プロローグ
一緒に短編小説も投稿しました。なんていうか夜のテンションでひょー! と書いたものです。
「おー、盟友ってば美人相手に容赦ないなー」
「ですが、これはこれで彼女のことを認めているからこそなのでは?」
「だろうね。ゲームでも、彼は女性プレイヤー相手でも容赦なかったからねー」
女神ピリスは自室にて、いつものようにアマエットからの報告を受けていた。
映像資料には、湊が大剣でミリネッタを倒したところが映っている。
「まあ、あれはゲームだからと割り切っていたところもあったからねー」
「しかし、今は現実。彼の力でまともに攻撃を受ければ彼女はひとたまりもなかったでしょうね」
「だね。それに……今の盟友は、大体三割程度しか力を出していない」
ピリスが、ショートケーキを切り分けながら発言した。
それを聞いたアマエットは、目を見開く。
「三割、ですか?」
「うん。わたしの想定した力だったなら、だけどねー」
それはいったいどういう意味? とアマエットは首を傾げる。
まるで、湊の力にピリスの力以外が干渉しているかのような言い方。
「ピリス様。それはいったい」
「わたしも確証はないんだけど。本来だったら、あんなに段階を踏んで着ぐるみや武器が解放される仕様じゃないんだよ。もうちょっと俺TUEEE!! みたいな感じにぽぽーんっと、ね?」
口元についたクリームを舌で舐め、ピリスは元気に口にする。
つまり、ピリスの予想通りならば湊の力に制限をつけている何者かが居るということになる。
だが、ピリスは女神としては最高位の力を持っている。
そのピリスの力に干渉できるほどの者だとしたら……それは。
「ピリス様」
「んー?」
「どう、なされるおつもりですか?」
今の段階では、特に問題が起きているわけでもない。
しかし、その何者かがピリスの力に干渉できるほどの力の持ち主ならば……いずれ力を利用される可能性がある。
「今の段階だと、特になにも。なんだか盟友の成長と共に力を解放していっている感じだし。それに、わたしの創ったものをちょーとずつだけどいじってるねー」
「危険ではないでしょうか? 神の力を改良するなど」
「でも、全て盟友の力になってるでしょ?」
確かに、障害となってはいない。
むしろ、湊を喜ばせているし、力にもなっている。もし、邪悪な考えを持っているのだとしたら湊を利用して周りに被害を及ぼしているはずだ。
それをしていないとなれば、その何者かは、少なくとも現段階では邪悪な考えは持っていないことになる。
「わたしの想像だけど、その何者かは楽しんでいる」
「楽しんでいる?」
「うん」
柔らかいクッションに倒れこみ、ピリスは天井を見上げながら語る。
「なんていうかなー、湊くんをプレイヤーとしてゲームをしているっていうのかな。そういう感覚で楽しんでいるような気がするんだよねー。他にも道具の制作、スキルの改良……あっ、ゲーム制作かな?」
「……本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫大丈夫ー。そもそもこんな感じでもわたしってば女神様だよー? 本当に邪悪な存在だったら、すぐにでも対処してたってー。しかもそれが盟友に関わることなら尚更」
にっこりと子供のように笑顔をつくるピリス。
だが、笑顔とは裏腹にアマエットは計り知れない圧を感じとった。
「あ、そうだ。アマエット」
が、すぐにその圧は消え、いつものピリスに戻ってしまう。
「は、はい。どうしました? ピリス様」
「近々地上に降りるよね?」
「はい。いつものように」
「じゃあ、伝言とか頼める?」
いったい誰に、とは言わずとも理解しているアマエットは、どんなことかと耳を傾ける。
「――――てことを、盟友に言ってくれる? 本当だったらわたしから直々に言えたら良いんだけどさ」
「畏まりました。ピリス様のお言葉、しかと伝えてまいります」
「よろしくねー」




