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第十四話 報告をする着ぐるみ、ギルドマスターはインドア

「あなたが、ギルドマスター、ですか?」

「……そうだよ。僕がギルドマスターのシーマだ」


 丸めがねの少年? は本から顔を話し、背を伸ばしながら喋り出す。

 声は中性的、顔も中性的。

 藍色の大きなコートと短パン、白いシャツ。僕と言っているので、少年だと思うけど……。


「ちなみに、僕はハーフエルフだ。見た目はこんなのだけど、すでに百歳は超えてるからね」

「あ、そうなんですね」


 まるで俺の心でも読んだかのように、説明してくれるシーマさん。

 いや、おそらくよく言われてきたのだろう。

 だからこそ、俺が思っていることを予測したんだ。


「さて、こうして会うのは初めてだね。けど、ギルドマスターとして君の情報は知っている。期待の新人くん」

「光栄です」

「それじゃあ、さっそくだけど聞こうか。君が見たものを」

 

 互いにソファーに腰を下ろし、向かい合いながら会話を始める。

 シーマさんは、自分で淹れた紅茶を口にしながら俺の報告を聞き、なるほどと頷く。


「魔物を出す杖、か。召喚術の一種か。それとももっと他の何かか……」

「実際に見た感じ、召喚、というよりも生み出したって感じでしたけど」


 俺の勝手なイメージだが、召喚術は魔法陣が出現し、そこから生き物が召喚する。

 けど、あの杖からは魔法陣のようなものは出現しておらず、黒い地面からまるで生み出されたかのように出現していた。


「となると、謎の解明をするには君が持ってきた件の杖を調べなくちゃならないね。杖は警備隊に渡したんだろ?」

「はい。使っていた男と一緒に」

「できれば、僕のところに持ってきてほしかったけど……はあ」


 うーん、最初から思っていたけど、もしかしてこの人……めんどくさがり屋か?

 

「まあ、結局のところ解析するために僕のところに回ってくるだろうし……それまでは時間があるか」

「シーマさんは、あの杖を解析できるんですか?」

「これでも、解析には自信があるからね」


 そういうスキルを持っているってことなんだろうか。

 

「はあ……これから忙しくなりそうだね」


 うわぁ、露骨に嫌な顔をしてる。

 

「……」


 かと思いきや、真面目な顔で俺のことを見詰めてくる。

 な、なんだろうか? 


「なるほど……君は随分と神に愛されているようだね」

「え?」


 まさか、さっき解析されたってことなのか?


「言っただろ? 僕は大抵のものは解析できるって。失礼かと思ったけど、僕のスキル《賢者の英知》で君を解析させてもらった」


 やっぱりそうだったか。


「見た物の情報を得ることができる。このスキルで、今まで情報を得ることができないものはなかった。でも、君の防具からはまったくと言って情報を手に入れることができなかった。仮令たとえ隠ぺいされていたとしても解析できた僕のスキルでも、ね」


 《賢者の英知》か……おそらくこの装備は、元々こことは別の世界で生まれたもの。なおかつ管理者である女神ピリスが直々に再現したもの。

 そう簡単には情報を得ることはできない仕様になっているのかもしれない。


「そこからは予想、というか僕の想像で言ってみたんだが……どうやらその反応を見る限る当たっていたようだね」


 まさかあんなことを言われるとは思ってもいなかったから、俺もつい固まってしまった。

 でも、普通に考えたら普通じゃないということは感じられる。

 もしかしたら神の使いなんじゃないかと思われていたり……するのかなぁ。 


「まあ、追及はしないよ。なんだかめんどうなことになりそうだし。それよりも、報告ご苦労様。冒険者湊」

「は、はい」



・・・・



「……はあ、たく。厄介なことだ」


 湊が報告をした夜。

 カロティアの冒険者ギルドの長であるシーマ・エルモットは深いため息を漏らしながら天井を見上げる。

 

「失礼」

「……領主が、一人で出歩くなんて不用心だね」

「ははは、まあそういうな」


 すると、どこか安っぽい服に身を包んだジルバが姿を現す。

 その手には何かを包んだ白い布を持っている。


「それで変装しているつもりかい?」

「似合ってると思うんだが」

「領主が何を言っているんだ……」


 ジルバ的には、一般人にうまく変装していると思っているようだが、シーマには簡単に見破られてしまった。

 そもそも、ギルドマスターの部屋に入ってくる一般人はいない。

 ここに入れるのは、ギルドマスターが許可を出した者か……ジルバのような上流階級の者だけだ。


「聞いていると思うが、最近問題になっている魔物の出現。それに繋がるかもしれない人物と物が発見された」

「それが、例の物だね」


 ソファーに腰下ろすジルバは、テーブルの上に白い布を置き、中を見せる。

 

「ああ。解析を頼んだぞ、シーマ」

「めんどくさいけど、仕方ないね。やらないと平穏は戻ってこないだろうし」

「ははは。相変わらずだな。……それで、捕らえた男のことだが」


 と、ジルバは真剣な眼差しを向けながら語り出す。


「はっきり言って、全然情報を得られなかった。イーナ達が尋問したが、男は何も覚えていないと言うばかり。杖のことも、最初から持っていたものだ。これは俺の力だと繰り返すだけ」

「おそらく何らかの記憶操作をされているんだろうね」

「だろうな。男の身分がわかるようなものは持っておらず、自分の名前すら憶えていない」

「湊から聞いたけど、その男、相当目がおかしかったんだろ?」

「ああ。イーナが言うには、何かに取りつかれているかのように見えたそうだ」


 報告を聞いたシーマは、しばらく天井を見上げながら考え事をするが、すぐに頭を抱える。

 そして、椅子から離れ、テーブルに置かれている杖を手に取る。


「まったく厄介だね。勇者が魔王を倒して、平和になったと思ったのに……」

「もしかしたら、魔王復活の予兆、だったりしてな」


 ジルバの言葉に、シーマはこれでもかと言うほどげんなりした表情を見せる。


「勘弁してくれ。僕は、平穏に暮らしたいんだ……」

「ははは! また後で珍しい本を取り寄せる。解析、頼んだぞ」

「……わかってるよ」

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