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第二話 護衛をする着ぐるみ、また会う約束を

 街で出会った男装の少女レティー。

 おそらく偽名だろうが、俺は深くは追及していない。俺の予想が正しければ、彼女は……。


「ところで、レティーは路地裏で何をしてたの?」


 メリスの問いかけに、レティーは少し残念そうな表情で答える。


「猫ちゃんを見つけたので、追っていたらあそこに。なんとか触ろうとしたんだけど……」


 逃げられてしまった、と。

 

「それで、レティーは誰かと一緒じゃないのか?」

「一緒だったよ。でも、猫ちゃんを追いかけているのに夢中ではぐれちゃったみたいなの」


 やっぱりそうだった。

 見た目から彼女は、十代前半ぐらい。それぐらいの歳だと、一人で何かをしているというのは普通だ。俺も、そのくらいの時は一人でゲームをしてたり、読書をしていたり。友達と都合が合わなかった時なんかは、いつもそんなことをしていた。


 けど、こっちの世界だと地球の常識というか俺の常識など通用しない。

 もし、この子が俺の予想した通りの存在だったとしたら……一人にするのはよくない気がする。

 とりあえずは、一緒に居たと言う人物と合流するまでは一緒に行動するべきだろう。

 丁度、依頼も終わったことだしな。

 ……あっ、でもまだギルドに報告をしていない。


「レティー。それじゃあ、俺達がはぐれた人と合流するまで一緒に居ようか?」

「え? でも、迷惑じゃ」

「俺は、大丈夫だ。メリスは?」

「わたしも問題はない。むしろレティーを一人にする方が心配」


 でしょ? とメリスが視線を送ってくる。どうやらメリスの方も、レティーがどういう存在なのか気が付いているようだ。

 やっぱりあるんだな。隠しきれないオーラというか、気品というか。


「そ、それじゃあお願いします!」


 俺達の提案に、レティーは笑顔を向ける。

 その後、俺達は依頼の報告のため冒険者ギルドへと向かう。その途中でも、レティーから一緒に居た人物の特徴などを聞き、探していた。

 

「ここが冒険者ギルド……!」

「入るのは初めて?」

「うん! 話には聞いていたけど、人がいっぱい!!」


 結局、それらしい人物は見つからずに冒険者ギルドへ辿り着いた。すると、レティーは初めてギルドへ入るようで、遊園地に来た子供かのようにはしゃいでいる。

 

「それじゃ、俺達は報告に行くから少し待ってくれないか?」

「あ、報告はわたしがしてくる。今回の依頼はわたしが受注したものだから。湊は、レティーと一緒に居てあげて」


 今回の依頼は、メリスが受注した依頼を俺が一緒にやったのだ。

 報告は受注をした冒険者がすればいいことになっているので、俺はメリスの提案を受け目の届く範囲でレティーと一緒に居ることにした。


「わ! わ! 湊! そこはなに!」

「あそこは戦技場だ。冒険者達が、日々技術を磨き合ったりするんだ」

「じゃあ、あれは?」

「あれは依頼掲示板だな」

「あれが……あっ、子供が出てきた」

「あそこは、ギルドに設置された託児所だ」

「冒険者さん達は、子供のお世話もするんだね……」


 メリスが報告をしている間、レティーは興味を示したものを全て俺に聞いてくる。メリスは、まだ報告をできていないようで、多くの冒険者の後ろに並んでいる。

 

「お待たせしましたー! 果汁酒でーす!!」

「え? て、天使様!?」

「あ、カワエル」


 メリスを待っていると、カワエルが果汁酒を運んでいる姿を目撃する。

 街で掃除をしていたんじゃなかったのか。

 

「カワエルちゃん! 俺にも果汁酒を!」

「俺は、つまみの追加いいかな?」

「はいはーい! 今行きますよー!」


 おそらく清掃の仕事を終わらせ、ここの仕事を手伝っているのだろう。

 

「な、なんで天使様がウェイトレスを」

「ああいう奴なんだよ」

「そういえば、湊の仲間に天使様が居るって」

「あいつのことだ」


 後で聞いた話なのだが、どうやら今日ウェイトレスをするはずの女性が急病で出ることができなくなったようなんだ。

 そこへ、偶然通りかかったカワエルがならば! と一時的にだが手伝いをすることになった。

 

「あっ!」

「ん?」


 メリスも報告が終わり、これから本格的に人探しをしようと思った時だった。ミリネッタさんが、ギルドへと入って来たのを見かける。 

 俺達に用事があるようで、真っすぐこちらへ駆けよって来た。


「まさかとは思ったけど、本当に一緒に居るなんて」

「どういうことですか?」

「実はね」


 俺は、ミリネッタさんから事情を聞いた。

 どうやらミリネッタさんは、レティーのことを探していたようだ。俺達がこれから探そうとしていた人物……クルスからレティーのことを聞いて、ロメリアさんと共に街中を駆け回っていた。

 

 そんな時、もしかしたら俺と一緒に居るんじゃないか? という予想をしてギルドに立ち寄ったところ的中した、ということらしい。

 入れ違いにならなくてよかった。

 

 その後、俺達はミリネッタさんがレティーを捜索している二人と入れ違いにならないようにギルドに止まることに。

 再びミリネッタさんが訪れたのは、それから数十分後のことだ。


「よかった! 本当に見つかってよかったです!!!」

「ごめんね、クルス。勝手にはぐれちゃって」

「いえ! あなたが謝ることなどありません! こうなったのは、俺が不甲斐ないばかりに!!」


 レティーと会って早々このまま切腹でもするんじゃないかという勢いで悔やむ青年クルス。一応、クルスの方では妹とはぐれたということにしているようだが。

 これは完全に、兄妹という関係じゃないのは明白。

 ロメリアさんも、二人の正体を知っているようでやれやれと言った感じで見詰めていた。


「こらこら、泣くのはその辺で。かなり目立ってるよ、クルス」

「そ、そうですね。……あなた方が見つけてくれたんですね。本当にありがとうございます!!」

「私からもお礼を言うね。ありがとう、湊。メリスも」

「大したことはしてない」

「結局探し人の方からやってきたからな。俺達はただ一緒に居ただけだ」


 全力で俺値に頭を下げた後、クルスはレティーと一緒にギルドを出て行こうとするが、ふいに立ち止まりレティーだけこちらへと向かった来る。

 

「どうかしたのか?」

「えっと、また会おうね。絶対に絶対!」

「うん、絶対にまた会おう」


 俺は、しゃがみこみ声を潜める。


「その時は、本当の姿で会えると嬉しいな」

「えへへ、バレてたかぁ」


 隠すこともなく簡単に肯定した。自分が変装をしているということを。

 

「じゃあ、その時は今日のお礼をするから。楽しみにしててね」

「ああ、楽しみにしてる」

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