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第七話 ゴブリンを討伐する着ぐるみ、ついでに出てきた奴も

 ミリネッタさんの案内もあってあっという間に目的地である村に到着した。

 どうやらここでは、カロティアへ色々と野菜を納品しているようで、ゴブリン達はそれを略奪しようとしているんじゃないかとミリネッタさんは話した。

 以前も、そうだったみたいなんだ。

 ゴブリンと言えば、略奪者というイメージ。まあ本来のゴブリンは妖精ってことになっているが、それは地球での話。


「いやぁ、最初見かけた時は新手の魔物かと思いましたが、ミリネッタさんのお知り合いだったとは」

「確かに珍妙な姿だけど、それだけ。中身は礼儀正しい人間よ」

「はははは、確かにあの時の挨拶は、あまりにも礼儀正しくてびっくりしましたよ。それに、今では」

「猫さーん!!」

「大きい猫さんだー!!」

「猫じゃないよ、虎だよ」

「虎?」

「虎ってなにー?」

「子供達には大人気のようで。……本当にただの防具なんですか?」


 村長……疑う気持ちはわかります。

 ですが、安心してください。これは防具ですから。

 

 村に到着した俺達はまず予想通り怪しまれた。しかし、ミリネッタさんが誤解を解いてくれて、今に至る。

 子供達は、最初からそこまで怖がってはいなかったようで、村の大人達が受け入れてくれた途端に、今みたいに抱き着いたり、毛をもふもふして喜んでいる。


「それで村長。依頼の話についてですが」

「あなた、せめて子供達と離れてからにしなさいよ」

「いやぁ、なかなか離れてくれなくて」


 いつまでも子供達と遊んではいられない。俺達は緊急の依頼のために来たのだ。ミリネッタさんにも任せてはいられない。

 これは俺が受注した依頼。だから、俺が聞こうと村長へ話しかけたのだが……子供達が引っ付いたままなのである。頭の上に女の子が一人。背中に男の子が一人。両手に女の子が二人。最後に腹を男の子がポスポスと殴っている。


「これ、お前達。この人は村を護るために来てくれた冒険者さんなのだ。邪魔にならないように、あっちで遊んでなさい」

「えー?」

「猫さんと遊びたいー!」

「あはは。ごめんな、君達。仕事が終わったらまた来るから。ちょーっとだけ離れてくれるか?」


 その後、親御さんの協力もあってようやく離れてくれた子供達。

 ようやく依頼の話ができると、俺は一息。


「人気者ね」


 と、肘で小突いてくるミリネッタさん。俺は、それに苦笑いする。


「失礼しました。では、改めて。ここ最近、夜になると村の周りをゴブリン達が徘徊するようになったんです。日に日に足跡が増えていまして」

「だとすると、今回は計画的に行動しているってことかしら。前のゴブリン達は、数も少なかったけど、今回は十体はいるのよね?」

「はい。確認できたのは、十体ですが。今日の朝方に見た時の足跡だと、もっといるかと……」


 ゴブリン達は、意外と考えて行動している。

 一体一体だとそこまででもないが、集団で行動するとなれば違う。体が小さいので、物陰に隠れやすいし、動きも素早い。

 村の人達は、前回ゴブリンに襲撃されてからと言うもの村を囲う柵を冒険者ギルドの協力もあり強化されているとはいえ、油断はできない。


「ゴブリン達が見かけた場所は?」

「出入り口から出て東の方角です」


 今は、大分日が落ちてきている。

 夜となれば、奴らは闇夜に溶け込み、動きも俊敏になるだろう。


「じゃあ、すぐ行きましょう。奴らが行動を起こす前に叩くのよ」

「ええ、同意見です」

「お願いします、お二方……」


 話がまとまったら、後は行動だ。

 俺達は、村長宅から離れゴブリン達が出没したという場所へと向かう。途中子供達に捕まりそうになるも、ここは親御さん達がガード。

 子供達の寂しそうな声を背に、目的地へ向かった。


「……確かに、結構足跡があるわね」

「薄れているものばかりですが、新しいものもありますね。方角は……」


 足跡を辿り、俺達はゴブリン達の集団を発見した。

 数は、十五体か。

 半数が棍棒を装備している。


「よし、こっちには気づいていないわね」

「……」

「……ねえ、それなに?」

「え? 【かつお節ブレード】です」


 戦いの準備をしようと新たな武器である【かつお節ブレード】を無言で取り出した。見たことのない珍妙な武器にミリネッタさんは、眉を潜める。

 見た目は、ただのかつお節。大きさは約二メートルほどあり、長剣と思ってくれればいい。

 

「それも武器、なのよね?」

「はい、武器です。長剣だと思ってくれれば」

「そんな長剣見たことないわよ……はあ、まあいいわ。準備は良いわよね?」

「もちろん」


 とりあえず武器のことは後回しとしてくれた。二本の短剣を構え、俺と共に飛び出す。


「《着人斬》!!」

「グギャッ!?」

「《双刃斬》!」

「ゴギャッ!?」


 背後からの襲撃。

 互いにスキルを使い、一気に二体ずつゴブリンを撃退。不意を突かれたゴブリン達は、思うように体が動かない。

 それを見逃さず、俺達は一気に攻めた。


「呆気なかったわね」

「ですね」


 結果、ゴブリン達は五分とかからず全滅。辺りには、ドロップアイテムが散乱していた。

 とはいえ、ゴブリンからはあまり素材は落ちないようで、魔石ばかり。

 棍棒は元々どこからか調達していたようで、その場に残っている。


「それで? なんで【サケセイバー】? じゃないの」

「いやぁ、この恰好をしていると自然にこういうのを出してしまうんですよ」

「そ、そうなの」


 ゲームだった頃は、ネコ科だからかつお節だー! とか変に決めつけて使っていたからな。それが癖になっていて、自然と出してしまったんだ。

 ちなみに性能は【サケセイバー】よりも上で【ダブルサケセイバー】よりもちょっと下という感じだ。

 固有スキルは、削り節が舞う妨害系のスキル《削り節の乱》だ。今回は、使わなかったが乱戦となれば結構役に立つスキルのひとつである。


「それじゃ、さっさとドロップアイテムを回収して」

「―――待ってください、ミリネッタさん」

「どうしたの? ……なにか近づいてる?」


 どうやら緊急事態のようだ。森の奥から何かがこちらに近づいてくる気配を察知。

 大きい……とはいえグラットベアーほどではない。

 今回のゴブリンのことを考えると、まさか。


「来たわよ」

「ホブゴブリンか」


 ゴブリンの進化体であるホブゴブリンが現れた。

 全長は、大体百八十センチメートルぐらいか。

 持っている武器は、刃こぼれしている大剣。どっかの冒険者から奪ったのか?


「さあ、どうする? 湊。……湊?」


 ホブゴブリンの出現に俺へ意見を聞いてくるミリネッタさん。だが、俺はいち早く行動を起こしていた。


「がら空きだぞ」


 すでにホブゴブリンの視界から消え、真横で武器を構えていた。

 そのまま気づかれる前に《着人連斬》にて切り刻む。

 ボロボロの大剣とドロップアイテムを残し、再び静寂に包まれた。


「さあ、報告に行きましょう! 村の人達が待ってます!」


 ぐっとサムズアップをする。それを見たミリネッタさんは、まったくもう、と言った感じで俺を見ていた。


「素早いわね」

「早く村の人達を安心させたいですから」

「そうね……」


 今回のホブゴブリンという依頼にない魔物が出現し討伐した場合は、ギルドの方から報酬が出ることになっている。

 俺達は、早々にドロップアイテムを回収し、村へと達成の報告へ向かった。

 早すぎる帰還に、村長を含め村の人達は心配した様子で出迎えたが、討伐した証拠品を見せたら歓喜の声を上げた。

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