないとな』


 いや、「させてもらう」だろうか。ともかく琴音自作の手毬(てまり)を咥え、レイの視界に映り込む。


「さて、いつまでも寝転がっていてはつまらないだろう。これで遊ばないか?」

「ニャン!」

「俺が向こう側に立って転がすから、このカーペットを越えないように打ち返すんだ。俺の後ろに手毬が転がったら、お前の勝ちだ」

「ンー!」

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