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第六話 定食屋の着ぐるみ、ロメリア先生の授業

「いらっしゃいま―――熊!?」

「あ、どうも熊です。あの決して怪し……くはないですけど。一応これ防具なんです」


 無事メリスの冒険者登録を終え、ミリネッタさんも用事を済ませた。

 再度集合した俺達は、ロメリアさんがおすすめした定食屋へと訪れていた。多少噂は広まっているだろうけど、やはりまだ全域とまではいかないようだ。

 その証拠に、店員のお姉さんが俺の姿を見てびっくりしている。

 

「彼の言っていることは本当だ。こんな見た目をしているが、腕利きの冒険者でもある」

「ろ、ロメリアさん」

「ロメリアさんが言うんだったら……マジなんだろうな」

「しかし、あんな熊みたいな防具があるとはな」

「どうやって作ってるんだろね?」


 ミリネッタさんから聞いた話だが、ロメリアさんはAランクの冒険者。

 信頼度は言わずもがな。

 丁度、テーブル席が空いていたので、そこへ案内される。


「大丈夫かい? 君には狭いようだが」


 だが、さすがに今の着ぐるみだと座るのが難しい。

 

「あ、大丈夫です」


 俺はすぐ丁度いいサイズの着ぐるみに切り替える。

 

「おぉ、本当に変わった」

「ひ、羊?」

 

 普段は寝る時以外にはならないのだが、今装備できる中では【スリープ羊】が一番なのだ。【ワンダフルマジシャン】とも考えたが、あれはとんがり帽子が少し大きめなので、後ろの客に迷惑をかける。

 帽子は脱げないからな……。


「じゃあ、あたしはここにっと」


 席順は、時計回りにロメリアさん、俺、メリス、カワエル、ミリネッタさん。

 店員さんから渡されたメニューを確認すると、中々の品揃えだ。

 

「あたしはいつもので頼むよ」

「はい。肉混ぜサラダですね」


 異世界の定食屋、ということでどんなものを食べようかと思ったが。

 なんか普通に白飯がある。

 本当に異世界なのかと驚いたが、日本人の俺としては嬉しい悲鳴だ。そういえば、天使が定期的に舞い降りるとか言っていたけど……まさかな。

 

「それじゃ、俺は日替わりを」


 それぞれ料理を注文したところで、ロメリアさんがどこか嬉しそうな表情で話し出す。


「さて、さっそくだがロメリアさんの特別授業を聞きたまへ諸君」

「いきなりですね」

「なに。弟子ができたのでね」


 弟子……まさか。

 ロメリアさんの言葉に、俺達はミリネッタさんを見る。


「はいはい。その弟子ですよー」


 やっぱりそうだったか。ロメリアさんの用事っていうのは。


「だから、王都に居る間はあなた達と一緒に居る時間が少なくなると思うわ」

「でも、よかったじゃないです! Aランク冒険者の弟子になれたんですから!」

「うんうん」


 カワエルの言う通りだ。ミリネッタさんも常々もっと強くなりたいと言っていたことだし。もしかしたら、とんでもない強さを手に入れるかもしれない。


「仲間も喜んでくれているようだね」

「お待たせしました。肉混ぜサラダです」

「お? 相変わらず早くて助かるよ」


 注文してからさほど経っていないが、ロメリアさんの頼んだ料理が運ばれてきた。肉混ぜサラダ、ということだったが。

 なんだか、キャベツの葉で器を作って、その中にペースト状の肉を入れただけに見える。よく見ると他の野菜も細かく切られて入っているようだが。


「こいつを」


 サラダを観察していると、ロメリアさんは慣れたようにフォークでキャベツを砕きながら肉と一緒に混ぜていく。

 なるほど。自分で混ぜるのか。確かに、地球にも自分でやるタイプはあったからな。


「では、話の続きだ。よーく聞いてくれ。特に弟子」

「はーい」

「君達は、スキルというものをどこまで理解している?」

「スキル、ですか?」


 地球人である俺としては、技って感じで使ってる。

 

「そうだ。スキルというのは、大まかに言えば技だ。斬撃を飛ばしたり、炎を生み出したり」

「物理スキル、魔法スキルの二つに分けられて、そこから更に細かくなっていくんですよね」

「その通りだ。我が弟子よ」


 嬉しそうにサラダを頬張りながら、ミリネッタさんを褒めるロメリアさん。

 この世界において、スキルとは物理スキル、魔法スキルの二つがあり。そこから剣術系、槍術系、炎系、水系と系統で分けられていく。

 

「同じスキルでも、熟練度の違いで差が出る」


 その言葉に、ミリネッタさんはすでに経験したかのような反応をする。


「だから、スキルを会得したと言って鍛錬を怠らないことだ。そうそうちなみにだが、物理スキルと魔法スキル以外にも、天使だけが使える聖天スキルというものがある。だろ? カワエルちゃん」

「はい、その通りです。カワエルちゃんが使っているスキルは、天界に住まう者達に与えられし聖なる力。同じスキルとして分類されますけど、天使は魔力ではなくマナそのものを使ってスキルを発動させているんです」


 この世界に生きる者達は、スキルを使う時に魔力を糧とする。魔力とは、マナを体内で変換した特殊エネルギーの一種だ。

 マナは全ての生命の源。食材にもマナは宿っているので、食事をするだけでも体内にマナを取り込むことができる。とはいえ、食事で魔力を完全回復させられる、てことはない。多少回復したかな? と思うだけらしい。これがゲームだったら、MP回復の料理とかを食べて回復だー! とかなるんだが。


「じゃあ、天使は無限にスキルを発動できるのか?」

「そういうわけじゃない。マナを直接取り込みそれを使いスキルを発動。その時に、多少なりとも体に負担はかかるはずだ」

「そうですねぇ。世界を護る天使としては、あまり環境破壊はしなくないので」


 確かに、大気中のマナを直接使い続けたら環境が変化する可能性があるかもだからな。


「お待たせしましたぁ。ご注文の日替わりです」

「おっと、君達の料理も来たみたいだね。それじゃあ、授業はここで一旦中止。食事を楽しもうじゃないか」


 そういえば、俺の場合はどうなるんだろう。

 元々俺はこの世界の者じゃない。

 今の体だって、ピリスが創造したものだ。普通にスキルを使っていたけど……俺は魔力を使っているのか。それとも大気中のマナを使っているのか。

 それとも……。

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