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第十話 マナをこねる天使、隠し通路を見つける着ぐるみ

「このダンジョンは、鉱石類が多い。そのせいか出てくる魔物もやたらと硬い。他にも暗闇から奇襲をかけてくる奴とかも居るから気をつけろよ」


 さすがダンジョン攻略をしただけあって詳しい。

 それにしても、さっきの気配……今は完全になくなっている。俺達に気づかれてどこかに潜んでいる状態なのだろう。

 

「そういえば、アーレンさんのベルトについてるのも魔法石なんですか?」


 俺は、アーレンさんのベルトを見詰めながら問いかける。


「ああ、そんなもんだ。前に言ったが、俺は魔法が得意じゃなくてな。この魔法石で補助をしているんだ」

「あれだけの炎を出せてですか?」

「出すだけならな。つまり、俺のは威力が高いだけで全然コントロールできないってやつだ」


 そのために魔法石で補助をしているいうことか。

 確かに、この世界の人達は魔法石などのアイテムを使い色々と補助をしている。魔法の威力を高めたり、足りない魔力を増加させたり。

 

「いつまでも道具に頼るのもなんだから、俺は俺で訓練してるんだけど……これがなかなかうまくいかないんだ」

「魔力が大き過ぎてコントロールをするのが難しいんじゃないんですか?」

「そういうことならカワエルちゃんがお手伝いしてあげましょう!」

「お? それはありがたいな」


 そういえばカワエルは大気中のマナを直接使ってスキルを使っているんだもんな。

 魔力を使うよりも高度な技術が必要だ。


「いいですか? 魔力というものは、こねるんです!」

「こねる?」


 なんか奇妙なことを言いだした。

 アーレンさんも首を傾げている。しかし、カワエルは説明を止めず魔力をこねているジェスチャーをしながら続けた。

 いや、よく見たらなんか周囲から青い光がカワエルの手に集まっている。それをこねてる? 


「そう! こねると言っても本当にこねるんじゃないんです。要は頭の中で魔力をこねる想像をする! そして、そのこねた魔力をスキルとして発動!!」


 刹那。

 カワエルの手でこねられたマナが一筋の光となり、前方に居た蝙蝠のような魔物を包み込む。

 どや! とアーレンさんを見るが……。


「わ、悪い。ちょっと俺には難しいかもしれない」

「……はっ!? 思わず天使流を教えてしまいました!!」


 あぁ、やっぱりそういうことだったか。


「ははは。噂には聞いていたが、天使っていうのは常識外れな存在だな、マジで。っと、そろそろ目的の場所だ」


 辿り着いたのは、天井に大量の魔法石が生えた広々とした空間だ。

 先に進む道は二つ。

 ここはダンジョン内にある休憩場のようなところなんだろう。


「思っていたより早く着きましたね」

「本来だったらもっと魔物達が寄ってくるんだけどな。お前達が居たから魔物が避けていったのかもな」

「その数少ない勇気ある魔物さんは、カワエルちゃんがあっという間に倒してしまいましたけどね!」

「魔物も出てきた瞬間にやられるとは思ってもいなかっただろうな……」


 ちなみに倒された魔物の魔石と素材は回収済みである。

 

「それで、アーレンさん。試したいことっていうのは?」

「ああ、それなんだが」


 壁まで歩いていき、火の鎧を纏ってこんこんとノックする。


「ここの壁を俺達で思いっきり攻撃するんだ」

「大丈夫、なんですか? それ」


 ダンジョンはそう簡単には壊せない。

 数えきれない強者達が、アーレンさんと同じようなことをやったそうだが。大抵は壊れなかったそうだ。壊せたとしても、鉱石が埋まっていたりしただけ。


「まあ聞けって。ここには隠し通路がある」

「本当ですか!?」


 期待に声を上げるカワエルだが。


「ああ。俺の直感がそう言ってる」

「……大丈夫なんですか? 本当に」

「俺の直感は結構当たるんだ」


 アーレンさんは、自分の直感にかなり自信があるようだ。

 

「わかりました。やるだけやってみましょう」

「よーし! カワエルちゃんも強力なスキルを出しちゃいますよー!」

「おし! そんじゃ、タイミングを合わせろ!」


 俺達は、横に並び構える。

 

「いくぞ!」

「いつでも!」

「やりますよー!」


 俺は【アニマルパラソル】を右手に装備する。

 カワエルはさっきの要領でマナをこねていた。


「……湊」

「なんですか?」

「それ、武器なのか?」

「はい! 決してふざけているわけじゃないので!」

「そ、そうか」


 見た目は様々なデフォルメ動物達の顔が描かれたビーチパラソル。だが、これはちゃんとした? 武器なのだ。

 剣で例えるならレイピアみたいなものだ。


「《火拳裂衝》!!!」

「《アニマルトルネード》!!!」

「《シャイニーカノン》!!」


 炎の拳が、動物達の顔が渦巻く突きが、光の砲撃が一気に壁へと激突する。

 その結果。


「お? 一発で正解を引いたようだな」

「おお! 隠し通路ですよ!!」


 なんとアーレンさんの直感が当たっていたようで、壁が壊れ、その奥に道があった。

 凄いな、アーレンさんの直感。

 

「この奥に、隠し財産がある! そいつを手に入れてティナへプレゼントを買う!!」

「あれ? ティナちゃんってもう誕生日を迎えたはずじゃ」


 今年で六歳になったばかりだと聞いていたので、俺は当然の疑問をアーレンさんにぶつける。

 すると、アーレンさんは笑みを浮かべながら答えた。


「明後日は、ティナが初めてパパって呼んだ記念日なんだ……」

「あ、そうなんですか」

「そういう感じだといっぱい記念日がありそうですねー」


 確かにそうだな。それにしても本当に愛されているなティナちゃんは。


「では、その時は天使として最大限の祝福を!!」

「おう! ありがとうな!! というわけで、先に進むぞお前達!」

「了解です!」

「行くぞー!」


 娘のために、とアーレンさんは我先にと奥に進んでいく。

 

「ところで湊くん。それ可愛いですね」

「だろ? ちなみにこれは元々直射日光を防ぐための道具なんだけど」

「待っててくれ! ティナ! パパがとびっきりのプレゼントを買ってやるからな!!」


 さて、この隠し通路の奥にはなにがあるのか。

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